「エール」10話 第2週、最後にやっと窪田正孝登場。3週が待ちきれない。でも子役がもう出ないのは残念
イラスト/おうか

第2週「運命のかぐや姫」9回〈4月10日 (金) 放送 演出・吉田照幸 松園武大〉


契約書は大事

4月7日に緊急事態宣言が発令されてから本放送はL字(逆L字)で最新情報を流し続けて3日目。
関内家も緊急事態。優しく頼もしいお父さん(光石研)が事故で急死。
「女子供」でどうやって生きていくか、困っているところである。

でも音(清水香帆)はめそめそしない。がぜん、熱くなる。
「逃げた職人たち見返してやる」
「怒りって必要よ」
「絶対この危機乗り越える」
と、長女・吟(本間叶愛)にがんばりを振るというちゃっかりさを見せる。

「エール」10話 第2週、最後にやっと窪田正孝登場。3週が待ちきれない。でも子役がもう出ないのは残念
写真提供/NHK

ここで、三人姉妹のそれぞれの将来の展望がわかる。
吟はお嫁さん、音は歌手、梅(新津ちせ)は作家。それぞれが夢を持っていた。
三人姉妹がコミカルな劇伴を背景に、それぞれの属性をちらつかせながら、状況を面白おかしく語るという、民放プライムタイムのテレビドラマにありそうな会話場面は「とと姉ちゃん」を彷彿とさせる。この手の女子3人のかしまし会話は「おひさま」での岡田惠和脚本の得意技なのであるが。

三人姉妹が各々ドライで自分の幸福を第一に考えていて、長女が嫁に行きたいから家を守れないとあっさりしているところは「とと姉ちゃん」とは違っていた。
「明確な将来設計は描けてない」と吟に言う梅だったが、吟は嫁に行く確率のほうが作家や歌手より高いと切り返す。吟は現実的なキャラである。


なんだかんだで、音は正式な契約内容を確認することを思いつき、文章を読むことが得意な梅が中心になって契約書を発掘。突然契約打ち切りはできないことを発見する。契約書には1年以内の契約破棄には違約金が発生とあった。
一年ごとに契約を結んでいて、ちょうど契約更新したばかりだったのに、打越がそれを無視して光子を脅したってことだろうか。光子(薬師丸ひろ子)は打越金助(平田満)に毅然と反論できた。

大事なのはあらかじめしっかり契約しておくこと。契約から1年以内の契約破棄にはそれ相当の違約金くらいの契約をしておくこと。それを大切に保管しておくこと。という教訓を得る話だった。
お父さんはそういうところもしっかりしていたのだなあ。立派な人を亡くしました……。

音がかぐや姫に

契約をしっかり締結していたことによって遺族を守ったどこまでもできたお父さんの写真にお参りしながら、お父さんがなぜ、残された家族のことより子どもを助けることを優先して死んでしまったかについて語り合う音と光子。
朝ドラ名物 “後がたり”(あとで、その人の重要エピソードを語る)によって、ロシアに戦争に行ったとき、目の前の生命を助けられなかったことを後悔していたと話す光子。


それを聞いた音は、自分たちより見知らぬ子どもが大切だったのかというやりきれない気持ちから脱却することができた。そして「やらずに後悔するより、やって後悔したほうがいい」という父の信条の意味を理解する。
見上げれば空は満月。
きっとこの言葉が音の今後に大きく影響してくるのだろう。

「エール」10話 第2週、最後にやっと窪田正孝登場。3週が待ちきれない。でも子役がもう出ないのは残念

学校では、いつも6年3組のなかでひとり洋装のお嬢様っぽい神埼良子(田中里念)が、音の強さに心打たれ、頑なな態度を軟化する。
そして、やりたくなかったかぐや姫役を音に譲り、自身はかぐや姫を嫁に所望する帝に代わる。

音はかぐや姫として大活躍。帝との別れの場面では「朧月夜」を歌う。父との思い出を浮かべ泣きながら、最後まで歌いきる。引き受けたのだから最後までちゃんとやるのは双浦環(柴咲コウ)の教えである。

このお芝居のエピソード。週6回だったら土曜日にやったのかなあと思う。
週5になって、お父さんが亡くなって、演劇やってという流れがやや駆け足になった気がする。

「竹取物語」の衣裳のクオリティーの高さは9話のレビューで博多華丸大吉の大吉の発言として記したが、衣裳のみならず、美術も照明もクオリティーが高い。竹を切るとかぐや姫が入っているという仕掛けがシンプルながら効果的に作られている。しかも、ぱっと音に照明が当たり、光って見える。いったい誰がこんなによくできたスタッフワークをしてるんだ。この学校の先生たちはすごい。熊谷先生(宇野祥平)が「なつぞら」の柄本佑が演じていた先生みたいな演劇好きなのだろうか。

それから3年、窪田正孝が

公演が無事終わって、母と三人姉妹は再び、思い出多き海岸へ。
波の音とキラキラした逆光のなかで「お父さ〜ん」と呼ぶ「女子供」たちの健気さ。
この海岸は、オープニングで窪田正孝と二階堂ふみが戯れている場所と同じなのだろうか。

結局、岩城(吉原光夫)も戻って来た。
お父さんはなくなったが、なんとか関内家はやっていけそうである。

と、そこから3年経過とナレーション(津田健次郎)。

場面は再び、福島へーー。
本来の主人公・裕一が窪田正孝になって登場した。
ってことは、音と吟と梅の子役ちゃんも、裕一、鉄男、久志の子役ちゃんとももうお別れ? ちょっとさみしいかも……。

「それから3年、裕一はというと……音楽に夢中で商業学校4年生を留年してしまいました」と言われても、火曜日から4回、すっかり音が主役の朝ドラのように気持ちがなりかかっていた視聴者もいるのではないだろうか。「裕一」って誰だっけ? と思った人もいるのでは。一方、窪田正孝を待望している視聴者にとっては1週間(2週間?)待った! と身を乗り出したに違いない。

当朝ドラレビューも、週末、おうかさんの「今週の窪田正孝」を用意しているので、もしこのまま2週に登場しなかったら、いきなり企画倒れに終わるところでホッとした。編集田上女史も安堵。日曜もお楽しみに!
(文/木俣冬、タイトルイラスト/おうか)

(これまでの木俣冬の朝ドラレビューはこちらから)

「エール」10話 第2週、最後にやっと窪田正孝登場。3週が待ちきれない。でも子役がもう出ないのは残念
写真提供/NHK

番組情報

連続テレビ小説「エール」 
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~、再放送 午後11時~
◯土曜は一週間の振り返り

原案:林宏司
脚本:清水友佳子 嶋田うれ葉 吉田照幸
演出:吉田照幸ほか
音楽:瀬川英二
キャスト: 窪田正孝 二階堂ふみ 唐沢寿明 菊池桃子 ほか
語り: 津田健次郎
主題歌:GReeeeN「星影のエール」
制作統括:土屋勝裕 尾崎裕和
編集部おすすめ