1月22日に『知らなくていいコト』(日本テレビ系)の第3話が放送された。それにしても、回を重ねるほど“尾高上げ”と“春樹下げ”に拍車が掛かっている。
今や、両者の好感度には天と地ほどの差がある。
吉高由里子「知らなくていいコト」3話「柄本佑」がバズるほど好感度爆上がりの尾高もこのままとは思えない
イラスト/まつもとりえこ

最低を更新し続ける春樹


真壁ケイト(吉高由里子)に話しかけられると目も合わせられず、腫れ物に触るかのような拒否反応を見せる野中春樹(重岡大毅)。気まずさと怯えが態度ににじみ出ている。なのに、パーティでケイトと尾高由一郎(柄本佑)が一緒にいると複雑な表情で2人を凝視したり……。ケイトの遺伝子は受け入れられないけど、ケイト本人には未練があるということ。自分が振って関係を潰したくせにだ。
調子が悪いコーヒーメーカーを前に「ミルクが出ない」とフリーズした春樹。
何のことはない、ストローがミルクに刺さっていないだけだった。何かトラブルがあっても、問題解決力がないためすぐにテンパってしまう。

職場では元カノに大人の対応ができず、言動と感情は矛盾している。さらに、根性無しゆえすぐに仕事を休んでしまうモチベーション。春樹はそんな、今どきの“普通の”若者だ。未熟な彼には支えが必要。
春樹は尾高にすがろうと、彼を屋上へ誘った。

春樹 「尾高さんって、何で真壁さんと別れたんですか? 教えてくれませんか」
尾高 「嫌だよ」
春樹 「彼女の父親が誰か、尾高さん知ってますか? 知ってるんでしょ?」
尾高 「知らないよ」

ケイトの秘密を守ろうとする尾高を前に、タガが外れたように春樹はまくし立てた。
「(僕が)結婚が無理だなって思った理由が、尾高さんと真壁さんが別れた理由と同じなんじゃないかなって思うんです」
「結婚したら子どもも欲しいって思う普通の人間なんですよ、僕。それで彼女とは無理だと思って別れました。尾高さんも、もし真壁さんと一緒になってたらそう簡単に子どもをつくれたかどうかわかんないですよね」
「やっぱり、尾高さんだって結婚は無理だったってことですよね?」

「秘密は守ります」と言っていたのに、秘密をペラペラと尾高に話している春樹。自分が“普通”でありたかったからだ。
尾高に「俺が別れた理由もそれなんだよ」と言葉をかけられ、共感してもらうことで自分を正当化したい。「お前はおかしくない。普通だよ」と肯定されたかった。普通でありたい割に、喋るほど最低を更新しているのは皮肉なのだが。

「柄本佑」が軽くバズる


別れの理由を正当化しようと春樹が言葉を発するたび、尾高は冷たい表情になっていく。ケイトと別れた理由も、ケイトの父親のことも口を閉ざし続けた彼は、「お前、最っ低だな」と一言で春樹を一蹴した。1人取り残され支えがなくなった春樹は、キョロキョロして露骨にオドオドする。
尾高はこういう後輩にケイトを取られたのだ。
未熟な春樹とは違い、大人が持つ懐の深さが尾高にはある。「知ってるんでしょ?」「知らないよ」のやり取りだけで、2人の器の違いは明らかだった。

喋れば喋るほど残念になる春樹と、何かするたびに株が上がり続ける尾高。彼はケイトとの馴れ初めからして完璧だった。密会カップルのキス写真を撮った後、「キスしたいです」と言い出すケイトに唇を重ねた場面。
キスの仕方も髪の撫で方も120点。SNSで「柄本佑」が軽くバズったほどの艶っぽさだ。
杏南(秋吉久美子)から「乃十阿徹を追い掛けるのはもうやめてほしい」と懇願され、ケイトのために報道カメラマンを辞めた優しさを思うと、「なぜ、春樹に乗り換えた!?」とケイトを問い詰めたくなってくる。

人の評価はどこを見るかで全く違う


今回、編集部は国民的ダンサー「タツミーヌ」こと河原巽(大貫勇輔)の炎上騒動を取り上げた。10年前、老人に向かって「老害」「姥捨山が必要」と暴言を吐いた場面が切り取られ、その動画が拡散されると河原は姿を消してしまった。しかし、「誤解されて可哀想」「いいかげんな青年ではない」と彼を擁護する年長者もいるのだ。
動画のどこを見るかで受け取り方は違うし、人格のどの部分に触れるかで人間の評価はまるで変わってくる。


編集部の面々に親しまれるケイトだが、角度を変えて見ると共感できない部分は多い。「動物カメラマンに転向した」という理由だけで尾高を振ったケイト。理由を見ると、ケイトを振った春樹のそれより遥かに軽い。春樹に振られたら優しくしてくれる尾高へなびきそうな彼女には、恋愛体質特有の調子の良さを感じる。

優しくて器が大きい尾高は、妻と子を持つ男だ。しかも、家庭はかなり円満。なのに、ケイトが仕事場に訪れた直後、ケイトとの思い出が詰まったコーヒーメーカーを引っ張り出してきた。

ケイト 「前はあったよね、コーヒーメーカー」
尾高 「今もあるよ」

コーヒーメーカーだけでなく、ケイトへの気持ちもまだあるという意味に聴こえた。パソコンで乃十阿徹(小林薫)の写真をチェックする尾高。彼は今でも乃十阿を追っている。妻子ある尾高はいつ元カノに傾いてもおかしくない、そんな予感がする。

今、SNSで「クズ」とさえ呼ばれている春樹。ただ、殺人犯の家族が社会で色眼鏡で見られる現実は、悲しいかな決して無くはない。春樹は、そんな“普通”の世間そのものという気がする。一概に彼を責められるだろうか?

どうしても尾高がこのままとは思えない


「最近は、世界のどこにいてもすぐに見つかっちゃうんですね」
SNS検索で失踪中の河原を発見した編集部。ケイトもSNSで検索をかけ、あっさり乃十阿の居場所を突き止めた。

ケイトがようやく実の父親と対面したそのとき、尾高は妻子と笑顔で戯れていた。2人の正反対な日常の対比。やっぱり、このドラマはケイトと尾高の物語だ。

どうしても、このままで行くとは思えないのだ。職を変えてまで守ろうとしたケイトにあっさりプロポーズを断られ、その1年後にサクッと他の女性と結婚した尾高。それでいて、あの優しさなのか。なんか、腑に落ちない。「知らなくていいコト」は、この先もまだまだ出てくると思っている。
(寺西ジャジューカ)

『知らなくていいコト』
脚本:大石静
主題歌:flumpool 「素晴らしき嘘」(A-Sketch)
音楽:平野義久
演出:狩山俊輔、塚本連平 ほか
プロデューサー:小田玲奈、久保田充、大塚英治(ケイファクトリー)
チーフプロデューサー:西憲彦
制作協力:ケイファクトリー
製作著作:日本テレビ
※各話、放送後にHuluにて配信中