
文吾に殺人容疑! それでも和子は夫を信じる
先週3月15日放送の第9話の冒頭では、文吾のあとを追ってキャンプ場に来た心が、父の乗ってきたパトカーの車内にみきおが寝かされているのを発見。それからすぐ、誰が通報したのか本署の刑事たちも現れた。しかし文吾の姿はなく、警察無線にも出ない。ここから文吾にみきおへの殺人未遂の容疑がかかり、宮城県警監察官室の馬淵(小籔千豊)たちが文吾宅に踏み込んで家中を引っ掻き回す。物証は出てこなかったものの、翌日にはマスコミも押しかけ、文吾をすでに犯人であるかのように報じた。そんな騒ぎに、佐野家の子供たち……鈴(白鳥玉季)と慎吾(番家天嵩)も父を疑い出す。
そのころ、当の文吾は目隠しをされて山小屋に監禁されていた。みきおを操っていた黒幕と思しき人物は、小屋にあるテレビをつけると、文吾の家にマスコミが集まり、彼が犯人扱いされている様子を本人に聞かせる。だが、テレビカメラの前に立った文吾の妻・和子(榮倉奈々)は、夫は自分が正しくないと思うことは絶対にしないと断言、私たち家族は彼のことを信じていると訴えた。
ここへ来て明かされる12年前の村での食中毒事件
文吾の不在のあいだ、駐在所の机にノートが置かれているのを心が発見する。それは心の亡き妻・由紀が事件についてまとめたもので、彼が現代からタイムスリップしてきたときに持っていたが、その後、犯人の手に渡ってしまっていた。それがどうして戻ってきたのか。心が不審に思いながらノートをめくると、古ぼけた紙が挟まれているのを見つける。それはさらにさかのぼること12年前、1977年に開催された村祭りのチラシだった。そこには音臼小の校長・石坂(笹野高史)の名が記されており、心はさっそく学校を訪ねる。
石坂に話を訊くと、村祭りはその年限りで中止になったという。祭りで振る舞われたキノコ汁に毒キノコが入っており、それを食べた女性が亡くなったからだ。女性は、村で農業を営む徳本(今野浩喜)の母親だった。石坂はその事実を打ち明ける前、心に対して「あなたは一体何者なのか」と疑い、さらには心が文吾にそっくりだとまで指摘して、彼をうろたえさせる。だが、石坂は、心が文吾と同じく人をだましたり利用したりする人間ではないと、「必ず佐野さんを救ってやってください」と言って、くだんの食中毒事件について教えてくれたのだ。
このあと心は、無事に解放されて山を下りてきた文吾を発見、一緒に帰宅する。そこへ徳本と村の商店の主人・井澤(六平直政)がやって来た。犯人扱いされた文吾と家族を励ますため、猪鍋を用意してくれたのだ。石坂といい、徳本と井澤といい、村の人たちは何だかんだ言って文吾が犯人ではないと信じてくれていることがわかった。ただし、意識不明となったみきおを病院で看病する担任のさつき(麻生祐未)を除いてだが……。そのみきおは青酸カリ中毒と診断されていた。
裏庭から青酸カリ! ついに文吾が逮捕される
翌日、文吾は本署に出頭すると、一晩留置されてしまう。朝になって和子が迎えに出かけているあいだに、心は家のなかを物色する。のちに文吾を犯人とする物証になった青酸カリがどこかに隠されていないか、探すためだ。一通り探して、見つからなかったので安心したのも束の間、文吾と和子が帰るより先に、馬淵ら刑事が駐在所にやって来て、心にワープロを見せろと言う。
彼らは文吾のワープロを見つけると、保存されていた駐在所日誌を開く。そこには事件をほのめかす文章がつづられていた。それはみきおが書いたもののはずだが、なぜ文吾のワープロに保存されていたのか。
みきおの背後でちらつく黒幕の存在。文吾が犯人に仕立て上げられたのも、すべては黒幕の罠であった。一体、その正体は誰なのか。視聴者がさまざまな考察で盛り上がるなか、いよいよ今夜、すべてがあきらかにされようとしている。
今夜最終回、佐野家の「テセウスの船」は完成するのか
最終回を前に、緊張感はマックスに達した。心が学校を訪ねた際、石坂校長とさつき先生の目が怪しく光るカットが出てきたかと思えば、文吾が再びスタンガンで眠らされたあとには、徳本と井澤が山でなぜか大きな穴を掘ろうとする様子が映し出された。その後、穴は猪鍋を用意するためのものとわかったとはいえ、ここへ来ていきなり徳本の過去(村祭りで起こった食中毒事件で母親を失った)があきらかにされ、まだ疑念はぬぐえない。小学校のお楽しみ会ではあれほど文吾と衝突していた井澤が、ここへ来て“いい人感”を出してきたのもかえって怪しい。さらに、馬淵の指示で警察が山で事件に関する品々を押収する様子を、父親をみきおに殺された田中(せいや)が深刻な顔でこっそり眺めていたのも気になる!
原作コミックでは、真犯人がみきおとわかったあと、彼以外に事件に関与する者は事実上出てこないのだが、ドラマではそれをみきおとは別に黒幕がいたと匂わせる点で大きく異なる。
それにしても、第9話で初めて登場したキャリア警官・馬淵のまあ憎らしいこと。演じる小籔千豊は、日曜劇場では「陸王」以来3年ぶりの登場だが、あのときも役所広司演じる足袋屋に立ちふさがるシューズメーカーの社員を憎々しげに演じていた。前作に続き、主人公をねちっこくいじめるヒール役が本当にハマっている。最終回ではぜひ、文吾の無罪が晴らされたあと、うろたえまくる馬淵の姿を見たいところだ。
最終回でもっとも気になるのは、佐野家の人たちのゆくえだ。心がタイムスリップする以前の世界では、文吾の逮捕後、一家は世間の非難を浴び、和子が子供たちと心中するという悲惨な道をたどった。心はそれを防ぐことができるのか。思えば、本作のタイトル「テセウスの船」は、朽ち果てた船を新たな材料でつくり直すというギリシャ神話に由来する。それと同様に心の家族も、たとえ構成する要素が違っても、最後は無事に修復されるものと信じたい。
最後に第9話で一つだけ気になったことをあげておきたい。それは、文吾のワープロに「駐在日誌」が保存されていたことだ。
