「スカーレット」32話。関西出身俳優たちの会話のリアル。ホンモノは速い
連続テレビ小説「スカーレット」32話。木俣冬の連続朝ドラレビューでエキレビ!毎日追いかけます

(これまでの木俣冬の朝ドラレビューはこちらから)

連続テレビ小説「スカーレット」 
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~
「スカーレット」32話。関西出身俳優たちの会話のリアル。ホンモノは速い

『連続テレビ小説 スカーレット Part1 (1)』 (NHKドラマ・ガイド)

第6週「自分で決めた道」32回(11月5日・火 放送 演出・鈴木航)


見応えある回だった!
関西出身の人たちによる関西弁の日常会話ってこんなにすらすらと入ってくるんだなあと感心した32回。
やっぱり慣れてない者がしゃべるとイントネーションを意識しすぎて強調してしまい、へんなクセに聞こえてしまうのだなと思う。何も気にせずふつーにしゃべっている人と、標準語のここが違うと意識してしゃべっている人では全然違う。
スピードも含めて。ホンモノはスピードが速い。

マツは喜美子が結婚したいと勘違いする


母マツ(富田靖子)が倒れたと聞いて急いで帰ってきた喜美子(戸田恵梨香)だったが、マツは夏バテで倒れたことはあったがさして悪いわけではなかった。家の経済事情が悪化したため、常治(北村一輝)は喜美子を実家に戻して働かせようと目論んでいた。

喜美子がこの機会に進学の話をしようとすると、マツは喜美子が結婚したいと思っていると勘違いする。芸術家のジョージ富士川(西川貴教)の名前を聞いて、「じょうじ」つながりで、結婚と思ったらしい。ちょうどマツも18歳のときに結婚したことがここでわかる。
じゃあいま、マツは何歳なんだろう。40歳くらい? ともかく、母子、合わせて同じ名前の人と結婚したらそれはそれで面白いが、そんなわけもなく。喜美子は結婚とは違う道を進もうと考えていた。

「みんな生き生きとかっこよく自分の人生をな」
大阪で出会った大久保、さだ、ちや子に感化された喜美子だったが、常治は聞く耳をもたない。3年前、「信楽にいたい」と泣いていたじゃないかと無理やり自分の意見を正当化する。

「まあいろいろあるわな 3年もおらんかったら」


この噛み合わない親子関係って誰しも経験あるんじゃないか。少なくとも私はある。
こっちのやりたいことと先方のやりたいことが絶対に交わらず疲れていくばかり。他人だったら考えが違ったら離れれば済むけれど、家族だから完全に縁を断ち切ることもできず、どうにもならない苛立ちと絶望。
わかるわかる喜美子の気持ちと思って観ていると、ドラマはさらに上乗せしてくる。朝からご飯を何倍もおかわりするみたいに。

喜美子が大阪に帰るとき、末の妹・百合子(稲垣来泉)が病院に母の薬をもらいに行くところに会う。
代わりに喜美子が行くと言うと、「大人はあかん」と言う。

直子(桜庭ななみ)と信作(林遣都)がやって来て、子供がいくことで薬代を払うことを引き伸ばしてもらっていることを喜美子は聞かされる。
貧しい家庭のあまりにもリアルな描写に、喜美子が言葉を失う。私も愕然となった。でもこんな感情をくれるドラマは大好きだ。朝ドラだからっていつでもふんわりしないで、現実に目を向けた描写はNHKだからこそやるべきだと思った32回。

また、突然、林遣都の出番があるのも、直子や百合子が家の事情を話すと父に怒られるから、代わりに信作が話すというナットクの意味をもたせていることにも感心する。


さらに、喜美子が3年信楽を離れていたと言うことで、信楽を出ずにそこで生きている人間たちとの心の距離のリアルも書く。

「まあいろいろあるわな 3年もおらんかったら」(信作)

故郷を離れている人への地元の人の微妙な感情。観光客はよくいえば一期一会、悪くいえばその場限りだから親切だ。でも生活者(当事者)レベルでは、そこにいるかいないかで対応は違う。愛憎が入り交じる。「地元」を描くことが主流の朝ドラは、たいてい無条件に愛情を描くが、残された者のもやもやを鋭くついてきたことはとても興味深い。
それと、生きることと夢をもつことの差異についても。生活によって夢をもったり芸術を愛でたりする気持ちの持てない人もいるという現実を常治が体現している。彼にとって酒が夢や芸術に代わる唯一、ぎりぎり手の出る楽しみなのだ。

関西弁をうまく使える俳優がそろったことで実現するリアルな人間ドラマ。このまま突き詰めていくととても意義深いものになりそうだ。
(木俣冬 タイトルデザイン/まつもとりえこ)

登場人物のまとめとあらすじ (週の終わりに更新していきます)


●川原家
川原喜美子…戸田恵梨香 幼少期 川島夕空  主人公。空襲のとき妹の手を離してトラウマにしてしまったことを引きずっている。
 絵がうまく金賞をとるほどの腕前。勉強もできる。とくに数学。学校の先生には進学を進められるが中学卒業後、大阪の荒木荘に就職する。やがて、美術学校に進学を考える。

川原常治…北村一輝 戦争や商売の失敗で何もかも失い、大阪から信楽にやってきた。気のいい家長だが、酒好きで、借金もある。にもかかわらず人助けをしてしまうお人好し。運送業を営んでいる。家に泥棒が入り、
喜美子の給料を前借りに行く。

川原マツ…富田靖子 地主の娘だったがなぜか常治と結婚。体が弱いらしく家事を喜美子の手伝いに頼っている。あまり子供の教育に熱心には見えない。
川原直子…桜庭ななみ 幼少期 やくわなつみ→安原琉那 川原家次女 空襲でこわい目にあってPTSDに苦しんでいる。それを理由にわがまま放題。
川原百合子…福田麻由子 幼少期 稲垣来泉 

●熊谷家
熊谷照子…大島優子 幼少期 横溝菜帆 信楽の大きな窯元の娘。「友達になってあげてもいい」が口癖で喜美子にやたら構う。兄が学徒動員で戦死しているため、家業を継がないといけない。婦人警官になりたかったが諦めた。高校生になっても友達がいないが、楽しげな様子を書いた手紙を大量に喜美子に送っている。喜美子とは幼いときキスした仲。

熊谷秀男…阪田マサノブ  信楽で最も大きな「丸熊陶業」の社長。
熊谷和歌子… 未知やすえ 照子の母

●大野家
大野信作…林遣都 幼少期 中村謙心 喜美子の同級生 体が弱い。高校で友達は照子だけだったが、ラブレターをもらう。
大野忠信…マギー 大野雑貨店の店主。信作の父。戦争時、常治に助けられてその恩返しに、信楽に川原一家を呼んでなにかと世話する。
大野陽子…財前直見 信作の母。川原一家に目をかける。

●滋賀で出会った人たち
慶乃川善…村上ショージ 丸熊陶業の陶工。陶芸家を目指していたが諦めて引退し草津へ引っ越す。喜美子に作品を「ゴミ」扱いされる。

草間宗一郎…佐藤隆太 大阪の闇市で常治に拾われる謎の旅人。医者の見立てでは「心に栄養が足りない」。戦時中は満州にいた。帰国の際、離れ離れになってしまった妻・里子の行方を探している。喜美子に柔道を教える。大阪に通訳の仕事で来たとき喜美子と再会。大阪には妻が別の男と結婚し店を営んでおり、離婚届を渡す。

工藤…福田転球  大阪から来た借金取り。  幼い子どもがいる。
本木…武蔵 大阪から来た借金取り。

…中川元喜  常治に雇われていたが、突然いなくなる。川原家のお金を盗んだ疑惑。
博之…請園裕太 常治に雇われていたが、突然いなくなる。川原家のお金を盗んだ疑惑。

●大阪 荒木荘
荒木さだ…羽野晶紀 荒木荘の大家。下着デザイナーでもある。マツの遠縁。
大久保のぶ子…三林京子 荒木荘の女中を長らく務めていた。喜美子を雇うことに反対するが、辛抱して彼女を一人前に鍛え上げたすえ、引退し娘の住む地へ引っ越す。女中の月給が安いのでストッキングの繕い物の内職をさせる。

酒田圭介…溝端淳平 荒木荘の下宿人で、医学生。妹を原因不明の病で亡くしている。喜美子に密かに恋されるが、あき子に一目惚れして、交際のすえ、荒木荘を出る。

庵堂ちや子…水野美紀 荒木荘の下宿人。新聞記者で不規則な生活をしていて、部屋も散らかっている。
田中雄太郎…木本武宏 荒木荘の下宿人。市役所をやめて俳優を目指すが、デビュー作「大阪ここにあり」以降、出演作がない。
静 マスター…オール阪神 喫茶店のマスター。静を休業し、歌える喫茶「さえずり」を新装開店した。

平田昭三…辻本茂雄 デイリー大阪編集長 バツイチ 喜美子の働きを気に入って、引き抜こうとする。
不況になって大手新聞社に引き抜かれた。

石ノ原…松木賢三 デイリー大阪記者
タク坊…マエチャン デイリー大阪記者
二ノ宮京子…木全晶子 荒木商事社員 下着ファッションショーに参加
千賀子…小原華 下着ファッションショーに参加
麻子…井上安世 下着ファッションショーに参加
珠子…津川マミ 下着ファッションショーに参加 
アケミ…あだち理絵子 道頓堀のキャバレーのホステス お化粧のアドバイザーとしてさだに呼ばれる。

泉田工業の会長・泉田庄一郎…芦屋雁三郎 あき子の父。荒木荘の前を犬のゴンを散歩させていた。
泉田あき子 …佐津川愛美 圭介に一目惚れされて交際をはじめる。

ジョージ富士川…西川貴教 「自由は不自由だ」がキメ台詞の人気芸術家。喜美子が通おうと思っている美術学校の特別講師。
草間里子…行平あい佳 草間と満州からの帰り生き別れ、別の男と大阪で飯屋を営んでいる。妊娠もしている。

あらすじ


第一週 昭和22年 喜美子9歳  家族で大阪から信楽に引っ越してくる。信楽焼と出会う。
第二週 昭和28年 喜美子15歳 中学を卒業し、大阪に就職する。
第三週 昭和28年 喜美子15歳 大阪の荒木荘で女中見習い。初任給1000円を仕送りする。
第四週 昭和30年 喜美子18歳 女中として一人前になり荒木荘を切り盛りする。
第五週 昭和30年秋から暮にかけて。喜美子、初恋と失恋。美術学校に行くことを決める。

脚本:水橋文美江
演出:中島由貴、佐藤譲、鈴木航ほか
音楽:冬野ユミ
キャスト: 戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ、福田麻由子、佐藤隆太、大島優子、林 遣都、財前直見、水野美紀、溝端淳平ほか
語り:中條誠子アナウンサー
主題歌:Superfly「フレア」
制作統括:内田ゆき