1月23日に放送された『科捜研の女』(テレビ朝日系)の第27話。このドラマをこんなにニヤニヤしながら観たのは初めてだ。

永久保存版「科捜研の女」27話。マリコの口癖が移った土門とマリコが「レッツ・フォーリンラブ!」状態
イラスト/サイレントT(ワレワレハヒーローズ)
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<第27話あらすじ>マリコ、YouTuberデビュー!?


老舗フレンチ「シェ・オバタ」総料理長の池住政司(横堀悦夫)が厨房で殺害された。科捜研メンバーが調べたところ池住の前頭部には挫創があり、鈍器で殴られたものと見られる。傷口にはフランス産の薄力粉が付着していたが、店が使用する薄力粉とは違った。
シェ・オバタでは社長交代騒動が起きていた。創業者の息子で現社長の小畑常治(浅野和之)が退任し、池住が社長に就任する予定だったのだ。2代目社長の小畑に料理の才能はなく、ひたすら事業拡大を進める彼の経営方針に反発する従業員は多い。被害者の池住は料理長として小畑にクーデターを起こしていた。
従業員たちは小畑と池住が口論する場面を目撃しており、疑惑の目は小畑に注がれることに……。
クーデターにより社内で孤立無援となった小畑は、“PyuuTuber”に転身し、毎日、自作の料理動画を配信していた。犯行時刻にも動画撮影を行っていたと証言する小畑。撮影はカメラを止めず、ノーカットで配信されていたため、アリバイは完璧だった。
本当にアリバイが成立するかを検証するため、榊マリコ(沢口靖子)は小畑に成り切った。同じ料理を作り、その模様を録画する実証実験を試みたのだ。
小畑の動画とマリコの動画を観比べた日野和正(斉藤暁)は、カメラのレンズに付いたソースを拭いた後、マリコの動画だけ曇っていることを発見。小畑のレンズに油分は付いておらず、レンズを拭いた瞬間にカメラを止め、その隙に小畑がキッチンを離れた可能性が浮上した。
一方、土門薫(内藤剛志)はシェ・オバタにシチューのレシピを提供した「藤沢軒」を訪問する。シェ・オバタは藤澤軒のレシピを使ってレトルトシチューを商品化しており、そのせいで隠し味の豆味噌が入手できなくなった藤澤軒はすでに閉店していた。さらに店主は心労で他界していた。
池住殺害を認めた小畑だったが、池住の頭部に付着した薄力粉は振るいにかけられた状態のもの。
一方、料理下手の小畑は振るいを使わないことが動画で確認できた。池住殺害が藤澤軒店主の父・智明(坂西良太)によるものと思い込み、智明をかばうつもりで小畑は自供していたのだ。
真犯人は、池住からレトルト工場への異動を命じられた副料理長・八十嶋圭一(丹波貞仁)だった。小畑の犯行と思わせるため、八十嶋は振るいを使って薄力粉を池住の傷口に付着させていた。

“土門LOVE”が出ちゃってるマリコ


何より、今回はマリコと土門の再会だろう。

行き詰まるマリコの背後から、「捜査は行き止まりか」と聴き馴染みのある声が……。振り返ったマリコは、飛び切りの笑顔で「土門さん!」。
いや、そんな好きをだだ漏れさせないでも。「土門さんが好き!」と気持ちが滲み出ちゃっているし、「土門さん!」の語尾にハートマークを付けたくなってくる。
恋人の帰りを待ちわびた乙女そのものなマリコの超笑顔。待ち人を見つめる彼女の視線には、確実に愛が含まれていた。ここまでLOVEが出ているマリコは貴重なので、感慨もひとしおだ。ドラマは予想外にあっさり土門復帰を描いた気がするが、マリコの笑顔を見たら、もうこれでいいという気持ちになった。

「どうやら、俺は刑事を辞められないらしい」(土門)
いや、辞めないでいいッスよ!

「そんなことより、お前はこっちのほうが興味あるだろう」と、独自に掴んだ重大な証拠をマリコに手渡す土門。
ここ、重要なポイントである。「そんなことより」は、言わずと知れたマリコの口癖。つまり、土門に口癖が移っちゃっているのだ。捜査の進展を追い求めるマリコの性分を熟知するからこその、どもマリ間の伝染。2人の絆にキュンとくる。


ネットで事件の情報を調べ、重大な記事に行き着いた瞬間、マリコと土門は同時に声を上げた。
どもマリ 「やっぱり!」
仲良しなところを堂々と見せ付けて来るどもマリ。「やっぱり!」のセリフを「レッツ・フォーリンラブ!」に差し替えても違和感はなかった気がする。

元サヤに戻った2人を見て「キャーッ!」とテンションが上がり、あからさまにニヤついた科捜研メンバーたち(日野以外)。密かに、ここの人たちもみんな“どもマリ推し”だった。
「やっぱり、こうでなくちゃって思いません?」(亜美)

確かに、こんなにニヤニヤして観た『科捜研の女』は初めてだ。全視聴者の気持ちを代弁している。

マリコチャンネルが開設されたら毎日観る


小畑の動画を再現すべく、小畑役を務めたのはマリコだった。料理下手な小畑だからマリコが選ばれたのだろうか? それにしても、動画を丸々完コピとは……。マリコが料理するとのことでどんな事故が起こるか危惧していたが、今までと違い、マリコはそれなりにこなした。人知れず彼女は腕を上げていたのだろうか。

そんなことより、マリコがノリノリなのだ。土門が帰ってきてから、彼女は妙にハイテンションだ。「玉ねぎさん、ごめんなさい」「明日はおいしく作るぞー!」と、仕種もいちいち可愛らしいし。もしもマリコチャンネルが開設されたら登録者数はかなり行くはずだ。
というか、このくだりそのものがマリコファンに対するただのサービスな気がしてきた。よく考えると、こんなのは科捜研がする仕事じゃない。

そういう意味で、27話は永久保存版だろう。中の人の可愛さが全開! 彼女のエプロン姿は土門にも見てもらいたかった。

「カメラを止めるな! 科捜研の女編」


事件のトリックはわかりやすかった。はっきり言って初見でわかった。レンズを拭く場面を編集点にするというからくり。言うなれば、「カメラを止めるな! 科捜研の女編」である。それより、レンズにソースを命中させたマリコのコントロールの良さに驚いた。

とは言え、小畑は犯人ではない。彼がPyuuTuberになり、苦手なのに料理チャンネルを開設したのは、智明の孫・開(大竹悠義)に料理を続けてほしかったから。だから、上手い下手より、楽しく料理する姿を見せることのほうが大事なのだ。それを知っていれば、小畑の締めのセリフ「明日はおいしく作るぞ!」がスッと腑に落ちる。

ただ、真犯人が判明する流れには失笑した。料理下手であろうがなかろうが、緊迫する殺害現場でわざわざ振るいを使って薄力粉をかけるほうがどうかしている。小畑の料理下手が功を奏したという着地の仕方は、いくらなんでも強引過ぎた。

ただ、事件解決の鍵としてYouTuberに着目した辺りは新境地だった。防犯カメラやドライブレコーダーだけでなく、YouTuberの動画素材を証拠として重宝する今作。科捜研らしい現代の取り込み方だと思う。

振り返ると、濃い回だった。土門の現場復帰、マリコのPyuuTuberデビュー、マリコの料理挑戦などなど。これらが1話に詰まっていたのだ。

次回も凄そうだ。何しろ、ゲストがなかやまきんに君なのだ。そして、マリコが筋トレに挑戦するらしい。土門が復帰したことで通常運転に戻り、今夜はいよいよ待望のギャグ回である。
(寺西ジャジューカ イラスト/サイレントT@ワレワレハヒーローズ

木曜ミステリー『科捜研の女』
ゼネラルプロデューサー:関拓也(テレビ朝日)
プロデューサー:藤崎絵三(テレビ朝日)、中尾亜由子(東映)、谷中寿成(東映)
監督:森本浩史、田崎竜太 ほか
脚本:戸田山雅司、櫻井武晴 ほか
制作:テレビ朝日、東映
主題歌:今井美樹「Hikari」(ユニバーサル ミュージック/Virgin Music)
※各話、放送後にテレ朝動画にて配信中