アウェーでもありのままの五郎さん
得意先の壊れたバイオリンを直すために、"楽器の街"お茶の水を訪れた五郎さん。バイオリン店の店主・下倉(近藤公園)が弓毛となる馬の尻尾を愛でる姿を見た五郎さんは、乾燥春雨を思い出して「腹が減った」。どっちもどっちの変わり者だ。
坂が多くてよけいに腹が減るが、なかなか見つからない。約2km離れた神保町まで歩いてカレーにしようと決意を固めると、道中で「南インド料理」とのみ書かれた看板を発見して中へ。置き看板には、「ケララ地方」と書かれていた。
北インドも南インドも何もわからないのは五郎さんも同じだろう。それでも、白を基調としたオシャレで得体の知れないレストランでもひるまないのはさすがだ。入ってすぐに、スパイスの匂いを吸い込もうと深呼吸をかますほど、アウェーの戦いに慣れている。
未知のメニューの連続
「脳が曼荼羅状態だ」
慣れているとはいえ、知らないものは知らない。今日の五郎さんは、いつもよりも多めにキョロキョロ。挙動不審なんかではなく、堂々と他人の話に聞き耳を立てる。
男性客が注文した一番人気の「えびカレーバナナの葉包み」は、その名の通りでっかい葉っぱにカレーが包まれていてなんだかジャンク。
若い女性2人組の元には、「チキンシチュー」と「マトンのビリヤニ」が届いた。「チキンシチュー」は、定番のホワイトシチューの見た目をしているのに味がクリーミーなカレー。「ビリヤニ」は、ざっくりいうとスパイスがきいた炊き込みご飯だが、まだなじみは薄い。さらには米粉のクレープ「アッパム」も登場し、味の想像が難しいメニューたちにさすがの五郎さんも参ってしまったようだ。
「ん〜? この泡は?」
五郎さんでも知っているヨーグルトベースのドリンク「ラッシー」が運ばれてくる。しかしこのラッシーも、シュワッとしているそうで、「こんなラッシー初めてだ」そう。
インドはサラっ 日本はドロッ その違い
「南インドのカレーってサラっとしたカレーじゃない? でも日本はドロっとしてるでしょ。どうしてか知ってる? ヒントは海」
こんなカップルの会話が聞こえてきた。続きが気になる五郎さんだが、タイミング悪く店員が「ビーフフライ」を持ってきてしまい、答えは闇の中へ。「ちょ、ちょっと、気になるじゃないか……」と盗み聞きを失敗してしまう。
ちなみに、日本は海軍が船の上で食べるからこぼれないようにドロドロになり、インドは具よりもスパイス重視だからドロっとなる成分が少ないのが理由らしい。
他のテーブルが気になる五郎さんの元にも、米粉のクレープ「ガーリックチーズドーサ」が届く。女性客が食べていた「アッパム」との違いはよくわからないが、店で別々に出しているということは、何かしらの差があるのだろう。ちょっと調べたくらいじゃよくわからなかったと書いておきたい。
「ドーサ」には、チリ、ミント、ココナッツなど数種類のチャツネが添えられていた。正直、チャツネすらよくわからないが、これは「ドーサにつけるソース」ということにして五郎さんは先に進む。
手でちぎった感触すらも楽しみつつ、いろいろなチャツネを試す。「赤さを裏切らない辛さ」と自分の食の常識と照らし合わせながら、次々と口へ運ぶ。好奇心と食欲が融合した食事だ。
「こいつは、こうした方が……。うん、正解」
揚げナン「バトゥーラ」にもチャツネをつけたり、細くてパラッパラのお米「バスマティライス」に「バトゥーラ」を粉々にしてかけたりと、本場のインド人がやってるのかどうかわからない食べ方を楽しみまくる。粉砕する手のスピード感が、五郎さんのテンションの高さを物語っていた。これぞ、孤独のグルメだ。
数種類のカレーをごちゃ混ぜにして味わい、さらにはライスとラッシーと「海老カレーバナナの葉包み」を追加注文し、五郎さんの食欲と好奇心は留まることを知らない。帰り際には、焼肉屋のガムの感じで、フェンネルとザラメを一緒にパクリ。ちょっと多すぎたフェンネルの香りが、ずっと口の中に残っていたんだろうな。
(さわだ 沢野奈津夫改め)
「孤独のグルメ Season8」
放送時間:金曜24時12分〜
出演:松重豊、石橋けい 近藤公園
原作:原作/久住昌之・画/谷口ジロー
音楽:The Screen Tones
久住昌之、フクムラサトシ、Shake、河野文彦、栗木健
オープニングテーマ:「Goo,Goo,Goro!」
作曲:久住昌之演奏:The Screen Tonesエンディングテーマ:「五郎の12PM」作曲:久住昌之歌:伝美脚本:田口佳宏 児玉頼子演出:井川尊史 北畑龍一 北尾賢人