竹内結子が死体の腹をかき回す「ミス・シャーロック」特別編 1話レビュー
ミス・シャーロック/Miss Sherlock/ポニーキャニオン
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新型コロナ感染拡大の影響で、各テレビ局では過去の番組の再放送や再編集版、傑作選などが多く放送されている。

6月5日の「金曜ロードSHOW!」では、2018年4月27日から6月15日まで、毎週金曜日にHuluで配信されたドラマ「ミス・シャーロック/Miss Sherlock」を放送。
主演“シャーロック”に竹内結子、バディ役“和都さん”に貫地谷しほりを迎えて製作された今作は、“史上最も美しいシャーロック・ホームズ誕生”としてオンエアされた。

エキレビ!で配信時に掲載した、大山くまお氏によるレビューを再掲する(日付などは当時のまま掲載)。

女性版シャーロックの竹内結子が死体の腹をかき回す


4月27日からHuluで独占配信がスタートした連続ドラマ『ミス・シャーロック/Miss Sherlock』。竹内結子が女性版シャーロック・ホームズに扮するミステリーだ。

Huluオリジナルドラマとしては尾野真千子主演の『フジコ』、小栗旬主演の『代償』などがあったが、今回は世界有数のケーブルテレビ局HBOアジアと共同製作となり、世界19カ国で同日放送される(ドラマ制作を行うのは『三丁目の夕日』シリーズなどのROBOT)。日本では毎週金曜日の午前10時から配信がスタートする。全8話。


なお、いつでも観られる配信ドラマということで、ネタバレなしのレビューをお送りする。

UDIラボとは真逆の死体の取扱い


Episode1「最初の事件」は、地上波のドラマではできない自由度の高い表現に挑戦してやろうというスタッフの気迫が感じられた。まず、ドラマ開始からたった2分で被害者の腹の中で小型爆弾が爆発! ポッカリ空いた血まみれの腹が丸見え! 

そしてカッコいいオープニングタイトルの後、竹内結子扮する主人公の捜査コンサルタント・シャーロック(劇中でこう呼ばれている)が登場するのだが、いきなり霊安室で遺体の腹の中をぐちゅぐちゅかきまわしてる! 腸とか取り出してるし! 遺族が見てるし! 

刑事の礼紋(滝藤賢一)にとがめられても、目を見開いて腹の中をまさぐりつつ「検死に決まってるでしょ?」と言い返し、バッチリ証拠をゲットするミス・シャーロック。『アンナチュラル』のUDIの面々が持っていた遺体への敬意や倫理観など1ミリも持ち合わせていないヤバいヤツだ。

洞察力が異様に優れている犯罪心理学の専門家で、難事件をいくつも解決に導いているシャーロックのことを、演じている竹内自身は「明るい人でなし」と表現している。シャーロックは人権意識もコンプライアンスもまるごと無視して好奇心のまま事件に挑む。

死体などの表現と主人公の性格、二重の意味で地上波のコードを踏み越えている。
それを開始わずか5分で見せてしまうのだからすごい。

しっかりお金をかけたキャスティングと映像


『ミス・シャーロック』はキャスティングや予算などにあまりお金がかかっていないという配信オリジナルドラマのこれまでのイメージも覆してくれる。

まずはキャスティング。シャーロックの相棒となる医師くずれの常識人・橘和都役に貫地谷しほり、シャーロックを利用する警視庁捜査一課の刑事・礼紋元太郎役に滝藤賢一、礼紋の部下の刑事・柴田達也役に中村倫也、シャーロックの兄で内閣情報調査室の分析官・双葉健人役に小澤征悦、シャーロックの下宿先の未亡人・波多野君枝役に伊藤蘭がキャスティングされている。これだけでも地上波ドラマに見劣りしない。

ほかにも大谷亮平、斉藤由貴の登場が予定されている。斉藤は地上波の『警視庁・捜査一課長』を降板してこちらに登場する形になる。
ゲストも豪華で、第1話は水川あさみ、第3話に紺野まひると木南晴夏、第4話に安達祐実の出演が決定している。

ブルーを基調とした映画のような映像も地上波ドラマ慣れした目には新鮮だ。シャーロックが下宿する「221B」(もちろん、シャーロック・ホームズの住所、ベーカー街221Bにちなんだもの)のセットも美しい。

竹内結子が死体の腹をかき回す「ミス・シャーロック」特別編 1話レビュー
イラスト/まつもとりえこ

第1話は「悪魔の足」


いつも薄っぺらいことばかり言ってる常識人の和都(通称・和都さん)は当然、ホームズの友人・ワトスンだし、下宿先の波多野さんはハドスン夫人。礼紋刑事はレストレード警部なのだろうが、何よりレストレードの「痩せたイタチのような感じの男」というルックスは滝藤賢一にぴったり(失礼)。

脚本は丸茂周(『科捜研の女』『ホワイト・ラボ~警視庁特別科学捜査班~』)、政池洋佑(『マッサージ探偵ジョー』)、森淳一(本作の監督を兼任)、及川真実(『ST 赤と白の捜査ファイル』)、小谷暢亮(『闇の法執行人』)の6人体制(Episode1は丸茂、政池、森の3人)。


脚本をつくる際は、シャーロック・ホームズシリーズの原作者、コナン・ドイルに敬意を払い、原作ファンにも楽しめるように原作からエピソードを選び、現代風にアレンジしているのだという。

Episode1の元になっているのは後期の作品である「悪魔の足」。特殊な毒物がトリックに使用されるエピソードだが、それが小型爆弾に置き換えられている。小型爆弾のことをシャーロックが「デビルズ・フット」と呼んでいるのはこのためだ。

エクストリームなシャーロックのキャラクターと映像表現、現代の東京を舞台にしながらも本家シャーロック・ホームズを意識したストーリー展開など、見どころは多い。海外では大ヒット作が多い配信オリジナルドラマだが、日本ではまだ普及しきったとは言えない状況にある。
試金石とも言える『ミス・シャーロック』がどれだけ旋風を巻き起こすかに注目だ。
(大山くまお)



■Hulu「ミス・シャーロック/Miss Sherlock」配信中