第9週「東京恋物語」41回〈5月25日 (月) 放送 作・清水友佳子 演出・野口雄大〉


「エール」41話 柴咲コウ演じる双浦環のモデルは裕一のモデル・古関裕而と関わりが
イラスト/おうか

41回はこんな話

早稲田大学応援歌「紺碧の空」の作曲をきっかけにがぜんやる気になった裕一(窪田正孝)は、福島から幼馴染の鉄男(中村蒼)を呼び上京して詞を書かないかと誘う。作曲は裕一、歌は久志(山崎育三郎)が担当するという案である。
一方、「椿姫」のオーディションに励む音(二階堂ふみ)は双浦環(柴咲コウ)と再会。
双浦はオーディションの特別審査員だった。

鉄男と久志の幼少期をおさらい

裕一の元に福島時代の幼馴染が集まった。鉄男は、かつてガキ大将として一目置かれる存在で「乃木大将」と異名をもつほどだった。裕一を「ずぐだれ」(弱虫的な意味)と呼んで厳しく当たっていたが、いじめっ子ではなく、生き方に厳しいだけだった。裕一いわく「筋を通す男」。貧しい家に生まれ苦労しながらも逆境に負けず歯を食いしばって生きていた。本が好きで詩を書いていて、裕一はその詩に曲をつけたこともある(「浮世小路行進曲」)。

大人になって川俣で裕一と再会。新聞記者になっていた。裕一が国際作曲コンクールに応募したのは鉄男のすすめ。東京に行く後押しもした。

久志は転校生として福島の小学校にやって来た。鉄男も思い出していたように、県会議員の息子。
存在感はあるのに、気配を消すのがうまく、いつの間にか現れてはすぐいなくなる特技があった。

子供のとき、3人が特別仲良しだったわけではないが、裕一の曲、鉄男の歌詞、久志の歌……とそろってひとつのことができるようになったら素晴らしいだろう。

だが鉄男は、一年前、あんなに東京に一緒に行こう、おれも詩を書くと言っていたのに、新聞記者の仕事を辞められないし、安定して家庭を養えるようにならないとと、上京に乗り気ではなかった。

喫茶バンブーの保と恵(野間口徹、仲里依紗)も、裕一と音には秒速の勢いで家を斡旋したが、鉄男に対しては東京で仕事は? 住むところはどうするの? と常識的な心配をする。裕一と音の場合、仕事が見つかっていたからとはいえ、トントン拍子過ぎた。

「エール」41話 柴咲コウ演じる双浦環のモデルは裕一のモデル・古関裕而と関わりが
写真提供/NHK

双浦環とは?

東京帝国音楽学校の特別講師としてやって来た双浦環は、有名なオペラ歌手。音が幼い頃、豊橋の教会で歌を歌い、音にレコードをくれた。音は彼女の歌を聴いて歌手を目指した。

双浦のモデルは日本初の国際的に名の知れたオペラ歌手・三浦環。プッチーニの「蝶々夫人」が代表作。裕一のモデル・古関裕而や小山田(志村けん)のモデル・山田耕筰とも関わりがある。三浦は古関裕而の曲「船頭可愛や」をぜひ歌いたいと申し出る。オペラ歌手の三浦が歌うということで、古関は西洋音楽のレーベルからレコードを出すことができた。
はたして「エール」では……。

「エール」ではいまのところ音との関わりのみ。裕一は音楽雑誌で彼女のことを知って「きれいな人」とぽーっとなったことがあるだけ(音にはそれを隠している)。

そして「椿姫」ヒロインの第二次審査。環の前で、夏目千鶴子(小南満佑子)から音まで何人もの生徒が歌う。ミュージカル俳優の小南満佑子をはじめとしてみんなうまい。二階堂ふみの明るい高音も素敵だった。

結果、千鶴子と音が最終選考に残る。
だが、環は音の歌が審査の基準を満たしていたが、最終選考に残るのは難しいと突き放す。

地方小唄とは

「紺碧の空」の評判が良く、廿日市(古田新太)は若干嫌味も交えて、裕一に作曲の仕事を発注。この頃、流行していた地方小唄の一曲をやってみないかと言う。この頃、地方から東京に働きに出てくる人たちが増加したため、各地方を題材にした歌がヒットしていた。それを地方小唄(ご当地ソング)という。


裕一のモデル古関裕而は、コロンビアレコードと契約して初めて出したレコードが地方小唄「福島行進曲」と「福島夜曲」だった。昭和6年、「紺碧の空」を作ったのと同じ年であるが、この曲は売れず、以後、古関裕而は一向に売れる曲ができず減俸になる。

「エール」ではすでに、曲ができないまま契約から1年過ぎたが、音の活躍によって2年目も契約金は変わらないままで済んでいる。はたして今後、どうなるだろうか。

今日の窪田正孝

木枯(野田洋次郎)に「紺碧の空」ができたお祝いに、カフェーに誘われた裕一。女性がたくさんいる店は音を怒らせたこともあって躊躇し「いやいやいや」と拒否するも、強引に連れていかれた末、女給の希穂子(入山法子)に「初めまして〜。ふふふふ」とめちゃめちゃデレデレ。夜遅く帰り、家の前で女性の残り香などないか気にする仕草など、窪田はサラリーマンコントみたいなノリを見事に演じていた。

希穂子役の入山法子は「ゲゲゲの女房」の終盤(24週)にゲスト出演して以来の朝ドラ出演となる。
(木俣冬)

●参考文献
「古関裕而―流行作曲家と激動の昭和」(刑部芳則著/中公新書)
「古関裕而の昭和史 国民を背負った作曲家」(辻田真佐憲著/文春新書)

登場人物

古山裕一…幼少期 石田星空/成長後 窪田正孝 主人公。天才的な才能のある作曲家。モデルは古関裕而。
関内音→古山音 …幼少期 清水香帆/成長後 二階堂ふみ 裕一の妻。モデルは小山金子。


小山田耕三…志村けん 日本作曲界の重鎮。モデルは山田耕筰。

廿日市誉…古田新太 コロンブスレコードの音楽ディレクター。
杉山あかね…加弥乃 廿日市の秘書。
木枯正人…野田洋次郎 「影を慕ひて」などのヒット作をもつ人気作曲家。モデルは古賀政男。

山藤太郎…柿澤勇人 人気歌手。モデルは藤山一郎。
小田和夫…桜木健一 ベテラン録音技師。

梶取保…野間口徹 喫茶店バンブーのマスター。
梶取恵…仲里依紗 保の妻。

佐藤久志 …山崎育三郎 東京帝国音楽大学の3年生。
あだ名はプリンス。モデルは伊藤久男。
村野鉄男 …中村蒼 裕一の幼馴染。川俣で新聞記者をやっている。詩を書くことが好き。モデルは野村俊夫。

夏目千鶴子 …小南満佑子 東京帝国音楽学校の生徒 優秀で「椿姫」のヒロインに最も近いと目されている。

筒井潔子 …清水葉月 東京帝国音楽大学で音と同級生。パートはソプラノ 
今村和子 …金澤美穂 東京帝国音楽大学で音と同級生。パートはアルト

先生 …高田聖子 東京帝国音楽大学の教師。
双浦環 …柴咲コウ 著名なオペラ歌手。

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番組情報

連続テレビ小説「エール」 
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~、再放送 午後11時~
◯土曜は一週間の振り返り

原案:林宏司
脚本:清水友佳子 嶋田うれ葉 吉田照幸
演出:吉田照幸ほか
音楽:瀬川英二
キャスト: 窪田正孝 二階堂ふみ 唐沢寿明 菊池桃子 ほか
語り: 津田健次郎
主題歌:GReeeeN「星影のエール」
制作統括:土屋勝裕 尾崎裕和
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