現実の政治状況を思わせる失言大臣が登場。

失言大臣が舌がんに
「刷新(さっしん)」を「殺人(さつじん)」と読み間違えるなど、失言を繰り返して問題となっている厚生労働大臣・梅沢三郎(角野卓造)が、マスコミの追求を逃れるため東帝大学病院に入院してきた。
当然、ただの詐病のつもりだったのだが、彼の口腔内を見た大門未知子(米倉涼子)は舌がんを発見する。
梅沢を入院させるのと引き替えに不起訴となり、病院に復帰した蛭間院長(西田敏行)は、院長としての権威を見せようと外科的治療を主張。
一方、コストカッターのニコラス丹下副院長(市村正親)は、AI診断に従って化学療法を推す。梅沢の入院を長期化させることで、自分が懇意にしている政治家が大臣の椅子をゲットできるように……という思惑もあったようだ。
しかし、そんな権力闘争とは関係のない大門は、勝手に手術をはじめてしまう。
実は、梅沢は舌がんだけではなく「脈絡膜悪性黒色腫」という目の病気も患っていたのだ。
フリガナを読み間違えたり、いない虫を気にしたり、麻雀の牌を見間違えたり……そんな梅沢の様子を見て、大門だけがこの病気を見抜いていた。
いくらなんでも、AIですら見つけられなかった病気を簡単に見つけ過ぎという感じもするが。
現実の政治家の方がひどすぎて……
しばしば舌禍を招いている失言大臣に舌がんが見つかるという、ちょいと政治を皮肉ったストーリー。放送されたタイミングがあまりにもハマリ過ぎていた。
第3話が放送されたのは10月31日。まさにその日、妻の公職選挙法違反の疑いが持ち上がった河井前法務大臣が辞任。25日には菅原前経産大臣も辞任。
さらに萩生田文科大臣の「身の丈」発言や、河野防衛大臣の「台風3つ」発言と、大臣の失言が連発しているタイミングでの放送。
リアル大臣の「ヤバイ本音がポロッと出た」タイプの失言と比べたら、梅沢の失言は単なる読み間違い・言い間違いの類でかわいいもの。
所属政党の思惑で大門が主治医から外されてしまったことをわびるため、鰻弁当を持って会いに来たりと、失言はあるけど人のいいおっさんなのだ。
「ダメダメな失言大臣」という戯画化したキャラクターだったはずなのに、現実の政治家の方がもっとヒドイというのが悲しいところだ。
梅沢が長期入院の必要な化学療法を受けることになった理由は「失言を理由に首を切ると任命責任を問われかねない」と考えた内閣への忖度からだった。
「任命責任」の問題も現在ワイドショーなどで絶賛盛り上がり中。意図せずリアルタイムの現実とリンクしてしまうとは、さすが人気ドラマは「持ってる」と言うべきか……!?
これで次回が薬物依存症の問題だったら現実のニュースとリンクし過ぎでビビるところだが、さすがの大門でも依存症を外科手術で治療するのは難しいか。
清水ミチコの濃厚ないやがらせに期待
病院に復帰した蛭間とニコラス丹下のバトルが燃え上がっていた今回だが、ふたりの代理戦争のように、大門に対して対抗心を燃やす浜地真理(清水ミチコ)もいい味を出していた。
「清水ミチコってこんな怖い顔だったっけ!?」と思うほど、陰湿そうなメイクで顔を作っている浜地。性格もやはりねちっこい!
ハーバード医科大に留学しただの、医学賞を受賞しただの、夫がエリートだの、横浜に庭付きの家を持ってるだの……。自慢話でマウンティングしつつ、ねちねち攻めてくる。
ニコラス丹下に手術の腕を認められている大門に対するジェラシーなのだろうか?
丹下が連れてきたもうひとりの医師・潮一摩(ユースケ・サンタマリア)のキャラがいまいち薄いので、その分、浜地による濃厚ないやがらせや妨害工作を期待したい。
(イラストと文/北村ヂン)
【配信サイト】
・Abema TV
・テレ朝動画
『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日)
脚本:中園ミホ、林誠人、香坂隆史
音楽:沢田完
主題歌:P!NK「ソー・ホワット」
企画協力:古賀誠一(オスカープロモーション)
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:大江達樹(テレビ朝日)、都築歩(テレビ朝日)、霜田一寿(ザ・ワークス)、大垣一穂(ザ・ワークス)、伊賀宣子(ザ・ワークス)
演出:田村直己(テレビ朝日)、松田秀知、ほか
制作協力:ザ・ワークス
制作著作:テレビ朝日