2020年1月からのTVアニメ放送開始を間近にした著者の平尾アウリインタビュー後編では、原作者としてのアニメへの関わり方などを尋ねていく。
(前編はこちら)
服装については、小姑みたいに細かくお願いをした(笑)
──山本裕介監督を始めとしたアニメのスタッフと最初に会った時には、どんな話をしたのですか?
平尾 アニメの制作が始まってからもしばらくの間、打ち合わせなどは(担当編集の)猪飼(幹太)さんに全部お任せしていて。私は顔を出していなかったんです。
猪飼 打ち合わせには私が出ていたのですが、シナリオや設定なども全部、平尾さんにもチェックしていただいてます。
平尾 その返事を猪飼さんにお伝えするという形でした。私が初めてアニメのスタッフさんとお会いした時には、大体、現場ができあがっている感じでしたね。
猪飼 平尾さんも、オーディションにはいらっしゃっていたし、アフレコもほとんど毎回参加されていました。
──監修の際、平尾さんの方から伝えたことで、特に大きなことや印象的なことなどはありますか?
平尾 基本的には、絵についてのお願いだけですね。
──PVやほぼ完成状態の1話を観たのですが、原作のイメージをすごく大事にしている印象を受けました。
平尾 はい。私の絵に似せてくださっているし、すごく可愛いですよね。
(第4弾PV)
猪飼 平尾さんからの希望として、わりと具体的に出したのは服に関してですね。この子は、こういう服を着るとか、こういう色が好きということについては、けっこう詳細な希望を伝えて、(アニメ制作サイドに)すごく丁寧に反映していただきました。
平尾 服装については、小姑みたいに細かくお願いをしてしまいました(笑)。
猪飼 漫画は基本モノクロなので、こちらから要望を出すだけでなく、アニメのスタッフさんの方から「この子はどういう色ですか?」などと細かく質問してくださったりもしました。
立花さんは、ずっと謝ってる感じもすごく舞菜っぽかった
──山本裕介監督の印象を教えてください。
平尾 お仕事がものすごく丁寧な方だなと思いました。アフレコの時も、私には全然分からないような細かなところにもすごくこだわってくださっていて、何度もリテイクの指示を出されていたのが印象的でした。
──先日、山本監督にもお話をうかがったのですが(1月初旬にインタビューを公開予定)、オーディションの際、舞菜役の立花日菜さんに関しては「平尾先生の鶴の一声もあった」と仰っていました。立花さんのどのようなところに、舞菜らしさを感じたのですか?
平尾 オーディションの時、すごい、ずっと謝っていたんです(笑)。
──謝っていた?
平尾 後から聞いたらオーディションを受けたことも、まだほとんど無かったらしくて。全部のことに「すみません。すみません」って謝っていたんです。それがすごく可愛くて、舞菜っぽいなって。
猪飼 オーディションの時も「可愛い、可愛い」と言ってましたね(笑)。
平尾 もちろん、お芝居もすごく好きだなって思っていました。その上で、ずっと謝ってる感じもすごく舞菜っぽかったんです。
──えりぴよ役のファイルーズあいさんについても、オーディションでの印象を教えてください。
平尾 ファイルーズさんは、めちゃくちゃ元気が良くて。オーディションでも一番元気が良かったんです。
──ファイルーズさんは、7月〜9月に放送された「ダンベル何キロ持てる?」で主人公の紗倉ひびきを演じて一躍注目を集めた新人声優ですが、『推し武道』のオーディションは、おそらく「ダンベル」の放送よりも前ですよね?
猪飼 はい。オーディションの時は、制作陣も製作委員会の人間も、みんなファイルーズさんのことをほとんど知らない状態でした。でも、オーディションを聞いた後は、満場一致という形で決まりました。ご本人のお芝居の力で、我々全員が説得された形です。
平尾 ファイルーズさんにオーディションに来てもらえて良かったです。
アニメはパステル調の鮮やかで可愛い感じがすごく素敵
──第1話の放送も近づいていますが、完成した映像を観ての感想を教えてください。
平尾 私が観たのは完成一歩手前のものなのですが、彩度高めの淡い感じの映像で。私は、ずっと自分の漫画は陰気だと思っていたので、パステル調の鮮やかで可愛い感じになっているのがすごく素敵でした。
猪飼 全体の色の方向性に関しても、かなり初期の段階で、原色バキバキみたいな感じではなく、淡い色合いの方向でというお願いは伝えていました。ただ、山本監督たちの方でも、そういった方向性で考えられていたみたいで。元々、双方のイメージに大きな齟齬が無かったようでしたし、さらに繊細なリクエストにも対応してくださって、ありがたかったです。
──原作サイドとアニメ制作陣のコミュニケーションも、かなりスムーズだったのですね。
猪飼 先ほど、お話しされていたアイドルやオタクの振る舞いやマナーに関しても、かなり繊細に描いていただいて。脚本の段階などで、ちょっと違うなと思ってお願いしたところは、丁寧に拾っていただきましたし。逆に、制作陣の方から「このオタクの振る舞いは大丈夫でしょうか?」みたいに確認をしてくださったりしました。
平尾 そうですね。本当にありがたいです。アフレコの際には「マナー的にカフェで大声を出させないようにしてください」みたいな話も出ていて面白かったです(笑)。
猪飼 映像的には、そういうデフォルメした方が面白く見えるのかもしれないのですが、オタクのマナーとしてはお店で騒ぐのは良くないことなので。そういった指摘にも、一つ一つ気を配っていただけました。
──アニメ制作陣の方から、漫画を読むだけでは分からない裏設定などの資料が欲しいと依頼されたりはしましたか?
平尾 何かありましたっけ?
猪飼 資料で言えば、誰が誰を何と呼ぶのかという呼び名の対応表や、それぞれキャラクターの部屋の設定、誰が一人暮らしで誰が実家暮らしなのか、といったこともお伝えしました。他にも、いろいろと細かなところまで、確認しながら作ってくださっています。それこそ今さっき、スタッフさんからキャラクターの3サイズを聞かれたので、これからお答えするところです(笑)。あと、ChamJamの運営スタッフには名前も無かったのですが、アニメにもけっこう登場するので、名前を付けて欲しいというオーダーがあって。
平尾 名前も考えました。
猪飼 そのおかげで、原作でもちょっと出番が増えてます。ChamJamのオタクにも、一人一人名前がついているし、キャストさんもついていただいてます。
1話のお気に入りは、くまささんの頬の肉が揺れるところ
──少しネタバレになるかもしれないのですが、1話で特に印象的だったシーンを教えてください。
平尾 くまささんの頬の肉が揺れるところです。「ここいる?」みたいな、別に揺れなくても良いところを揺らしてるのがすごく好きで。
──第2弾PVにも入っているくまさの振り向きのシーンですね。
(第2弾PV)
平尾 なんで頬を揺らしたのかな。謎ですけど、お気に入りです(笑)。
──アニメスタッフの謎のこだわりを感じますね。では、最後に1月からのアニメ放送を楽しみにしている『推し武道』ファンに向けて、アニメ版『推し武道』のオススメのポイントをお願いします。
平尾 アニメでは、ChamJamのライブにも振りがついていて可愛く踊っているので、アイドル感がすごく出ていると思います。漫画の場合は、ストーリーを進めるだけなら、ライブシーンはあまりいらないというか、MCのシーンだけがあれば良いんですよね。でも、アニメでは、ちゃんと素敵なライブシーンを作ってくださっているので、絶対に観て欲しいです。
──まだ『推し武道』という作品に触れたことの無い人たちに向けても、メッセージを頂けますか?
平尾 自分としてはアイドル物の漫画を描いているつもりはなくて、一般漫画として私が描きたいものを描いている感覚です。そのテーマになっているのが、アイドルとオタクの関係性という感じなんですよね。アイドルに全然詳しく無い人でも、絵を見てもらえれば分かるように描いているつもりです。もし何かの機会や興味があれば、ぜひ読んで欲しいです。
(取材・文/丸本大輔)
(C)平尾アウリ/徳間書店
■アニメ放送情報■
2020年1月9日(木)深夜1:28〜TBS
2020年1月11日(土)深夜2:00〜BS-TBS
≪staff≫
【原作】平尾アウリ(徳間書店 リュウコミックス)
【監督】山本裕介
【シリーズ構成】赤尾でこ
【キャラクターデザイン】下谷智之、米澤優
【CGディレクター】生原雄次
【色彩設計】藤木由香里
【美術監督】益田健太
【美術設定】藤瀬智康
【撮影監督】浅村徹
【編集】内田恵
【音響監督】明田川仁
【音響効果】上野励
【音楽】日向萌
【アニメーション制作】エイトビット
【OPテーマ】ChamJam『Clover wish』
【EDテーマ】えりぴよ(CV:ファイルーズあい)
『※桃色片想い※』(※はハートマーク)
≪cast≫
【えりぴよ】ファイルーズあい
【市井舞菜】立花日菜
【五十嵐れお】本渡楓
【松山空音】長谷川育美
【伯方眞妃】榎吉麻弥
【水守ゆめ莉】石原夏織
【寺本優佳】和多田美咲
【横田 文】伊藤麻菜美
【くまさ】前野智昭
【基】山谷祥生
【玲奈】市ノ瀬加那