「私の家政夫ナギサさん」3話 メイ(多部未華子)にモテキ到来? でも無意識に呼んだのは「おじさん」
イラスト/ゆいざえもん

いろいろ物事が進展した「私の家政夫ナギサさん」3話

「なんかもう人間ってしんどい」
メイ(多部未華子)のこのセリフ、わかりみしかない。

「私の家政夫ナギサさん」(TBS系 毎週火曜よる10時〜)第3回は、メイ(多部未華子)の家に美登里(草刈民代)がふいに尋ねてくることになり、急遽ナギサさん(大森南朋)を雇ったら、けっきょく美登里と鉢合わせ。散らかった部屋も見られてしまい、メイが家事全般できないことがバレる。


母は、メイのこともユイ(趣里)のこともまったく把握していない。ユイは第2回で母と喧嘩して家を出て長らく会ってないことが明かされている。

「メイには一片の悔いのない人生を送ってもらいたいの」と「北斗の拳」のマネをして拳をあげる美登里。生生しくは描いてないが、お母さん、薄めの毒母。自分の理想を娘に押し付け、娘たちのことをちゃんと見ていない。

それに比べてナギサさんは「そんなに一人でがんばらなくていいと思います」とメイが無理してがんばっているのを見抜き、睡眠、栄養を心配し、理想的な母のようである。


だがしかしメイは「決めた! 今日から私は生まれ変わる!」と、仕事も結婚もなんでもやろうとがんばりはじめる。「だって私はできる女なんだから」と。母の呪いは強く簡単には解けない。がんばりすぎて睡眠時間が確保できなくなってきて、ここで「なんかもう人間ってしんどい」と弱音が出てしまう。

繊細な感情をふっと出せる大森南朋適任

メイと真逆なの存在が会社の同僚・薫(高橋メアリージェーン)。彼女の家はものすごくきれいで、料理も美味しい。結婚を目指して、様々手を尽くしているが、それがまったく苦労なく自然にできているふう。
その分、薫は仕事熱心ではないのではないんだろうか。謎。

一番の謎は、メイと薫の勤務している会社はどれだけ高給なのか。なんでこんなに広くて素敵な部屋に住んでいるのか。メイの部屋も広いし、薫の部屋なんてお店みたいなリノリウム床にカーペット敷いていて、部屋のなかに自転車置いちゃえていて、しかもメゾネットになっているみたい。

薫はライバル会社の田所(瀬戸康史)を狙っていて、メイは彼が隣に住んでいることをますます隠さなくてはならなくなる。
母といい薫といい、メイにとって軽くプレッシャーをかけてくるが、ドロドロした感じにはなりそうになく、そこがこのドラマの気楽に見られる要素であろう。「恋つづ」「逃げ恥」の再放送によって、もはや人間関係の煩わしさが全面に描かれたものは、火曜の夜に見る気がしないカラダになってしまった気がする。

あるとき、メイは田所に誘われて仕事の意見交換と称して食事を食べにいく。こんなところを薫が知ったらどう思うんだろう。でもきっと取り返しのつかないバトルにはならないだろう。

田所はあくまで意見交換と言いながら、ルールで担当とふたりきりにならないことになっているが「向き合いたい人にはいつも真剣なだけですよ」と真摯なことを言う。
最近は気軽に一対一で飲みにもいけない時代。社内恋愛も生まれにくいが、田所は、真剣に相手のことを思えばルールをとっぱらってもいいのではないかと説く。どう考えても田所はメイに好意的で、距離を詰めにいってる感じである。

「私の家政夫ナギサさん」3話 メイ(多部未華子)にモテキ到来? でも無意識に呼んだのは「おじさん」
第3話は7月28日放送。画像は番組サイトより

さらに、営業先の医師・肥後先生(宮尾俊太郎)までメイに好意的になってきた。きっかけは肥後もメイもマッチングアプリに登録していたから。肥後先生、バレエダンサー宮尾俊太郎が演じているうえ、「北斗の拳」好きという属性が出てきた時点でなにかありそうと思っていたが、意外とナルシストぽいキャラが出てきた。
そして、最初は渋っていた新薬に関する講義を引き受ける。下心か? と思ってしまうのだが……。結果、電車が止まってリモート講義という、いまどきの展開に。

田所、肥後……とメイにモテキ到来? でも頑張りすぎて倒れてしまったとき、メイが無意識で呼んだのは「おじさん……」――ナギサだった。急遽、美登里に呼び出され、メイのもとに走るおじさん、いやナギサさんは刑事ドラマのように颯爽としてカッコいい。

病室で横になるメイをみつめるナギサと美登里。
自宅療養になるメイ。ナギサの手際のよさに自分は必要ないと思う美登里に、本当の母は絶対なのだとナギサは考える。大森南朋はこういう繊細な感情をふっと出せるからナギサさんを演じるのには適任であろう。おじさんが家政夫という単なるおもしろキャラには決してしないのである。

一方、草刈民代を見ていると、「大恋愛 僕を忘れる君と」(18年)で草刈が、戸田恵梨香演じるヒロインの元彼(松岡昌宏)と結婚する母を演じたように、美登里とナギサが結婚したら万事丸くおさまるのではないかと思ってしまう。

ナギサが帰り、美登里はおかゆを作ると、メイが「味がしない」と言うからメイがコロナになっちゃったのかと思ってドッキリ。でも単に美登里の料理下手のせいだった。

「おじさん」から「ナギサさん」へ

第2回ではメイがマスクをしている場面があり、3回でがリモート講義、味覚異常(ではないが)とちょいちょい現代的な要素を入れつつ、やっぱり決して深刻にはならない。

ナギサを正式に雇うことにして、呼び方も「おじさん」から「ナギサさん」へ。契約したときのメイとナギサの服の色合いとチェック柄がなんとなく似ているのは狙いなのだろうか。

夜、帰ると、部屋の窓に明かりが灯り、「おかえりなさい」と美味しい食事で迎えてくれる。最高じゃないか!

これで順調に仕事に勤しめると思ったら……この展開もお約束。4週はいよいよメイのモテキが本格化? 家に家政夫、外でふたりの仕事のできるイケメンにモテモテ。こんなにトントン拍子にヒロインが恵まれていてもイラッとしない。

気にかかるところがひとつもなく(製薬会社や家事代行サービスに詳しい人ならなにか気になるかもしれないが)ここまで気楽に見られるドラマって才能がないと作れないと思う。いたれりつくせりのエステサロンまたはファンシーキャラクターグッズを作っている会社のよう。ノウハウや志がきっとあるに違いない。
(木俣冬)

番組情報

TBS 火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』
毎週火曜よる10:00〜10:54
番組サイト:https://www.tbs.co.jp/WATANAGI_tbs/