朝の通勤電車。たった数十分の移動が、一日でいちばん憂鬱な時間になっている――そんな人は決して少なくないはずです。
混雑そのものよりも、隣に立つ誰かの“ちょっとした振る舞い”が、思いのほか心を削っていく。
身動きの取れない車内で繰り広げられる迷惑行為は、注意しようにも逆ギレが怖く、ただ我慢するしかない。気がつけば、不快な記憶だけが頭にこびりついて、会社に着いた頃にはぐったり……。そんな経験、ありませんか。

朝の満員電車で女性3人組にウンザリ…大声で愚痴「うちの旦那っ...の画像はこちら >>
今回は、過去に大きな反響を呼んだ実録エピソードから、満員電車のなかで突如はじまった“3人組の悪口大会”に逃げ場を失った男性と、目の前で繰り広げられた“1人ロックフェス”に唖然とした男性の事例をご紹介します。スーツ姿のおじさんが全力でエアドラムを叩き始めたとき、まさかのスピーカーから流れていた曲とは――。

記事の後半では、不快に感じても声をあげにくい車内で、私たちがどう気持ちを切り替えればいいのか。イライラが思わず“クスクス”に変わるかもしれない、ちょっとした見方の話もお届けします。

 *  *  *

 移動に欠かせない交通手段のひとつである電車。しかし、通勤や通学の時間帯は混雑するため、殺伐とした雰囲気がある。車内では譲り合いの精神を持って、お互い気持ちよく過ごしたいものだ。

 今回は、通勤電車内で、周囲への配慮を欠いた迷惑行為に遭ったという2人のエピソードを紹介する。


朝の満員電車に響く“大声の会話”


 午前8時、通勤ラッシュのピーク。急患対応による遅延も重なり、車内はいつも以上に混んでいた。

 岡野隆之さん(仮名・30代)は、人と人とのわずかな隙間に体を押し込み、身動きできないまま立っていたという。背中には会社員の通勤リュック、前には高校生の部活道具。ほとんど固定された状態で電車が動き出した、そのとき……。

「ガハハツ!」

 甲高く耳を突き抜ける笑い声が横から響いた。さらに2人分の声が重なる。どうやら3人組の女性たちの会話だったようだ。

「ほんっと、うちの旦那って使えないから!」
「うちもよ! 昨日なんてね……」

 最初は小声だった会話だが、あっという間に声量が上がったという。朝の満員電車のなかで、突然、“家族の悪口大会”が始まったのだ。

降車まで続いた家族の愚痴


朝の満員電車で女性3人組にウンザリ…大声で愚痴「うちの旦那って使えないから!」/口パクで全力エアドラムを始めた謎のスーツ男も
※写真はイメージです(画像生成にAIを利用しています)
「お義母さんなんて、私が作った料理にまた口出し!」
「わかる~! うちのお義父さんもね……」

 話題は夫の家事能力のなさから義理の家への不満まで広がり、声のボリュームはさらにアップした。岡野さんは無心を装ったが、否応なく耳に入ってくる。

「まるで、朝から不快な情報番組を聞かされているみたいでした」

 周囲の乗客はスマートフォンを見たり、イヤホンを耳に押し込んだり、床を見つめたまま動かない。顔を見れば、全員が同じようにうんざりしている様子がわかったそうだ。


 駅をいくつか過ぎるごとに、会話はヒートアップ。義母からの電話を無視した武勇伝を披露し、最後の一駅分は、3人同時の笑い声がさく裂した。

「ホームにつくまでの数分間が、とにかく長かったです」

 電車が駅に到着し、彼女たちは楽しげに降りていった。残された車内は驚くほど静かになったが、岡野さんの耳の奥には、まだ愚痴の断片がこびりついていた。

朝の車内で始まった“謎のライブ”


朝の満員電車で女性3人組にウンザリ…大声で愚痴「うちの旦那って使えないから!」/口パクで全力エアドラムを始めた謎のスーツ男も
※写真はイメージです(画像生成にAIを利用しています)
 平日の朝、通勤ラッシュの電車内。影山拓弥さん(仮名・20代)は、奇跡的に座席を確保した。

「このまま静かに会社まで行きたい……と思っていました」

 しかし、目の前に立った50代くらいのスーツ姿の男性が、イヤホンを耳に差し込んだ瞬間、平和な時間は終わったという。

「最初は、音楽をきいているだけだと思ったんです」

 ところが、その男性は足をトントンと鳴らし、体を揺らし、首を大きくうなずきはじめた。

「そのうち、右手が“空”を叩きはじめたんです。“エアドラム”ですよ」

曲調と動きのギャップがすごすぎる


朝の満員電車で女性3人組にウンザリ…大声で愚痴「うちの旦那って使えないから!」/口パクで全力エアドラムを始めた謎のスーツ男も
※写真はイメージです(画像生成にAIを利用しています)
 さらに、左手まで動き出し、今度は“エアギター”。手首のスナップで弦を鳴らす真似をし、真剣なロック顔で口パクまで始めたそうだ。

「もう視界の真正面で、1人ステージ状態でした」

 あまりの迫力に耳をすませていると……。

“桜~の花び~ら”

 曲は、まさかのバラードだった。

「思わず、『それドラムを全力で叩く曲じゃないでしょ』って心のなかでツッコミました。
朝の通勤時間帯って、静かに過ごしたい人が多いのに、なんでそこで全力を出すのか本当に謎でした」

 会社に着く頃には、頭のなかでエンドレス再生されていたという。

 電車では個人のマナーが大いに問われる。だが、不快に感じても声をあげにくい空気があるのは事実だ。自分の何気ない行動が周囲の迷惑になっていないか、あらためて意識する必要があるだろう。

<取材・文/chimi86>

 *  *  *

■車内に響く“他人の私生活”を、どう聞き流すか

岡野さんが耳にした家族の悪口大会も、影山さんが目撃したエアドラムも、どちらも「ほんの数分」の出来事です。けれど、そのわずかな時間で、一日の気分が大きく左右されてしまう。それが、満員電車という閉ざされた空間の不思議なところでしょう。

注意すれば角が立つ。我慢すればモヤモヤが残る。スマホを見つめても、イヤホンをしても、聞こえてくるものは聞こえてくる。多くの人が、岡野さんや影山さんと同じように、ただ駅に着くのを待つしかないのが現実です。

それでも、ほんの少しだけ視点を変えてみる。
これまで取材してきた数々の仰天エピソードを振り返ってみると、登場人物にはどこか憎めない“変わった人”も少なくありません。もしかしたら、「あの3人組も、家では我慢ばかりしているのかもしれない」「あのおじさんも、今日のプレゼンに気合を入れるためにエアドラムが必要だったのかもしれない」――。そんな“勝手な想像”を当てはめてみると、ふつふつと湧いてきたイライラが、ちょっとしたクスクスに変わってくるかもしれません。

殺伐とした通勤電車のなかで、誰かに優しくなる必要はないのかもしれません。ただ、自分の心を少しだけ守るために、隣の人を“ちょっと変わった登場人物”として眺めてみる。そんなささやかな工夫が、明日の朝の数十分を、ほんの少しだけ軽くしてくれるかもしれません。

朝の満員電車で女性3人組にウンザリ…大声で愚痴「うちの旦那って使えないから!」/口パクで全力エアドラムを始めた謎のスーツ男も
※写真はイメージです(画像生成にAIを利用しています)
<再構成/日刊SPA!編集部>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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