多部未華子「私の家政夫ナギサさん」 自分本位なメイだけど多部ちゃんが演じているから許せちゃう 6話
イラスト/ゆいざえもん

ストレスレスで癒やしのユートピア 「私の家政夫ナギサさん」6話

火曜日の癒やし『私の家政夫ナギサさん』(TBS系 毎週火曜よる10時〜)第6話は、視聴率は16%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)と上り調子。

時代は医療でも刑事でもなく、家政婦(夫)ものへ――。

家政婦(夫)の何がいいかといえば、忙しい仕事をうまくまわすために家政婦(夫)を雇って仕事もプライベートも快適になること。
インテリアもファッションもご飯も“映え”そうなものばかりに囲まれているメイ(多部未華子)。メイの衣裳やアクセサリーがかわいい。イヤリングの重ね付けが素敵。

プライベートにストレスがないからか、対人関係もギスギスしない。仕事も恋愛も誰もメイを傷つけることがない。苦労も哀しみもさらりと流して進んでいく。

眼福。そしてストレスレス! ナギサさんの世界は癒やしのユートピアである。

第6話は、副支店長・松平(平山祐介)馬場(水澤紳吾)が退場し、メイがリーダーとして張り切る。ナギサさん(大森南朋)の謎も徐々にわかってくると同時に、田所(瀬戸康史)がメイとナギサの関係を怪しみはじめ……といよいよストーリーが大きくうねり始めた。

多部ちゃんだからいやな感じにならない、キャスティングの妙

ナギサさんが大手製薬会社のMRだったことを知って驚いたメイは、会社で導入された「1 on 1ミーティング」という上司と部下の対話によって社員間の信頼関係をつくりあげる方式をナギサさんにも使ってみることにする。

メイは、ぐいぐい質問するが、ナギサさんは話さない。だってそんなにグイグイ聞く気満々でこられたら話せないよなあという感じに演じる多部未華子。


メイは、プレゼントと言いながら自分の食べたいレストランメニュー本をナギサさんに贈る。メイは、人の話を傾聴するのが得意でなく、わりと自分本位である。この間の、ナギサさんに贈ったすき焼き肉を、焼き肉で食べたいと自分の好みにしてしまったこともそうだった。

こういうメイを涼しい顔で姿勢がよくて澄んだ声の多部未華子が演じているから、いやな感じにならないが、ほかの俳優だったら、いやな感じになる危険性もあるだろう。その場合、メイの服も、優秀なMRがその格好で営業に行くにはいささかゆるすぎないのかなどと言われてしまいそうだが、なぜか多部ちゃんだと気にならない。キャスティングが巧かった。

母・美登利(草刈民代)と妹・ユイ(趣里)が遊びに来て、4人で楽しく、ナギサさん特製・たっぷりほうれん草の豚キムチ鍋を食した後、ナギサさんが美登利とユイと一緒に帰るところを田所が目撃。ちょうど3人だから、親子? と納得しかかるも、途中、ナギサさんだけ別の道に行くところまで見かけて疑いを抱き始める田所。

その帰り、美登利はナギサがメイの結婚相手がいいんじゃないかと鋭いことを言い、ユイが田所はどうかと言うと、仕事人間同士、ぶつかるとやっぱり鋭い。メイに男に負けないようにとか、結婚は30歳までにとか呪いをかけていた割にはヒトを見る目はあるようだ。

田所かナギサさんか。
そんなおりメイは仕事の途中、ナギサさんを見かけ尾行を開始。


「業務時間外も心優しい気配りをナチュラルに発揮する男・ナギサ」
「プライベートで購入するキャベツにもいっさいの妥協を許さない男・ナギサ」

おじさんだけど、メイにとってはやっぱり「男」なんだなと思うセリフ。だが、大森南朋は、もはや、おじさんでもおばさんでも男でも女でもなく「ナギサさん」としか言いようのない雰囲気を作りあげている。

多部ちゃんだけじゃない、「ナギサさん」のいいところは演技巧者が集まっているところ

メイがナギサさんを見失ってあせっていると、ナギサさんにみつかってしまう。メイはお腹がすいて歩けないふりをして、ナギサの家に入ることに成功。でもそこを田所に見られ、年上の恋人? と疑われてしまうことになるのだが……。

そんなとき、気になりすぎて駐車場でひとりごとをしゃべってしまう不自然さも不自然に思えなく、気のいい青年という感じ満点の瀬戸康史の演技。困って頭をかきむしる芝居がこんなにナチュラルな人も珍しい。薫(高橋メアリージュン)とデート中にメイの話題ばかり出す無礼さもそこまで酷い人って感じにならない徳なキャラである。

多部未華子、大森南朋、瀬戸康史……と「ナギサさん」のいいところは演技巧者が集まっているところなのである。

多部未華子はこんなセリフもさらっと言ってしまう。
「カサンドラの門がいま開かれる。『北斗の拳』第54話です」(ナギサさんの家の門が開くところで)

この後、すぐに切り替わるCMがコミックシーモアじゃなくて残念……と思ったが、その次がコミックシーモアだった。さすがに続くのはわざとらしいという配慮だろうか。


CM明け、カサンドラの門のなかにメイが踏み込んだことで、無菌消臭のクリーンな世界が少しだけ影を帯びる。ナギサさんの家はシンプルな一軒家。「生まれてからこの年までずっとここなんです」と言い、一緒に住んでいたお母さんは5年前に癌で亡くなっていたことを語る。

多部未華子「私の家政夫ナギサさん」 自分本位なメイだけど多部ちゃんが演じているから許せちゃう 6話
第7話は8月18日放送。画像は番組サイトより

メイはナギサさんの心に近づいていくのと並行して、ナギサさんにも変化が。メイが肺がん治療の新薬プロジェクトに入り、生き生きと働き始めると、ナギサさんはメイの健康を心配し、しつこいくらいにメッセージを送ってきたりするように。

「は?」っていやな顔してスマホの着信通知をオフってしまうときのメイは、これまでナギサに頼りきって、プライベートにも知ろうとしていたのに勝手だなあという気もするが、やっぱり多部ちゃんだから、許せる。

仕事が忙しくなってきた男性に彼女が介入してきてうるさく思う描写はよくあるが、「ナギサさん」は逆。ただ、ナギサさんの場合、母親が子供を心配する感じに近い。心配し過ぎのナギサさんを追い返したメイが、翌日、ナギサさんに忘れ物を持ってきてもらうのも、すでに家族のような感じになってきているような気もしないでない。

相手を知ることは、すこし厄介なところにも踏み込むことで、そうやって信頼感も深まっていく。新たなフェーズに入っていきそうなメイとナギサさん。田所はどうなる。
そして、肥後先生(宮尾俊太郎)とは……。
(木俣冬)

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番組情報

TBS 火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』
毎週火曜よる10:00〜10:54

公式サイト:https://www.tbs.co.jp/WATANAGI_tbs/
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