じつは日本人の約10人に1人が、年に一度は山やハイキングに出かけているのをご存知でしょうか。総務省統計局の「社会生活基本調査」によれば、平成28年時点で15歳以上の「登山・ハイキング」行動者は1073万2千人、行動者率は10.0%にのぼりました。コロナ禍で一時は数字が落ち込んだものの、その後は山小屋の予約困難や富士山の入山規制が話題になるなど、登山熱はふたたび高まっている様子。多くの人が山に親しむようになった一方で、登山道のゴミやマナーをめぐるトラブルも、各地で静かに広がっているのが現状です。
今回は、過去に大きな反響を呼んだ実録エピソードから、地元でキャンプ場を経営しながら、ボランティアで山の環境美化運動にも参加している男性が遭遇した、思わず目を疑うような“事件”をご紹介します。登山道で堂々と立ちションする年配者、岩陰にこっそり放置されるお弁当の容器――。注意しようとした男性に向かって、ある老夫婦が放った“信じがたい一言”とは。
記事の後半では、登山客のマナー違反を背景に各地で進む“ある対策”――1枚1,000円のゴミ袋や、数千円規模の入山料についても触れていきます。知っておいて損はない、山の現場のリアル、お届けします。
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今回話を聞いたのは、益田祥吾さん(仮名・31歳)。数年前からはじまったキャンプブームに合わせて、脱サラして地元でキャンプ場の経営をはじめた青年だ。
登山道の“目立つ場所”で立ちションを…
行楽シーズンには、週に2~3回は山に登ってゴミ拾いを行っているという益田さん。その道中ではさまざまな登山客に会うそうだが、ここ最近ではマナーの悪さに頭を悩ませているとか。
「テレビや雑誌で紅葉の名所と紹介されることも多く、年々登山客が増えている状況です。また、登山道もなだらかなので、年配の登山者にも登りやすく人気になっている。ただ、困っているのが、そういった年配の登山者のマナーの悪さです。平気で立ちションする年配者も多くて。
生理現象なので仕方ないですが、そんなに登り降りで時間がかかる山でも無いのでなるべく我慢するか、見えないところでしてほしい。違反行為ではないので注意もできないですが、他の登山者に見えるところの場合は、一声かけさせてもらっています。ただ、大概は声を掛けると逆ギレされることが多い。特に登山歴が長そうな年配者が怒る傾向にあり、プライドが高いのか自分のような若造に注意されるのが頭にくるんでしょう」
山火事の可能性もあるから注意したら、
迷惑な行為は、なにも立ちションだけではない。「山頂まで登って気持ちよくタバコを吸いたい気持ちはわかりますが、山火事の可能性もあるので注意させてもらいます。若い登山者は、こちらが山の管理を務めていることを話すと理解してやめてくれるのですが、やはり年配者は逆ギレパターンが多い。
ゴミを放置する老夫婦に「お前がもって帰れ」と…
「意外に思うかもしれないですが、ゴミを平気で捨てられる人が世の中にはいるんです。特に、山頂ではご飯を食べる人も多く、こっそりと岩陰や木の中に捨てていく人が多い。つい最近でも、自分が経営しているお店で買ったおにぎりとおかずの容器を、山頂に放置しようとしている老夫婦がいました。せめて所定の場所で捨ててほしいと説明すると、麓で食べ物を売っている店が悪いとキレ始め、お前がもって帰れと喧嘩腰で詰め寄ってきたんです。それ以上揉めるのも嫌なので仕方なく自分が引き取りましたが、マナーという概念が欠如している年配の登山者は結構いるんです」
「コロナ禍もあって再び登山ブームが来て、マナーをしっかり守ろうという呼びかけが各所で行われています。自分が管理している山でも、麓に看板を立てたり啓蒙活動をしているところです。ただ、昔から登っている人からしたら、堅苦しくなって楽しくないという意見の登山者もいるんです。そういった人が、自分本位な言動をするんです。
昔から「山には神様がいる」と言われ続けているが、マナー違反を続ける登山者は、一度自分の行動を見つめ直したほうが良いかもしれない。
<TEXT/高橋マナブ>
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■“自由なレジャー”だった山が、変わりつつある現場
益田さんの話を聞いていて、思わず苦笑いしてしまいました。「お前がもって帰れ」と詰め寄られたら、こちらが悪いような気さえしてくる。マナーを守って静かに楽しんでいる多くの登山客には、まったく迷惑な話です。じつは、こうした登山客のマナー違反やゴミ問題は、各地の山岳地域で深刻化しており、対策も少しずつ“次の段階”に入りつつあります。たとえば北アルプスの上高地・徳沢地区では、2025年から「ごみ有料引き取り」の実証実験が始まりました。指定のゴミ袋を1枚1,000円で購入し、そこに入る分のゴミを引き取ってもらう仕組みです(参照:環境省 中部地方環境事務所「上高地におけるごみ有料引き取り」実証実験)。
さらに富士山では、2025年夏に山梨県側の吉田ルートで1人2,000円の通行料が正式導入されたのに続き、2026年の開山期からは山梨・静岡の両県ですべての登山口に1人4,000円の通行料・入山料が導入されることになっています(参照:静岡県「富士山各3登山口における登山規制の実施」 )。
「山はみんなのもの、無料で当たり前」だった時代から、利用者に一定の負担をお願いする流れへ――。背景にあるのは、まさに益田さんが直面しているような、一部の利用者のマナー違反と、それに伴う環境破壊の現実なのです。
<再構成/日刊SPA!編集部>
【高橋マナブ】
1979年生まれ。雑誌編集者→IT企業でニュースサイトの立ち上げ→民放テレビ局で番組制作と様々なエンタメ業界を渡り歩く。その後、フリーとなりエンタメ関連の記事執筆、映像編集など行っている
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