
※本文にはネタバレがあります
奈未が無双過ぎる『ボス恋』4話
『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(以下ボス恋)(TBS系 毎週火曜よる10時〜)第4話はついに『MIYAVI』が発売になった。【前回レビュー】奈未と潤之介の素敵な画にキスマイの主題歌のみ クレジットを流さない好演出のエンディング
映えある創刊号には“ファッション・エキスパート・パートナー”として奈未(上白石萌音)の名もクレジットされた。出来上がった誌面は第3話と違い、ハイクラスデザインになっていた。
パリでも発売早々5万部、日本でも20万部売れた『MIYAVI』。出だし好調。ドラマの視聴率も好調で、4話にして最高視聴率を記録。視聴率アップの功労者はこのハイクラスの雑誌ではなく、別冊のほうの「恋」かと思う。やっぱり雨に濡れた子犬――潤之介(玉森裕太)の力であろう。
序盤の石橋の向こうで「くうーん」と鳴く子犬の潤之介、クライマックスの本当に雨に濡れてしゃがんだまま奈未を待っている潤之介。雨に濡れた子犬でサンドされた第4話。中の具の部分は……「俺、彼氏なんで」「俺の1番を2番にするとかありえないから」と言って、名作映画『卒業』のパロディみたいにパーティ会場から手を引っぱって走って逃げるエピソード。火曜の夜、ひとときの夢が広がった。
「俺、彼氏なんで」「俺の1番を2番にするとかありえないから」の場面すら、子犬妄想と同じく奈未の妄想かと思ってしまったが、そこは現実であった。
犬飼貴丈は爪跡を残せるか
『MIYAVI』が良いスタートを切り、仕事に目覚めた奈未がはりきっておしゃれして、ジミー・チュウのレセプションパーティーに参加すると、そこに第1話に出てきた初恋の幼馴染・ケンちゃんこと日置健也(犬飼貴丈)が来ていた。垢抜けた奈未を見た健也は、ふいに「付き合おうか」と言いだす。東京で出会った女性と婚約したばかりだというのに? と戸惑う奈未。
1話の失恋エピは、ケンちゃんのことが好きだった奈未が、彼から妹のようにしか見られていなかったことを思い知らされがっかり、独り相撲する奈未のウブさを描いたものかと思いきや、ケンちゃんは二股が平気なクズだったという意外な展開となる。
仕事で来ているパーティ会場でいきなり「付き合おう」「婚約者はなんとかなる」とか言いだす人になっているという、ケンちゃんに対してまったく容赦がない展開である。いまのところ、ケンちゃんは奈未と潤之介が接近するための役割しか与えられていない。そこにいかに爪跡を残せるか、それが俳優の生きる道。がんばれ、犬飼貴丈。
一方、玉森裕太は、奈未の素敵な恋愛の相手を申し分なく演じている。第3話の合コンの流れで、編集アシスタントの和泉遥(久保田紗友)と潤之介のカメラアシスタントの尾芦(ミキ亜生)がグランピングを企画。けっきょく尾芦が来ることができなくなって、代わりに潤之介がやって来る。そのとき、ニコニコ近づいてくる表情がやっぱり子犬。
グランビング中は、奈未がパーティのときに言った「ディスタンス」を守り続ける潤之介。
そこで「今度、一緒に星を見に行こう」と約束を交わすが、当日、奈未が待ち合わせ場所に2時間、現れなくても、雨が降ってきても待ち続けるのである。
玉森裕太は徹底的に“子犬”で居続けようとして見える。1話のころはもう少し主体性のある人物だったように見えたが、潤之介=子犬となったらいっさい疑問を感じさせず徹底している印象だ。
このまま奈未の素敵な忠犬でいたらドラマが終わってしまう。まあそういうイメージ映像をずっと観ていたい視聴者もいるとは思うけれど。もう少しストーリーも見たい。そこに現れるのは、2話でちらっと出てきた写真の女性――蓮見理緒(倉科カナ)。主人公とはいえ、奈未が無双過ぎるので、一回、がつんと超きれいな幼馴染の理緒にやられてほしいところ。
入社したばかりの奈未が自由すぎる
“ファッション・エキスパート・パートナー”とカッコよく書かれてはいても、しょせんは雑用係であるはずの奈未が、毎回、手柄をあげて、鬼編集長の麗子(菜々緒)に対してもリラックスして軽い口を利くようになっていく。
4話では、入社2カ月にして、『MIYAVI』の仕事を休んで仕事相手のジンコ(高岡早紀)の手伝いをするという、すごく自由な仕事の仕方。いろいろなアクシデントもありながら、結果的にうまくいき、ますます奈未は調子が上がっていく。まるで、恋も仕事もやりたいことをすべてやっていく朝ドラヒロインである。
奈未「うちの編集長は差し入れ、私が芋ようかんのほうがいいと言ったら、それを受け入れてくれました」
ジンコ「芋ようかんと同列に並べないでくれる?」
この会話とかもうポカンとなるけれど、上白石萌音の生真面目な演技によって奈未が懸命に見えてくるマジック。玉森裕太もすごいが、上白石萌音もすごいのだ。
雨のなか、待っていた潤之介の誠実さに、つい自分からキスしてしまう。唇を離してからの戸惑いが左右に泳ぐ瞳でわかる。そのとき玉森の瞳はまっすぐ揺らがない。揺れる奈未、力強い潤之介。これまで、飼い主と子犬だったふたりの関係が逆転する、その瞬間がすべてだった。
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●第5話あらすじ
雨の中、待ち合わせ場所でうずくまっていた潤之介 (玉森裕太) に思わずキスをした奈未 (上白石萌音) は、ずぶ濡れの潤之介を自分のアパートへ連れて帰ることに。しかし、潤之介が思いを寄せている幼馴染みの存在が気になってしまい……。
一方、編集部では音羽堂出版の社内報に載せる『MIYAVI』の紹介記事作成をどのスタッフに担当させるか、半田 (なだぎ武) が頭を悩ませていた。
さらに、奈未は遥に代わり、中沢 (間宮祥太朗) が担当する対談企画で使う、ヴァイオリニスト・蓮見理緒 (倉科カナ) のドレスを届けることに。社内報も、対談の段取りもこなして、麗子からの評価を上げようと奔走するのだが……。
――番組サイトより
番組情報
TBS系『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』
毎週火曜よる10時〜
出演:上白石萌音 菜々緒 玉森裕太
間宮祥太朗 久保田紗友 亜生(ミキ) 秋山ゆずき 太田夢莉
高橋メアリージュン なだぎ武 犬飼貴丈 橋爪淳 山之内すず
宮崎美子
高橋ひとみ
倉科カナ
ユースケ・サンタマリア
番組サイト:https://www.tbs.co.jp/BOSSKOI_tbs/
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami