松岡茉優・三浦春馬『カネ恋』3話 女性を美化せず、慶太を善人に描く そして不意打ちのキス…良き
イラスト/ゆいざえもん

愛情の表現は押すばかりではない 『おカネの切れ目が恋のはじまり』3話

どうなるのか。こんなに予想がつかないドラマもない。毎回、意外な展開が起こる『おカネの切れ目が恋のはじまり』(TBS系 毎週火曜よる10時〜)。
第3話も、これは予想してなかったーという流れだった。

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憧れの早乙女健(三浦翔平)に今度食事でもと誘われた九鬼玲子(松岡茉優)。15年もの思いがついに報われるときが来たーーと思ったら、板垣(北村匠海)が、幼い男の子とママと呼ばれる女性と3人でいる早乙女を目撃する。こういう展開はないこともないけれど、早乙女と玲子と、女性と子供の落とし前がけっこうエグかった。それは後述する。

猿渡慶太(三浦春馬)は、第2話で婚約解消した元カノのまりあ(星蘭ひとみ)の結婚相手のふりをさせられて、意外と困惑していた。「結婚って、この人ひとりを大切する。そういう運命にゴロゴロピッカーンって稲妻みたいに打たれてするものでしょう」と、慶太はお金に関してはちゃらっとしているが、人間関係に対しては極めてピュアである。

玲子は初めて経験する好きな人との食事会に、街のショウウインドウで見た服と似たものを自分で作って用意。試しにそれを着て慶太と出かける。二人はアイスを食べながら歩いていくので、アイスが服について服を台無しにするのかと思ったら、そんなベタな展開はなかった。

慶太が玲子を連れていった海街マーケットには、第2話で慶太が「妹」と言ってたひかり(八木優希)がいた。
なんと、彼女、第1話の冒頭で、玲子が一個だけ買ったお菓子屋の店員だった。気づかなかったー。八木優希、『ひよっこ』の優子だったー。

ひかりが腹違いの「妹」というのは慶太の勘違いで、彼女は父親(草刈正雄)の友達の娘であり、まったくの他人。このエピソードによって、板垣が目撃した早乙女の家族らしき人物も板垣の勘違いではないかと思ったが――。そんなことはなかった。

ボロボロの早乙女に玲子は……

やっぱり、早乙女は結婚していた。未婚のふりをして女性を高額セミナーに呼び込んでいたのだ。ここは、冒頭の慶太が、まりあの結婚相手のふりをしていたことと重なってくる。
慶太の誠実さと早乙女の不誠実さの対比。

早乙女のやっていたことは詐欺行為ではないかと世間的に問題になってしまう。そんな大事件が起きたのは、玲子が早乙女と食事したその晩のことだった。

「花屋と早乙女さん、良き」
「カッパと早乙女さん、良き」
「信号機と早乙女さん、良き」

「良き良き良き良き」と玲子はひとり舞い上がり、素敵なディナーを食べた帰り道、「このことは墓場まで持っていきます」と感動のあまり、間違えた言葉遣いをしていると、マスコミ(マスゴミ?)が寄ってくる。


全く知らなかった早乙女の私生活を突きつけられ、しばし落ち込んでいるように見えた玲子だが、早乙女を心配して事務所に向かう。そこには、騙された女性たちの怒りの張り紙がたくさん貼られていた。あの華やかで輝いていた早乙女はもういない。
既婚を未婚と偽ったのはよくないが、自分にワンチャンあるかと期待してセミナーに大金を払い、騙された、詐欺師と怒るというのもどうかと思うけれど……。既婚だったらセミナーの価値がないという早乙女の存在が残念。

松岡茉優・三浦春馬『カネ恋』3話 女性を美化せず、慶太を善人に描く そして不意打ちのキス…良き
第4話は10月6日放送。画像は番組サイトより

妻は離婚を切り出し、慰謝料を請求し、早乙女はボロボロに。結婚の事実をマスコミにリークしたのは妻かと思いきや、玲子は、そこに「ほころび」を感じ、秘書の牛島(大友花恋)の仕業であったことを暴く。1話に続くミステリー風味。

牛島が、早乙女のために懸命に働いている自分との会食は仕事(スケジュールの色分けがブルー)で、玲子との会食がプライベート(オレンジ)であったことに嫉妬を感じるディテール描写が怖い。

「まわりの女、全員泣かせてるんじゃん。そんな男、最低でしょ」
慶太は大憤慨するが、玲子は早乙女を見限れない。それでも守りたい、そばにいたいと思って、雨のテニスコートで「そばにいちゃダメですか」と早乙女の手を思いきって自分から握るが、そっとその手を外される。
詐欺まがいのことをしていた早乙女にも五分の魂というところだろうか。

その様子を雨に濡れながらじっと見つめている慶太。
家に帰って髪をザクザク切る玲子。
「吹っ切れるって聞いたのに、余計痛い」と苦しむ玲子に「痛いの痛いの飛んでけー」と慶太は素朴に慰めることしかできない。

朝起きたら「おはようございます」と空に向かって早乙女に挨拶、お寺に行ったら彼の長生きと健康を祈願し、手をつないで公園でスキップしたい願望、竿竹売りの声を聞くと「早乙女」と空耳……。

大量の貢物をするだけはある玲子の思いを聞いて、「強い、思いが強すぎる」と慶太は唖然とするが、「人生の半分以上、大好きだったから」と号泣する玲子にもらい泣き。玲子にドン引きしてもおかしくないのに、もらい泣き。本当にピュアである。

それに比べると、玲子や牛島はなにか根深いものがある。元カノ・まりあの態度もどうかと思うしなあ……。このドラマでは女性をあまり美化していない。そこが良き。
その分、慶太が善人に描かれている。

そこへ雷鳴。驚いて慶太と玲子の顔と顔が大接近。慶太はふいに小さくキス。「え?」と驚く玲子。

そして、次回、最終回。

冒頭の「結婚って、この人ひとりを大切する。そういう運命にゴロゴロピッカーンって稲妻みたいに打たれてするものでしょう」のセリフから考えたら、玲子と慶太のハッピーエンドしか考えられないけれど……。

思いが強すぎる玲子に対して、同じくらいの質量でぶつかっていかず、幼い子供のような振る舞いをする慶太。北風と太陽ではないが、愛情の表現は強く押すばかりではないことを慶太は教えてくれる。
(木俣冬)

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番組情報

TBS 火曜ドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』
毎週火曜よる10:00〜10:54

公式サイト:https://www.tbs.co.jp/KANEKOI_tbs/
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