新年一発目の放送は、菊村栄(石坂浩二)の父親……の幽霊・梅宮辰夫が登場。
当然、生前に撮影済みだったものだろうが、元気な辰っちゃんの姿が見られて何だかおめでたい気持ちに。
「正月休みがあったからな、みんな忘れてると思って」
ということで、昨年末の総集編からスタートするという親切な展開だった。

しのぶの父親が福島の原発に再就職
総集編明けは『道』パートから。
北海道・悲別の炭鉱が廃坑することにともなうゴタゴタに娘を巻き込みたくないということで、祖父である根来公平(橋爪功)たちの元に預けられていたしのぶ(清野菜名)。
再就職先が決まった里子(菅野恵)たち夫婦がしのぶを迎えに来たことで、公平夫婦&翔(菅谷哲也)との共同生活が終わる。
それにしても、炭鉱がダメになった後の再就職先が、東亜電力の福島原子力発電所とは……。
しのぶの母・里子が生まれ育った小野ヶ沢は、かつて住民の多くが国策に踊らされ「満蒙開拓団」に参加するために満州に渡って捨てられた村。
炭鉱で働くことになった夫に付き添い、小野ヶ沢を出て北海道・悲別に行ったのに、炭鉱が廃坑。再就職先として原発で働くことになるとは、つくづく国策に翻弄される家系だ。
「原発いうんは危なくないのかい?」
「危なくなんかないですよ」
里子の夫・堺俊一(聡太郎)はこう言っていたけが、平成4年の段階でも、チェルノブイリ原発事故は既に起こっており「原発は安全」なんてのんきに言ってられなかったとは思うけど……。
小野ヶ沢を去るに当たってしのぶは、翔がずっと探し続けていた、昔ながらの蚕「小淵丸」のことを気にして、
「見つかったら必ず連絡してね、その時は私、何があっても必ず飛んでくるからね!」
と言っていたが、「必ず飛んでくるからね!」が、飛んで来れないフラグに思えてならない。
思えば、しのぶのモデルとなったアザミ(前作『やすらぎの郷』で菊村が入れ込んでいた脚本家志望の若い娘)は、東日本大震災をモロに被災しており、津波で祖母を亡くしている。
まだ『道』パート内の時間は平成4年なので、平成23年まで描かれるのかどうかは分からないが、しのぶたち一家の明るい未来が見えない。
しのに認知症の兆候が……?
もうひとつ気になるのが、しの(風吹ジュン)に認知症らしき症状が出はじめていること。
「おい、しの。生きとるんか?」と公平が心配するほど、ボーッとしている瞬間が何度かあった。
以前から、亡くなった三平の姿が見えたの見えないのとエキセントリック発言をする人ではあったが、さらに様子がおかしくなり、「三平さん、あそこ(屋根の上)に住んでますよ」なんて言い出した。
「最近、少し変なんですよ。ボケたんでしょうかねぇ?」
しのは、『道』のシナリオを書いている菊村が、自分の亡き妻・律子のイメージを重ねているキャラクター。律子も、晩年は重度の認知症にかかり、介護をする菊村を悩ませていた。
本作において「認知症」は、繰り返し描かれて来たテーマではあるが、『道』パートにも認知症問題をぶっ込んでくるのか?
菊村、『道』の原稿を丸ごとなくす
『道』パートに、悲しい未来を予感させるフラグが立ちまくっている中、久々の『やすらぎの刻』パートは相変わらずドタバタで安心させられた。
違法薬物の所持で逮捕された後、世間の目から隠れるように、祖母であるお嬢(浅丘ルリ子)の住む「やすらぎの郷」で働きはじめた竹芝柳介(関口まなと)。
逮捕によって柳介と縁を切ったはずの竹芝家だったが、柳介が「やすらぎの郷」にいることを知り、使いの者が郷にやって来ることになる。
そんなことをスタッフたちから相談された菊村は、ゴタゴタの中、これまで書き進めてきた『道』の原稿を丸ごと紛失してしまう。
その数、原稿用紙1500枚分!
1500枚もの原稿を持って(結構な量だ)ウロウロするなという気もするが……。
「オレは本当に持ちだしたのか? 表で読むなんて、そんなことあり得ない! あれは自分の思い違いじゃないのか? そんなこと、オレがするはずない。
菊村自身にも認知症疑惑が持ち上がる。
1年間の放送も残すところ3ヶ月となったが、相変わらずどんな結末に向かって進んでいるのか分からない本作。
「残り3ヶ月」予告編では、マヤ(加賀まりこ)の自殺未遂や、公平の息子・竜(駿河太郎)の指名手配など、衝撃的な展開が明かされていた。何がどうなって、そんなことになるのか……。最後までホントにやすらげそうにない。
(イラストと文/北村ヂン)
【配信サイト】
・Tver
『やすらぎの刻〜道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」「終り初物」「観音橋」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日