米倉涼子主演の人気医療ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」第6シリーズ(テレビ朝日系・木曜21時~)第9話。

宇崎竜童が、矢沢永吉っぽいロックスター・勇チャンこと九藤勇次を。
さらに「ゲスの極み乙女。」の川谷絵音が、おそらく米津玄師をモチーフにしたと思われる、ネット配信で大ブレイク中の若手アーティスト・新津多九也として出演。

ふたりがそれぞれ、痔の手術のため東帝大学病院に極秘入院してくるという、明らかな面白回。……と思いきや、意外なシリアス展開に。
「ドクターX」矢沢永吉っぽい宇崎竜童と米津玄師っぽい川谷絵音登場。YAZAWAは許してくれるのか?
イラストと文/北村ヂン

自分の歌をニセ矢沢永吉として熱唱する宇崎竜童


今回は、昭和なロックスター像を完璧に演じきった宇崎竜童に心を奪われてしまった。

例の永ちゃん口調をコピーし、自叙伝のタイトルは『成り上がり』ならぬ『たたきあげ』。「オレはいいけど、九藤勇次がなんて言うかな?」といった、永ちゃん名言パロディも飛び出す。

露骨に永ちゃんをイメージさせるキャラクターにしているのに、性格はワガママで小心者で見栄っ張り、その上、金もないというなかなかヒドイ設定だ。

それ以上に、この永ちゃん風・面白ロックおじさんのキャラを、同業者である宇崎竜童にやらせるとは、なんちゅうキャスティングなのか……。勇チャンの妻・今日子(筒井真理子)からも、どこか阿木燿子っぽさが漂っていた。

勇チャンの持ち曲としてチョイチョイ熱唱していたのが、宇崎竜童自身のニューアルバム『from 元年』収録の「ROCK'N ROLL HEART」。自分の曲を、ニセ永ちゃんとして歌いきる宇崎竜童……いい人だ。

そんな勇チャンは、痔の手術で入院してきただけなのに、特別室じゃないのが許せないだとか、格好いい難病だと偽って記者会見をさせろだとか、面倒くささを爆発。しかしその会見中にぶっ倒れ、深刻な病気が発見された。


「後腹膜肉腫ステージ3」という、念願の難病をゲットしたのに、今度は手術を怖がって逃げ出してしまう。しかも、バイクで遠くまで行こうとしていたのに、痔が痛くて断念するという情けなさ……。

ホントに「YAZAWAがなんて言うかな?」と心配になってしまう。

大門未知子も「失敗しないので」と言えない


アホなロックスターの面白回かと思いきや、難病が発覚。いつもだったら大門未知子(米倉涼子)が「私に切らせてー!」と無邪気に言い出すところだが、今回は妙にシリアスなモードに。

というのも前シリーズの最終回で、大門未知子自身「後腹膜肉腫ステージ3」であることが発覚し、余命三ヶ月と宣告されているのだ。

スーパードクターが登場する医療ドラマや漫画で定番の「どんなに超絶技術を持っていても自分は手術できない」パターン(ブラック・ジャックは鏡を使って自分で手術していたが)。

大門も「私なら切れるけど……」と不安をにじませつつ、あらゆるパターンの手術プランをノートに書き留めた上で、いつもボンクラ扱いしていた仲間たちに自らの身体を任せていた。

「趣味:手術、特技:手術」とアピールし、なおかつ「私、失敗しないので」と言ってのける大門未知子。嬉しそうに手術に臨む姿は、時に命の重みよりも、ホビーとしての手術を優先しているようにも見えてしまう。

そんな大門も、自らが手術される側になることで、患者の気持ちが痛いほどわかったはず。……と思いきや、今シリーズでも、何もなかったかのように嬉々として手術をやりまくっていた。

しかし、さすがに自分と同じ病気には思うところがあるのだろう。
軽々しく「失敗しないので」とは言えなかったようだ。

「私の時は腫瘍がこんなに巨大じゃなかった。多分、あの時より厳しいオペになる……」

逃げ出した勇チャンを自ら探しに行き、いつもだったら「手術しないと死ぬよ?」なんて厳しく言い放ちそうなところ、目を潤ませながら「あなたを助けたいんだよ!」とウェットな感じで説得していた。

「失敗しないので」誕生秘話も明かされた(第6シリーズにして!)。

新人の頃、メスで患者の身体を切ることが怖くて震えていた大門は、思わず「私は失敗しない」と声に出して言っていたという。そうやって自分に打ち勝たないと、患者の命を救えないのだ。

良くも悪くもいつも軽い大門未知子の、別の一面がチョイ見せさせた回だった。

最終回に武田真治の見せ場はあるのか?


さていよいよ今夜最終回。

ここ何シリーズか、最終回で敵役や身内(第5シリーズでは自分)が難病に倒れて……というパターンが続いているが、今シリーズではニコラス丹下(市村正親)を手術することになりそうだ。

患者の情報をリークすることで株価を操作して儲けるという、なかなかセコイ犯罪で拘留中の丹下。

「日本の医療を救う」という思いは本気なのか、言っているだけなのかイマイチよく分からないし、かといって大門と強く対立しているわけでもない。

敵役としてはイマイチ中途半端な存在で、今シリーズが盛り上がりに欠ける一因ともなっている。


さらに存在感がビミョーなのが、丹下のお付き・鮫島有(武田真治)。初回でいきなり大門に腕を切断されるという、ショッキングな登場をしたわりに、その後の見せ場は、丹下と一緒に「5億ドルサンバ」を踊っていたくらい。

その鮫島が、丹下を裏切って司法取引に応じるようだ。

いいキャラではあるものの、イマイチ存在感が薄かった丹下&鮫島(ついでにユースケ・サンタマリアと清水ミチコ)が、最終回でどんな本音を出してくるのか!?
(イラストと文/北村ヂン)

【配信サイト】
Abema TV
テレ朝動画

『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日)
脚本:中園ミホ、林誠人、香坂隆史
音楽:沢田完
主題歌:P!NK「ソー・ホワット」
企画協力:古賀誠一(オスカープロモーション)
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:大江達樹(テレビ朝日)、都築歩(テレビ朝日)、霜田一寿(ザ・ワークス)、大垣一穂(ザ・ワークス)、伊賀宣子(ザ・ワークス)
演出:田村直己(テレビ朝日)、松田秀知、ほか
制作協力:ザ・ワークス
制作著作:テレビ朝日
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