魂の歌声で人々の心を掴むジェジュン ロック少年の心を持ち続ける可愛い側面も
イラスト/おうか

歌は上手いだけではダメだ。伝わらなければ意味がない。
外国人でありながら、日本語の歌を自身の中で咀嚼し、心の叫びとして日本語に乗せて歌うシンガーが、ジェジュンだ。そんなジェジュンの近年の日本での活躍をレビューする。

J-POPの名曲カバーで人気を決定的なものに

ジェジュン独特のハスキーで倍音の多い声は、特にバラードが良く似合う。ハイトーンも上手いが、彼の場合、中声域の声の倍音の響きがより美しく、ジェジュンらしさを生み出している。一方で、J-ROCK好きを公言し、昔からソロ曲にロックを取り入れてきたロックシンガーとしての一面もある。

2016年12月30日に除隊し、2017年からソロシンガーとして活動を再開。除隊後すぐに行ったコンサートツアー『2017 KIM JAEJOONG ASIA TOUR "The REBIRTH of J"』は、ソウル、横浜、大阪、名古屋、埼玉、香港、タイ、マカオ、台湾の9都市で13万人を動員。
アジア圏で人気の高さを証明した。

日本では2018年から活動を本格化させ、6月にシングル『Sign / Your Love』をリリースすると、オリコンチャートで2位獲得するなど、ここでも変わらぬ人気ぶりを見せた。

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Single『Sign/Your Love』

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彼のシンガーとしての実力を世の中に再確認させることになったのは、J-POPの名曲のカバーだ。2018年のFNS歌謡祭で尾崎豊「Forget-me-not」を歌うと、まさに10代最後の尾崎がこの曲に託した“魂の叫び”そのままの歌唱が大きな話題に。「尾崎さんは熱狂的なファンが多いので、ファンの反応が怖かった」とジェジュン本人はビクビクしていたというが、尾崎ファンからも認められるカバーとなった。

ジェジュンは尾崎のライブ映像で自分のすべての力を込めて歌う尾崎を見て、自分の限界ギリギリの状態を表現するために、原曲キーよりも4度も上げて歌ったという。


2019年9月には、その「Forget-me-not」を含むカバーアルバム『Love Covers』をリリースし、DREAMS COME TRUEの「未来予想図II」や、宇多田ヒカルの「First Love」など数々のラブソングの名曲を収録。オリコンチャート、27か国のiTunesチャートで1位を記録し、「第61回日本レコード大賞企画賞」、「第34回日本ゴールドディスク大賞ベスト3アルバム(アジア)」を受賞した。

「Forget-me-not」以降は『The Covers』(NHK)を筆頭に、音楽番組にカバー曲の企画で出演する回数が増えた。もちろん、オリジナル曲を歌ってくれるのもうれしいのだが、カバーだからこそ見られるISSAや城田優、藤巻亮太(レミオロメン)など日本のアーティストとのコラボで、彼の歌のすばらしさがさらに広がるのを見るのも楽しい。

ジェジュンはカバーをするとき、「なるべくオリジナルの歌手の方に寄せる」のだそうだが、尾崎豊の「Forget-me-not」でキーを上げたように、彼はオリジナルの良さを追求するために努力を惜しまない。日本語が堪能であること、歌が上手いのはもちろんだが、その歌詞の意味を自分のことを語るかのように置き換えて、自分の口から出す……、すなわち寄せてはいるが、かならず自分のものにしてから歌っているからこそ、人の心を掴む歌が歌えるのだろう。


数々のカバーの中でも『思い出のメロディー』(NHK)で歌った美空ひばりの「愛燦燦」、『The Covers』で歌った中島みゆきの「化粧」など、彼の歌う女性の歌は秀逸だ。ジェジュン曰く、「姉が8人いるので、自然と女子力が高くなった」そうだが、これほど女心を丁寧に歌える男性歌手も少ない。2020年7月にリリースしたカバーアルバム第2弾、『Love Covers II』でも、高橋真梨子の「for you…」を歌っているが、こちらもおススメ。

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Cover Album『Love Covers II』

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完璧な日本語力とトークセンスでバラエティでも活躍

一方、オリジナル曲は2ndシングル「Defiance」のようにロック全開の曲も多く、テレビで見たカバー曲の印象を抱いていた方は、そのギャップに驚くかもしれない。

10月に配信リリースされたTVアニメ『NOBLESSE -ノブレス-』オープニング主題歌「BREAKING DAWN (Japanese Ver.) Produced by HYDE」は、ジェジュンが敬愛するL'Arc〜en〜CielのHYDEのプロデュース曲。HYDEは10代のころからJ-ROCKにハマっていたジェジュンにとっては神のような存在で、2018年にはHYDE主催のイベント『HALLOWEEN PARTY』に出演するなど、ロック人脈との交流も。


年頭には、ジェジュンとHYDEの合同誕生会にライブ終わりのGACKTが駆けつけるという豪華なプライベートの様子がインスタグラムで公開されたが、いつまでのロック少年の心を持ち続けるジェジュンも可愛い。


今年は、1年半ぶりのライブツアー『BREAKING DAWN』も予定されていたが、コロナ禍で2021年に延期に。しかしその苦境の中、コロナ禍によって人前で歌が歌えなくなった“ジェジュン”が再び人前で歌えるまでの軌跡を描いたシチュエーション・コメディ『僕は歌が歌いたい』(日本テレビ系)で本人役をリモートで演じた。

そのフィナーレともいえるファンクラブ会員限定のオンラインライブ『J-JUN LIVE BOKUNOUTA 2020』では、2週間の隔離を経て来日し、『Love Covers II』からMISIAのカバー「逢いたくていま」など、全8曲を披露した。

日本ではまた、完璧な日本語力とトークセンスでバラエティでも活躍。11月17日には『幸せ!ボンビーガール』(日本テレビ系)に出演し、アカデミー賞作品『パラサイト』で話題となった半地下物件や、屋根部屋を紹介。
ソウルで5億円の豪邸に住む彼が、15歳で上京した当時は、アルバイトを掛け持ちしながら家賃1万円の「コシウォン(考試院)」という2~3畳の受験生用物件に住んでいたことなどを明かした。

また、その日本語でのトーク力を活かし、『古家正亨のPOP A』(NHKラジオ)では、月1MCも担当している。

11月25日には4時間生放送の音楽番組『ベストアーティスト』に出演することが決まった。ぜひ、ジェジュンの魂の歌声に触れてみてほしい。

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Writer

坂本ゆかり


レコード会社の制作・宣伝、Webメディアの編集長を経てライターに。女性誌、Webなどで主にアーティストのインタビューを担当

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