
基本線は元祖と同じだから面白さは保証されている『24 JAPAN』
ピッ・ピッ・ピ刻一刻進んでいく時の音。これを聞くと問答無用に血が騒ぐ。
『24 JAPAN』(テレビ朝日系 毎週金よる11時15分〜)は総選挙前夜に起こった総理大臣候補を狙うテロ事件を追う24時間をリアルに24時間で描いた大ヒット海外ドラマの日本版。
2001年に誕生した『24-TWENTY FOUR』(日本では2003年にレンタルが開始されて火がついた)は1話1時間全24話、いま目の前で実際に繰り広げられていることのような臨場感にハマる人が続出。シリーズ化され、映画化もされた。
リアルタイムものや、同じ時刻に別の場所で起こっていることをひとつの画面を分割して見せる手法や、そこに付随した群像劇が流行ったのはこのドラマの影響であることは明白だ。日本版は総理大臣候補を黒人から女性に変えるなどいくつか変更も交えながら、基本線は同じ。だから面白さは保証されている。
24時間のうちに事件を解決するために、あらゆる困難に果敢に挑んでいく主人公ジャック・バウワーの日本版・獅堂現馬は唐沢寿明が演じる。獅堂はテロ対策ユニットCTUの第一支部A班の班長。
23時18分09秒〜
冒頭は、23時18分09秒からはじまって、獅堂現馬がうなだれたり、立ち上がって2丁拳銃を撃ったり。そこから時間が遡って0時0分0秒に。なんと前に進むドラマ『24』が巻き戻しからはじまった。
0時0分0秒〜
日本初女性首相を目指す民生党・朝倉麗(仲間由紀恵)が演説している。この日、総選挙がある。
現馬は自宅で娘の美有(桜田ひより)とカードゲームをしている。QEENのカード4枚はまるで女性総理の時代を表しているかのようだ。妻・六花(木村多江)は離れて自分の仕事に打ち込んでいる。目下、家族3人がギスギスしているため、腹を割って話し合おうと美有の部屋に入ると、夜中にもかかわらず家を抜け出していた。
その頃、沖縄県那覇市ではあやしい男・桑原レン(栗原類)がどこかに何かの情報を送信。
0時08分
東京で銃撃戦が起きている。
CTUの本部長・郷中(村上弘明)から電話があり、唐沢は第一支部に向かうと、24時間以内に朝倉麗の暗殺計画が実行されようとしていて、CTUの中にいる誰かが暗殺計画に関わっているらしい。それを調べてくれと頼まれる。
朝倉はスタッフや夫・遥平(筒井道隆)たちと明日のスピーチ案の打ち合わせをしている。本人はできるだけ謙虚にしたいというが……。
政治家もCTUのメンバーも夜中に働いている。この人達に働き方改革はなさそうだ。
大人たちは働いているが、美有は友達の函崎寿々(柳美稀)、KEN(上杉柊平)とGO(犬飼貴丈)とワールド家具センターの店内に忍び込んで盛り上がる。
NY発、成田行きの飛行機のなかで朝倉を撮影する写真家・皆川恒彦(前川泰之)に接近する謎の女・氷川七々美(片瀬那奈)。
獅堂現馬の長い一日が始まる
00時26分41秒〜飛行機、CTU、家具センター、朝倉の事務所の出来事が順に描かれる。
娘を心配する妻から電話を受けつつ、CTU東京本部第1支部長・鬼束(佐野史郎)を怪しいと睨んだ獅堂は、鬼束を気絶させ、正気に戻る30分の間に彼の秘密を暴こうと、A班のチーフ・水石伊月(栗山千明)に頼む。
娘は「パパが死んだの。半年前に」などとKENに話している。獅堂、こんな夜中にいきなり公私共に問題を抱えてしまう。「なんで今夜なんだ」というセリフがすべてを物語っている。獅堂現馬の長い一日が始まった。
00時34分22秒〜
六花に寿々の父・函崎(神尾佑)から電話。
獅堂が、水石が頼みを渋るので、南条(池内博之)との関係性を利用すれば調べられるだろうとさりげに言うと、「知ってたの? 知られたくなかったわ」と意味深な反応をする水石。南条には「今もヤツと続いているのか」と疑われる。
と、ここで、獅堂、もうひとつ面倒な案件を抱えていることがわかる。
美有のパスワードが、元祖『24』と真逆だったところが印象的。
00時39分15秒〜
夜中にニュースキャスター山城(櫻井淳子)から朝倉に電話。内容に「デマよ」と憤慨する朝倉。その内容はまだ明かされない。
その頃、朝倉の娘・日奈(森マリア)と息子・夕太(今井悠貴)が母のためにパイを焼いている。それにしてもどうして深夜にみんなこんなに活動的なのか。
「日奈ちゃんは将来、いいお嫁さんになるわ」と姑・滋子(水野久美)の言葉には、家事のできない嫁・麗への嫌味がこもっていることを日奈は察する。
ここが元祖にはない部分。黒人大統領から女性総理大臣に設定が変わっているから、働く女性問題が描かれる。嫁姑問題、家事問題が出てくると、一気にドメスティックな雰囲気になる。
日本初の女性総理大臣の誕生を阻止する陰謀を阻止するというのは現代的で、朝倉の政策は緊縮財政、管理・監視社会の反対で、彼女がトップに立ったら、CTUの今後も危ぶまれる。だから、内部に関わっている者がいそうという設定は妥当だと思う。が、この政策を潰そうとするってことは権力側からの力が及んでいるということで、市民の幸福は遠い。獅堂と朝倉には庶民のために頑張っていただきたい。
そうしないと「この国の民主主義は終わりだ」(郷中)

1日のドラマを24週間で描くチャレンジング
鬼塚の弱点を握って自白させそうようとする獅堂をやり過ぎと咎める水石に、獅堂は「人間は一度踏み始めたらどこまでも坂道を転がり落ちるんだ」、(それまでは良識ある優秀な人物だったが)「たった一度間違えただけなんだ」、「踏みとどまることが肝心なんだよ」と持論を語る。過去にも獅堂は仲間の不正を暴いたことがあり、それが良く思われていなかった。元祖ではその「間違え」(不名誉なこと、compromising)を「妥協(楽する、makes it easer)」とも言っている。「妥協」を「間違え」と言い換えること、「妥協」という言葉を用いないことでは、ずいぶんと主人公の考え方も変わってくると思う。「妥協」に言及しなかったことは『24 JAPAN』の重要なポイントであろう。
00時48分51秒〜
鬼塚の口座に不正を発見し、それを餌に情報源を聞く。鬼塚が目を覚ますまでの30分、「5秒やる」とパソコンのenterキーをかすかな音で叩きながら「カチ カチ カチ……」と数える5秒と、時間を意識しているドラマである。
氷川は、写真家・皆川のプレスを盗み、千葉沖、着陸目前の飛行機から脱出、飛行機を爆発させる。ここは元祖の第1話でも最高の見どころで、気分が高まった。
その頃、六花は函崎の車に乗って、家具センターに向かっている。「そこにいなかったらどうするつもりだ」と冷静な獅堂に、「先のことなんて考えてない」と答える六花。元祖では妻は「そこまで考えてなかったから」とわりとうっかりさんな感じだが、日本版は良い悪いかは別として、強い意志(思い込みのようなもの)を感じる。
六花を乗せた車と、美有が乗った車が、お互い気づかないまますれ違っていく。
あと23時間。続きを観るのに1週空くのがもどかしい。元祖にほぼ忠実に作られていて、サスペンス感満載。俳優も皆、緊張感や腹芸的な部分をクールに巧みに演じている。それだけに、やっぱりレンタルDVDや配信で一気に観たい気もしてしまう。1日の話を24週間(ほぼ半年間)かけて描くことは、なかなかのチャレンジである。
(木俣冬)
※次回2話のレビューを更新しましたら、以下のツイッターにてお知らせします。
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番組情報
テレビ朝日系『24 JAPAN』
毎週金曜よる11:15〜
番組サイト:
https://www.tv-asahi.co.jp/24japan/
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