又吉直樹の恋愛小説を行定勲監督が映画化

山崎賢人・松岡茉優が描く「生涯忘れることができない恋」――コロナ禍に公開された映画『劇場』の運命とは
(C)2020「劇場」製作委員会

『火花』で芥川賞を獲った又吉直樹が、それより前から書いていた恋愛小説『劇場』が『GO』『世界の中心で、愛をさけぶ』『ナラタージュ』など恋愛小説の映像化に定評のある行定勲監督によって映画化された。若き劇作家を演じるのは山崎賢人(「崎」は「たつさき」が正式表記)、彼を支える恋人に松岡茉優が扮している。

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主人公の永田(山崎)は、高校の同級生と劇団「おろか」を立ち上げ、劇作家兼演出家として公演を打っていくが、なかなか芽が出ない。悩んでいたある日、街中で沙希(松岡)を見かけ後を追う。

最初は沙希に訝しく思われた永田だったが、お茶するうちになんとなく意気投合。やがて永田は沙希の部屋に一緒に住むようになる。

山崎賢人・松岡茉優が描く「生涯忘れることができない恋」――コロナ禍に公開された映画『劇場』の運命とは
(C)2020「劇場」製作委員会

彼女はどんなときでも永田の話をよく聞き彼の才能に期待を寄せてくれる。次第に劇団も動員が増えてくる。自分の創作のことに夢中な永田は沙希を思いやる余裕がなく、次第に沙希の精神が不安定になっていく……。

舞台は演劇の街・下北沢。小劇場B1や劇小劇場など本物の劇場がロケ地になっている。『劇場』の劇場はお笑いの劇場ではなく演劇の劇場である。カメオ出演で著名な演劇関係者が何人か登場する。

お笑い畑の又吉がなぜ演劇に青春を賭ける若者を描いたのか不思議だが(もちろん、同じ、板の上の厳しさがあり、お笑い芸人は演技も巧い人が多い)、『火花』とはまた違った芸の世界に身を置く者たちの心情も確かな感触を残す。

山崎賢人・松岡茉優が描く「生涯忘れることができない恋」――コロナ禍に公開された映画『劇場』の運命とは
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自己愛の強い永田に沙希は抑圧され、次第に心が壊れていく

(ここからネタバレあります)
『火花』も『劇場』も又吉直樹の書くものにいつもあるのは創作に携わる者が持つ残酷さ。『火花』では主人公には漫才コンビの相方や先輩がいて、『劇場』には支えてくれる恋人がいる。それでも何かを作ろうと格闘する者は圧倒的に孤独である。沙希は、永田のその葛藤の犠牲になっていく。

永田が最初、沙希に惹かれたのが、同じ絵に気を留めたこと、履いていたスニーカーが同じであったことだった。そして、歩くペースが同じだったこと。要するに永田は自己愛が強くて恋人にも自分を投影している。

沙希は基本、永田を立てて、自己主張をしないのだが、ごくまれに彼女が自主的になにかをしようとすると永田はたちまち機嫌が悪くなってしまう。こうして沙希は抑圧され、次第に心が壊れていく。

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