共通点を探せ!『ルパン三世 カリオストロの城』上へ下へのザックリ考察

金曜ロードSHOW!は『カリオストロの城』

本日、11月20日の金曜ロードSHOW!は、『ルパン三世 カリオストロの城』。いや、何度目だよ! と思ったら意外と2、3年おきの放送なので、やってたらやってたで何やかんや観てしまう宮崎駿監督の劇場監督デビュー作であります。

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しかし、毎回ボーッと観てるのも何だなぁと思い、予習として宮崎監督自身が多大な影響を受け、スタジオジブリの原点とも言われている『王と鳥(やぶにらみの暴君)』を観てみたわけですが、コレがまぁものすごいカリオストロの城感!

共通点を探せ!『ルパン三世 カリオストロの城』上へ下へのザックリ考察

いや、カリオストロだけじゃなく、『未来少年コナン』『天空の城 ラピュタ』まで想起させる全部盛り感! あれ? ていうか、コナン、カリオストロ、ラピュタってすごい似てない? 構図一緒じゃね? ってことで、「そんなん宮さんファンなら常識じゃん」と、突っ込まれること百も承知で、『王と鳥』から、宮崎駿監督のTVシリーズ初演出『未来少年コナン』(1978)→劇場初監督作品『ルパン三世 カリオストロの城』(1979)→スタジオジブリ初制作『天空の城 ラピュタ』(1986)をザックリまとめてみました。


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『王と鳥(やぶにらみの暴君)』とは…

製作がゴタついたせいで監督ポール・グリモーの意に沿わない形で1952年に公開されたのが『やぶにらみの暴君』。のちの日本アニメを支える作家の多くが感銘を受けたそうで、宮崎監督もそのお一人。ポール・グリモー監督によって改作され1980年に公開されたのが『王と鳥』。『やぶにらみの暴君』というだけあって、冒頭から王が全開で出てきます。というか前半の主役はほぼ王です。

【あらすじ】
だたっぴろい砂漠に忽然とそびえる巨城の最上階に住む暴君シャルル5+3+8=16世。望むものは何でも手にし、気に入らない者は手元のスイッチで床下に真っ逆さま。最上階の秘密の部屋には美しい羊飼いの娘と、煙突掃除屋の少年の絵がかかっていて、王はその娘に恋をしている。ある日、愛し合う少年少女は絵から抜け出し、鳥の助けを借りながら城を駆け下りていくのだが…(※物語序盤に「え?! どういうこと?!」ってなる展開があります)

暴君が娘に執着すると物語が動きだす


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高い塔に住む暴君が娘に執着し、少年は娘と逃げる(助ける)ため、鳥と共に上へ下にと駆け回り大奮闘。まず暴君が娘に執着することで物語が始まる。おぉ、鳥の代わりに少年が活躍するという相違点はあるけども、これはまさにコナン、カリオストロの城、ラピュタに通じるストーリーのベースでは。というわけで、整理してみました。

『王と鳥』(やぶにらみの暴君)


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暴君:シャルル5+3+8=16世
少女:羊飼い
少年:煙突掃除屋
上下の舞台:王の巨城とその地下にある貧民街
暴君が娘に執着する理由:娘(絵)にベタ惚れ

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上下の移動:王が暮らしている城のてっぺんから下へ下へと移っていき、地下空間の貧民街まで降りロボットと遭遇、今度は上へ上へと登っていきクライマックス。


初演出TVシリーズ『未来少年コナン』(1978)


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逃亡したラナが、のこされ島に漂着しコナンと出会ったことから動き出す物語。

暴君:レプカ
少女:ラナ
少年:コナン
上下の舞台:インダストリアの三角塔と、レプカに反逆した住民たちが住む地下居住地
暴君が娘に執着する理由:ラナの祖父が握る太陽エネルギーの技術

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上下の移動:地下で下層民に遭遇したり、ラナ救出後、再び地下へ降りた際、ギガントを発見するなど『王と鳥』の影響が色濃い。

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上下の移動:延々と地下を移動し、最深部(墓地)から一気に上昇し、空へ抜ける。

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上下の移動:物語の終盤、コナンとラナのパートに別れ、地下と塔内で入れ替わりながら激しく上下に動きまわり、最終的に合流し、塔のてっぺんに抜ける。

『ルパン三世 カリオストロの城』(1979)


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幻の偽札で有名なゴート札の出処、カリオストロ公国に潜入したルパンが、逃走中のクラリスを助けたことから始まる物語。

暴君:カリオストロ伯爵
少女:クラリス
少年(少年じゃないけど):ルパン三世
上下の舞台:カリオストロの城とその地下
暴君が娘に執着する理由:銀のヤギの指輪とクラリスとの政略結婚

共通点を探せ!『ルパン三世 カリオストロの城』上へ下へのザックリ考察

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上下の移動:城内で激しく上昇と下降を行い、地下で屍の山に遭遇後、瀕死の重症を負い復活、クライマックスで再び上昇と下降を行う。

『天空の城 ラピュタ』(1986)


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シータが飛行船から逃亡し、パズーが空から降ってきた彼女を偶然救ったことから動きだす物語。

暴君:ムスカ
少女:シータ
少年:パズー
上下の舞台:物語全体
暴君が娘に執着する理由:飛行石とラピュタ

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上下の移動:飛行船から地面への落下、谷の廃坑への落下、要塞の地下でロボットと遭遇、要塞からタイガーモス号、タイガーモス号からラピュタへ上昇するなど、映画の舞台設定の中で2段3段と大きく下降し、大きく上昇する。

今観ても面白い『王と鳥』

以上、王と鳥と、コナン、カリオストロの城、ラピュタを何だか似てるなぁと思いつつまとめてみましたが、物語を展開する上下移動が、予想してたよりも複雑で、ラピュタにいたっては、要塞シーンで地下から地上、空へグンと上がったかと思ったら、そこからさらに上の空、上の空へと上がり続ける上昇のマシマシ構造に改めて面白さの秘密を垣間見たかのような気がしました。今回まとめていない『風の谷のナウシカ』も、腐海の底へ落ちて再び上がってくる上下の構図です。『王と鳥』にはその他にも

・ボタンひとつで一瞬で抜ける床
・帽子をかぶった手下集団
・今にも落ちてしまいそうな塔の屋根ギリギリを歩く少年
・水路をボートで追う暴君
・ロボット兵やギガントを想起させる地下の巨大ロボット
・地下に住む底辺の住人たち

などなど、宮崎監督に影響を与えたであろう演出やモチーフが、わんさか出てくるので、ジブリファンは必見の一本です。『カリオストロの城』を観たら、『王と鳥』も観てみてはいかがでしょうか。

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Writer

ウラケン・ボルボックス


東京から福岡に移住した映画好きのイラストレーター。主な著書『なんてこった!ざんねんなオリンピック物語』JTBパブリッシング、『侵略!外来いきもの図鑑もてあそばれた者たちの逆襲』PARCO出版。

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