菅野美穂×浜辺美波『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』岡田健史大盤振る舞いの2話は人の“弱さ”描く
イラスト/おうか

※本文にはネタバレがあります

1話の“強さ”に反して“弱さ”を描いた『ウチカレ』2話

『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(以下ウチカレ)(日本テレビ系 毎週水曜よる10時〜)は港区全面協力ということで、同じ港区に会社があるエキサイトも引き続き応援していきたいドラマ。

【前回レビュー】『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』1話 女は強いし、母も強い。私達は生きるために恋をする

恋愛小説の大家で、今は人気に陰りがさしている水無瀬碧(菅野美穂)と、ひとり娘でオタクの空(浜辺美波)は知らずに同じ人を好きになってしまった。
相手は整体師の渉周一(東啓介)。25歳。

愛娘との大事な思い出の詰まったタワマン生活を維持するために当たる恋愛小説を書かないといけない碧は、整体師に恋する四十代の恋愛ものを書こうと思い立ち、気合を入れてメークして整体に通うが、五十代と思われショック。まだ四十代なのに……。

その話を聞いて、25歳から見たら40も50も同じと幼馴染のゴンちゃん(沢村一樹)は笑う。これはある意味、五十代には福音である。
25歳からみたら50歳も40歳と変わりないのだから。

一方、空は、大学のケインズゼミの授業中、落書きをしていた絵を講師(大高洋夫)に捨てられそうになり、それを入野光(岡田健史)が拾う。そしてつきまとう。1話の居酒屋で枝豆を飛ばした空を可愛いと微笑んだ光に、空が馬鹿にされたと勘違いして枝豆を投げつけたとき、なにかありそうなフラグは立っていた。やっぱり……。

光は漫画が好きらしく、空と気が合う。
じつはオタクで、空に一緒に漫画を描こうと持ちかける。そういう展開かー。

赤いコートに、派手なケモノ(鳥?)柄のニットを着こなす光の、光の属性。でも、オタク活動のときは典型的なオタクビジュアル(に変装している設定)。いるいる、素材はイケメンなオタク。

1話では小出しだった岡田健史。
2話では大盤振る舞い。米津玄師を歌う岡田健史。「Lemon」だったが、そこは「感電」じゃないのか。オタクは米津玄師も髭男も嫌いじゃないと思うけれど、光はアニメソング至上主義らしい。

彼の言動を見るに、光はオタクをブランド化した現代の若者という雰囲気。壁ドンして言うセリフが「おれがオタクなこと、内緒だから」というのも可笑しかった。


バブル時代を生きたアラフィフ母と、オタクの娘の物語の2本立てで、F2(35〜49歳)、F3層(50歳以上)とF1層(20〜34歳)をしっかり抑え、恋とおしゃれの母世代、オタクで恋に興味ない娘世代の情報と感情をドタバタと速度で見せるドラマかと1話では思って観たが、2話はちょっと違う表情を見せる。

開始18分くらいで、ジャニス・イアンの曲「Will You Dance?」がかかると、それを劇伴のようにして、碧と空は各々、なにか寂しさのようなものを抱えるようにしんみり。そこに機関銃のようなセリフはない。

この曲の出どころはゴンちゃんの父・小田俊一郎(中村雅俊)が家でかけたレコード。7年前に亡くなった妻との思い出の曲。古き良き時代の象徴・中村雅俊。
この曲、聴くだけで良いドラマを観たような気になるから不思議。名作ドラマ『岸辺のアルバム』(77年 / 山田太一脚本)の主題歌なのだ。もちろんそこが刺さるのは昭和のドラマ好きだけかもしれないけれど。

ゴンちゃんはあずきを煮て、その“声”に耳を傾ける。彼が聞くあずきの声こそ、空や碧の心の声のようだ。そこまで表現を重ねずともいい気もするが、描かずにいられないのだろう。


菅野美穂×浜辺美波『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』岡田健史大盤振る舞いの2話は人の“弱さ”描く
(C)日本テレビ

小西(有田哲平)の人物描写のリアリティー

空は渉とカフェで再会し、一緒にお茶する。190センチある渉と小柄の空。昔の恋愛漫画のよう。たとえば『小さな恋のものがたり』みたいな。

読んでいる本が碧の本でびっくりする空。ふたりが上野動物園にコツメカワウソを見に行く約束しているのを目撃する碧。母の恋は終わったが、娘はモテキに突入した。

ジャニス・イアンの曲が鳴ってなくても、そのムードがずっと残るように、碧と空、それぞれの心の内がのぞいてくる。名曲の力って大きい。

漱石(川上洋平)に相談を受けた、碧の元担当の松山(ふせえり)は 、あっけらかんと強気な碧の意外な心情を理解していたが、自分ではもう彼女を守りきれず、出版社での女性の限界を感じて辞めたと語る。

これは切ない話である。早く売れれば売れるほど、耐久レースは長くつらい。どんどん先に行くのもつらいが、キープすることもとても大変だ。初代担当の小西(有田哲平)はその大変さを知っていながら碧を自ら守ることはしないで、漱石に任せる。それはそれで優しさかもしれない。

こういう読めない人って世の中にいるなあと思う。割り切って、時代の波に乗り、ひとりだけどんどん出世してうまくやっていて、でも昔の仕事仲間を完全には切れないのか切らないのかわからない、ぱっと見、陽気で軽い感じの、この人物描写にはとてもリアリティーがあった。

空はやがて光の抱える弱さが自分と一緒だと感じる。それは世間と自分の間の断絶を感じているところか。北川悦吏子先生のドラマは、この圧倒的な世界と自分との差異に対して、決死で抵抗する主人公の強さと、裏腹の弱さがぶつかりあったときに散る小さな火花みたいなものが魅力で、『ウチカレ』は1話で強さ、2話で弱さと分けて描いたように見える。つまり、1話と2話でひとつ。

菅野美穂×浜辺美波『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』岡田健史大盤振る舞いの2話は人の“弱さ”描く
『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』第3話は1月27日放送

(C)日本テレビ

恋が早々に終わり、空を応援する側にまわる碧だったが、そう見せて、懲りてない。空に伝授した恋を獲得する方法を漱石に試し、みごとにいい感じになりそうだったが、乗り込んできたサリーこと伊藤沙織(福原遥)に振り回される。

碧の空のような寝室で寝かされたサリーが目を覚まし、恋心を吐露し、それを聞いた空は「恋愛は闘いかもしれない」とやる気になって、可愛いワンピで颯爽と渉との動物園デートへと出かけていく。おしゃれをしてもメガネはかけている。いや、メガネだって武器なのである。少なくとも浜辺美波にとっては、美少女と眼鏡というテッパンの武器になっている。

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●第3話あらすじ
はりきって渉(東啓介)とのデートに向かった空(浜辺美波)。しかし、碧(菅野美穂)の心配通り、慣れない異性との交流で、娘・空の初デートは想定外のアクシデントに見舞われる!

おだやでは、ゴンちゃん(沢村一樹)のもとに見合い話が舞い込んだことで碧との関係に変化が。年下で美人の相手からの熱烈なアプローチとあって自信満々のゴンちゃん。しかし碧は、ゴンちゃんが結婚すれば今までのように気軽におだやに入り浸れなくなることに複雑な思いを抱いていた。さらに、恋をしていないと恋愛小説が書けない碧は、新作小説がはかどらず、仕事もスランプに。碧は漱石(川上洋平)の後押しでゴンちゃんとデートすることになるが……。母・碧のデートにも、まさかの結末が待っていた!

一方で漱石はストーカー気質の恋人・沙織(福原遥)の異常なまでの執着に手を焼いていた。同じ出版社でバイトまで始めた沙織は、漱石を24時間監視していて……。 そして光(岡田健史)は、元家庭教師の未羽(吉谷彩子)に想いを寄せながらも、年上の未羽との関係に密かに傷を抱えていた。さらに、エリート一家の中で、オタクで落ちこぼれの自分が認められていないことにコンプレックスを感じているのだが……。

そんな中、空がバイトするおだやに、ガールフレンドの一人とデート中の光が偶然訪れる。ガチャガチャで当たったビー玉を何気なく空に渡す光。その帰り、光にもらったビー玉越しに見えるサカサマの景色は、空の目にいつもより綺麗に見える……。碧と空、二人を取り巻く人間関係が少しずつ動き始めていた……。

――番組サイトより


番組情報

日本テレビ系
『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』
毎週水曜よる10時〜

出演:菅野美穂 浜辺美波
岡田健史 福原遥 東啓介
中村雅俊 沢村一樹
有田哲平 川上洋平

番組サイト:https://www.ntv.co.jp/uchikare/


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami