また、2019年公開の映画『トラさん〜僕が猫になったワケ〜』では、主演の高畑寿々男役を演じた。ギャンブル好きの売れないマンガ家で、ある日事故に遭い、多部未華子演じる妻の奈津子と小学生の娘・実優(平澤宏々路)を残して命を落としてしまう。
ところが、1カ月間だけ人生を挽回するチャンスをもらったのだが、姿はトラ猫。劇中のほとんどを猫の着ぐるみで演じた北山。ダメ夫っぷりも、猫の姿になってからの奮闘も、その姿にさほど違和感なく入り込めたのも、北山の愛くるしいキャラクターゆえ。ラストは涙なしでは観られなかった。

北山は26歳のときに、『J'J Kis-My-Ft2 北山宏光 ひとりぼっちインド横断 バックパックの旅』(2012年放送/日本テレビ系)という番組の企画で、インド一人旅にでかけた。旅の費用は宿泊費、交通費、食費の全て込みで1万円。物価が安いとはいえ少ない予算のなか、2495キロのインド横断を目指した。
インドに降り立ったときは黒いキャップをかぶったオシャレな姿だったが、旅が進むと共に、頭には大きなストールを巻き、北山の表情もどんどん変わっていった。
撮影スタッフが帯同しているとはいえ、言葉は通じないわ、お腹を壊すわのハプニング。とにかく人、人、人…、人生観が変わるといわれるだけの環境に揉まれていくうちに、素のような部分が露わになっていった。道行く人と簡単な英語を交えながらコミュニケーションをとったり、ガンジス川で沐浴したり。
予算が足りない、ヒッチハイクに失敗となれば徒歩移動。寝台列車で知り合った少年とは、遊び道具もない、言葉が通じないながらにも、北山がボイスパーカッションを披露したり、スケッチブックに似顔絵を描き合ったりして交流を深めていた。

過酷な状況になる度に「くそー! 負けてらんねぇぞ」「よし! 行く! 歩くぞ!」。声に出して自分を奮い立たせていた。毎晩、旅の書をしたためていたのだが、その中の一枚にこんな言葉があった。
「一歩一歩地球に打ち付けた足跡が道になる」
キスマイも今年デビュー10周年を迎え、グループとソロの活動を重ねてきた。地に足を打ち付けて、時にはめり込むようにして……いま改めて振り返ってみると、北山のアイドル人生と重なるような言葉だった。
(柚月裕実)
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