米倉涼子主演の人気医療ドラマ「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」第6シリーズ(テレビ朝日系・木曜21時〜)。

難病患者が登場して、医局が勧める医師がAIの指示に従って手術したけど失敗。
それを大門未知子(米倉涼子)が超絶手術で助ける……といういつもの展開。

三人の肝臓をドミノ式に移植していくというトリッキーな手術をしていたが、あの手術は現実にあり得るのか? 調べてみた。
「ドクターX」ドラマでは何かよく分からなかった「ドミノ肝移植手術」について調べてみたら凄かった2話
イラストと文/北村ヂン

ドナーがいない二人の患者をまとめて救う奇策は


今回は、肝臓移植が必要な二組の患者が登場。

一人目はニシキグループのCEOで大金持ちの二色寿郎(モロ師岡)、二人目はドミノ師(そんな職業あるんだねぇ)の古沢研二(清原翔)。

どちらも、肝臓移植ができれば治療可能な病気ではあるが、日本での生体肝移植はおおむね家族間でしか認められていないため、ドナーがいないのだ。

二色の妻や子どもたちは臓器提供を拒否。浮気を繰り返し、暴力を振るってきたため、家族仲は最悪。自分の内臓を切ってまで助けたくないという。

しかし二色は病気が完治したら病院へ10億円の投資を約束しており、コストカッターの副院長・ニコラス・丹下(市村正親)は最優先で治療にあたろうとしていた。

一方、ドミノ師・古沢は家族もいないし金もないしで、入院費すら払えず病院を追い出されそうになっている。恋人・由理(上白石萌歌)が臓器提供を申し出ているが、家族ではないためドナーにはなれない。

病院から優遇される金持ちと、追い出されようとしている貧乏人という分かりやすい図式。

やがて、由理が二色の娘だということが判明する。
アレな父親を嫌っている上に、古沢との交際も反対され、家出をしていたのだ。なので当然、父親への臓器提供を承諾するわけもないのだが、大門は奇策を提案する。

それが「生体ドミノ肝移植」。

由理の肝臓を父親である二色へ移植。その際、二色から取り出した肝臓を古沢に移植するというもの。

通常の生体肝移植は家族間でなければならないが、
1次レシピエントから2次レシピエントへの移植は親族以外の第三者でもオッケーという特例を利用したウルトラCだ。

あの手術、現実味があるの?


しかし、そもそも二色の肝臓には問題があるからこそ肝臓移植が必要だったはず。そんな肝臓を移植して意味があるのだろうか?

ドラマだけ見ていると、この辺の事情がよく分からなかったのだが、調べてみたところ、ふたりが別々の病気にかかっているため、この方法が可能になるようだ。

二色の患っていた病気は「遺伝性ATTRアミロイドーシス」。

肝臓が突然変異したタンパク質を生み出してしまうようになり、それが長年にわたって体内に蓄積することで発症する難病なのだが、逆にいうと、発症するまでには20〜30年以上かかることもあるため、二色の肝臓を古沢に移植しても、すぐには発症しない可能性が高い。

一方、古沢の病気は「肝細胞がん」。こちらは早急に治療しないと命にかかわるので、緊急的に二色の肝臓を移植したという形だ。現実にも、似たような症状の患者間で行われることがある手術なのだという。


手術後、結婚すると発表した古沢と由理に対して大門は、「結婚して家族が増えれば、その家族の肝臓をまた移植することができる。サルベージ再肝移植!」と言っていた。

長年この肝臓を使い続けることで、いずれは二色と同様の症状が発症する可能性があるため、その時は子どもの肝臓を移植すればいいという意味の発言だったのだ。

ベストではないが、ドナーがいない状況で急場をしのぐためのベターな選択だったということだろう。将来、子どもに臓器提供を拒否されるような父親になっていないといいけど。

ライト層からガチ勢まで押さえる脚本がスゴイ


今回のドミノ肝移植の仕組み、ややこしい話なので、昔の医療ドラマだったらCGなどで「なぜドミノ肝移植が可能なのか?」みたいな解説をしそうなところだが、本作ではセリフ内でサラっと触れる程度で詳細な説明はナシ。

ストーリーを理解する上で大きな問題にならなそうな小難しい事柄をわざわざ説明してチャンネル離脱を招くよりは、その辺の専門知識は雰囲気くらいで見てくれれば……という判断なのかも。

冒頭の子どもたちのドミノ倒しから、ドミノ師、ドミノ倒産、ドミノ倒しリスク、そしてドミノ生体肝移植と、「ドミノ」をキーワードにストーリーが展開していき、最後に医師たちがずっこけてドミノ倒しになるというオチ。

こういった、表面的に分かりやすい伏線をキレイに回収したり、遠藤憲一や岸部一徳たちカワイイおじさんたちのワチャワチャを見せたりして視聴者の満足度を上げつつ、医療的側面で深く見てもそれはそれで納得できるという二段構えの作り。

長く支持され続けているシリーズだけあって、ライト層からガチ勢まで押さえるすきのない脚本だ。

次回、西田敏行が復活!?


「より多くの人を救うため」なんて耳ざわりのいいことを言ってコストカットを推し進めていたニコラス・丹下だが、裏では、コストカットの名の下に閉鎖した分院の土地などを売り払って金を稼ぐ「東帝大病院リバースプラン」なる計画が動いていることが明らかになった。

これを進めるため、院長である蛭間(西田敏行)を告発して、目の届かない拘置所に追いやっていたのだ。

ゴーン前会長が拘置されている間に西川氏が社長に就任して、その西川社長も報酬問題を起こして……という日産自動車のお家騒動をちょっと彷彿とさせる。


そんな蛭間院長も次回復活する模様(ゴーン社長のあの格好で保釈されたら笑うが)。ひとまず、西田敏行の体調問題で退場したわけじゃなくてよかった!
(イラストと文/北村ヂン)

【配信サイト】
Abema TV
テレ朝動画

『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日)
脚本:中園ミホ、林誠人、香坂隆史
音楽:沢田完
主題歌:P!NK「ソー・ホワット」
企画協力:古賀誠一(オスカープロモーション)
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:大江達樹(テレビ朝日)、都築歩(テレビ朝日)、霜田一寿(ザ・ワークス)、大垣一穂(ザ・ワークス)、伊賀宣子(ザ・ワークス)
演出:田村直己(テレビ朝日)、松田秀知、ほか
制作協力:ザ・ワークス
制作著作:テレビ朝日
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