倉本聰・脚本「やすらぎの刻~道」(テレビ朝日系・月~金11時30分~)第36週。

マヤ(加賀まりこ)が「寝た相手、寝取った相手」だけではなく、菊村栄(石坂浩二)やお嬢(浅丘ルリ子)といった友人たちの下ネタも暴露した自叙伝を書くの書かないので盛り上がる中、中川玉子(いしだあゆみ)の衝撃的な過去が明かされた玉子ウィークだった。

「やすらぎの刻~道」吉岡秀隆といしだあゆみの再会に「北の国から」を連想せずにはいられない第36週
イラストと文/北村ヂン

とんでもない大物と付き合っていた玉子さん


違法薬物の所持で逮捕され、その後「やすらぎの郷」のスタッフとして働いている竹芝柳介(関口まなと)の元に、とある怖~いフィクサーから連絡が入った。

元首相のオトモダチで、海外にも強いネットワークを持ち、「ヤクザなんてとても寄りつけない」サロンをやっていたという超大物・マキタ会長(宝田明)の代理人からだという。

柳介が警察に口を割ったことで逮捕された、半グレ集団のメンバーとの仲裁のために3000万円支払うように要求しているんだとか。

郷のスタッフたちは困り果て、その手の人たちとコネクションがありそうな秀サンに相談。

すると「自分よりも、もっと適当な方がここにおられます」ということで、玉子と一緒にマキタ会長に会いに行くことに。

ま、そういう関係なのかなと予想はしていたが、案の定、マキタ会長と玉子は過去に男女の関係にあったようだ。

それにしてもマキタ会長の大物っぷりよ。

竹下柳介への恐喝問題は結局、マキタの名前を騙った“馬鹿たれ”のやったことで、ちょろっと電話をかけるだけで解決。

しかも、その電話が怖い。中国語で何やら話していたかと思ったら、「終わった。ワンラ(完了)。ジ・エンド」ご丁寧に三カ国語で完了を宣言。中国人の暗殺集団とかに始末を依頼したんじゃ……。


玉子との思い出の写真もハンパなかった。

「シナトラの御大がいて、あの飲んべえのディーン・マーティンの野郎がいて、サミー・デイヴィスJr.がいて、そこに君がいる」

なんちゅう交流関係だ。ジェリー藤尾の「マイ・ウェイ」を聴いて喜んでいる場合じゃなかった。

どんな経緯があったのかは謎だが、このマキタ会長と男女関係にあった玉子。しかし、マキタ会長が何かをやらかしたようで、別れることとなったようだ。

しかもマキタ会長との間に、誠という子どもまで作っていたのだ。

最初は玉子の元で育てていたものの、36年前にマキタによって「強引にさらわれた」んだとか。しかしそのマキタも15年以上会っていないという。

いしだあゆみと吉岡秀隆の再会!


「(誠に)会いたいです!」と懇願した玉子は、マキタの部下にクルマで工事現場に連れて行かれる。そこには、現場で警備をする誠(吉岡秀隆)の姿が。

仕事が終わり、娘を迎えに行くところまで延々と追跡したのか、帰りがけに寄ったスーパーでも誠たちをストーキングする玉子。

娘がシューズを物欲しげに眺めていたのを見た玉子は、思わずシューズをバッとつかんで店外に出るが、当然ごとく店員に取り押さえられてしまった。

玉子のこの行動、よく分からなかった。


クルマまで戻って、マキタの部下に金を借りるつもりだったのか(シューズ置いてけよ!)、誠たちを追いかけてシューズを渡すつもりだったのか(金を払ってからにしろよ!)。桂木夫人(大空眞弓)に付き合って万引きを繰り返しているうちに、倫理観がぶっ壊れてしまったのか!?

母と子の感動の再会シーンのハズが、玉子の行動が異常すぎて、イマイチ感情がついていけなかった。

その後、改めて誠とカフェで再会するのだが、その経緯も謎。スーパーで会った際に連絡先でも交換して、ここで会う約束をしていたのかと思っていたのだが……。

「母さん、今日どうしてここに来たの? ここの場所の事、どうやって知ったの?」

どういうこと? エスパーなの!?

細かいモヤモヤはあるものの、いしだあゆみと吉岡秀隆が母子として向かい合っている姿は、「北の国から」ファンからするとたまらない。純くんと令子さんが遂に再会……!

アメリカ留学し、弁護士を目指していた誠だったが、何だかんだでマキタ会長の下を飛び出し、現在は現場作業で日銭を稼ぎながら、外房の山奥に買った土地で自給自足の生活を目指しているという。……なんちゅうボンヤリとした夢!

純くん……じゃなくて吉岡秀隆……。何歳になってもボンクラ感のある男演技が際立っている。

この母子の話をもっと見ていたいところだが、もう吉岡秀隆、出てこなそうだ。

「北の国から」で唐突に死んでしまったいしだあゆみに対する、息子との再会というご褒美エピソードだったんじゃないだろうか。

梅宮辰夫の幽霊、また登場しないだろうか


12月12日に飛び込んできた梅宮辰夫の訃報もショックだった。

老人の出演者が多いだけに、野際陽子、織本順吉、八千草薫、山谷初男と、「やすらぎ」シリーズの放送中になくなったり、本作が遺作となってしまった演者は多いが、そこに梅宮辰夫も加わってしまった。


ホント、老いたレジェンド俳優たちが命の最期の炎を燃やして作りあげているドラマだ。

倉本聰自身も「本作のシナリオを書き終えるまでは死ねない」と身体のことを心配しながら執筆を続けていたようだが、作中で「道」のシナリオを執筆している菊村も、

「今、締め切りを迫っているのはテレビのプロデューサーではなく、自分の寿命という、今すぐにもクルかも知れぬ恐ろしい相手だった」

と語っている。

……とはいえ、梅宮辰夫の役どころは、あの世からちょくちょく現世にやってくる幽霊。またひょっこり出てきそうな気もしてしまう。
(イラストと文/北村ヂン)

【配信サイト】
Tver

『やすらぎの刻〜道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日
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