コロナ禍の終焉、そして昨今のインバウンド効果の影響もあり、日本の観光産業は今までにない躍進を遂げています。ただ、観光地や公共交通機関での”混雑”に頭を抱える面々がいることも事実です。

 今回は、飲料メーカーの営業職に就く岸本さん(仮名・30歳)が、金曜の夜に新幹線で遭遇した”荷物トラブル”の一部始終を語ってくれました。

特大スーツケースで「新幹線の通路を占領する」女性客を注意した...の画像はこちら >>

荷物棚はすでに満杯、足元に忍ばせるしかなく

 岸本さんは、得意先の工場がある大阪から東京へ戻る途中でした。週末とあって、車内は旅行客で満員状態だったとのこと。仕事の疲れを癒そうと自分の指定席に向かった岸本さんでしたが、スーツケースを荷物棚に置こうにも、すでに空きスペースはまったくなかったそうです。

「今までの出張で見たことがないくらい混んでいて、バッグやスーツケースが無秩序に置かれているとんでもない状況でした」

 今回の出張は、複数の得意先を回るかなりハードなスケジュールだったため、サンプル商品や資料などを持参する必要があったので、いつもより大きめのスーツケースで臨んだ岸本さん。しかたなくスーツケースを足元に置かざるを得なかったそうです。

 一方、周囲に目をやると通路にまで荷物がはみ出しているような有様で、車内全体がどこか殺伐とした雰囲気に包まれていたようです。

「どうぞ」と言いながら荷物には手をつけない女性

 しばらくして、岸本さんはトイレへ立つことにしました。ところが——。

「気がついたら、通路にはさっきまでなかった特大のスーツケースが横向きに置いてあって、完全に塞がれている状態だったんです。その脇の席には中年の女性が座っていて、全く悪びれもせず仲間と談笑していて、呆気に取られました」

 岸本さんは「すみません、通りたいので荷物をずらしてもらえますか」と声をかけたそうですが、うまく伝わらなかったのか、その女性は手招きして「どうぞ」と一声返しただけだったといいます。

 やむをえず自分でスーツケースをずらして通り抜けると、今度は女性から「勝手に触らないで!」と言われてしまった岸本さん。

「は?、となりましたよ。ずらしてくれないから自分でやったのに、と思って。
『いや、通路にこんな置き方したらよくないと思いますけど!』と言い返したんです」

 しかし、チラッと岸本さんの方に視線をやった女性は、少し含み笑いをしただけで、全く相手にせず仲間との会話を続けたそうです。

周囲の仲間が一斉に振り返り”意気消沈”

 その声を聞きつけたのか、前後の席から4人が一斉に振り返りました。全員が女性の仲間だったようで、岸本さんには鋭い視線が浴びせかけられます。

「なんかクレームつけてる人がいる、という雰囲気がその周囲に漂い始めて。気づいたら僕が悪者みたいな状況になっていました。あの時ほど女性が怖いと感じたことはありませんでした。恥ずかしながら、私はにらみ返す度胸はありませんでした」

 言っていることは間違っていないという自覚はあったものの、あの瞬間は完全に孤立した感じだったと振り返ります。車掌を呼ぶことも頭をよぎりましたが、再び自分の座席に戻ってしまった岸本さん。

「私のプランでは、トイレを済まし、駅弁と共に冷えたビールを飲み干し終点の東京まで熟睡するはずだったのです。でも、トイレは無理となった今、不本意ですがこれ以上の尿意は禁物なので、ビールは諦め、駅弁を少しだけ食べて残りの2時間弱を乗り切ることにしました」

最後の最後まで後味の悪い新幹線移動

 結局、岸本さんは東京駅に到着するまでの間、なんとも居心地の悪い時間を過ごすことになったそうです。そして降車の際、何気なくその女性グループの方へ視線を向けると、全員が口をへの字に結んでにらみつけながら降車していったといいます。

「最後の最後まで後味が悪くて。出張の疲れより、あの集団から受けた精神的ダメージの方が数倍こたえましたよ。
次の出張の際はドア付近を予約することに決めました。当分このトラウマからは解放されないと思いますけど……」

 新幹線の車内マナーをめぐる問題は、今や珍しくない光景になりつつあります。正当な指摘をした側が悪者にされてしまうような状況は言語道断で、インバウンドに湧く今だからこそ正されるべきですね。

<TEXT/八木正規>

【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
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