上白石萌音『ボス恋』社会に出た奈未はやがて麗子のような「悪魔の微笑み」をたたえるキッツイ女になるのか
イラスト/ゆいざえもん

※本文にはネタバレがあります

奈未の奮闘と恋の行方描く『ボス恋』1話

『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(以下ボス恋)(TBS系 毎週火曜よる10時〜)第1話。ラブストーリーとしてもお仕事ものとしても楽しめた。視聴率は11.4%(ビデオリサーチ調べ / 関東地区)でまずまずの出だし。


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『恋はつづくよどこまでも』では佐藤健とのラブストーリーがキュンキュンもので大ヒットにつながった立役者のひとり、上白石萌音。『ボス恋』では、音羽堂出版に就職した鈴木奈未役として、カメラマンの潤之介(玉森裕太)とは恋、カリスマ編集長・宝来麗子(菜々緒)と仕事で向き合う。どちらとのやりとりも見どころがあった。

当初、筆者は勝手に潤之介と奈未の話かと思っていたら、1話を見た印象では、上司・麗子様に理不尽なまでにこきつかわれる奈未の奮闘が面白かった。よくよく考えてみたら、タイトルは「マイ・ボス」がメイン(本誌)で、恋は「別冊」なのだから当然か。

奈未は麗子のようなキッツイ女になるのか

地方(熊本)の中流家庭でのんびりと生まれ育ち、普通がいちばんと思っていた奈未が、なぜか新創刊の最先端モード誌「MIYAVI」編集部で働くことに。2カ月後に創刊し、30万部売る。
結果を出せという編集長を筆頭に、集まってきた編集者たちは皆、それぞれ野心を持っている。奈未だけ、たまたま配属になっただけで、何も考えていなかった。そのため、仕事にいまいち身が入らず、周囲からの評価も高くない。

3歳年上で先に東京に出てきた幼馴染の日置健也(犬飼貴丈)との結婚を夢見ていたら、彼は東京で別の女性と婚約を決めていた。寄る辺なき奈未。「フラれもしない」というセリフは良かった。
彼女は恋だったが、相手は彼女を恋の土俵にあげてもいなかった。単なる幼馴染としてのひとり相撲。

そんな奈未の前に現れたのが、カメラマンの潤之介。出版社の面接のとき、ドジをしてスカートをペンキで汚してしまった奈未に、22万円もの高価なセットアップをコーディネートしてくれた人物。コーディネートだけ。支払ったのは奈未。
ただ、最初は払おうとしたのを奈未がそんなに高いと思わず自腹で払うと止めたのだった。潤之介は潤之介で、えらい父の威光でしか仕事を認めてもらえないことに不満を抱えていた。

気晴らしに、潤之介は奈未をバイクに乗せて千葉の海に行く。夕暮れに染まった海に「海だー」「海ー」と首を左右に振りながら無邪気に駆けていく潤之介に、奈未は「自由だー」とあっけにとられる。恋愛ドラマの相手役は、ドS、ツンデレがテッパンかと思っていたが、潤之介はそっち系ではなく、癒やし系と言っていいかもしれない。

玉森裕太は『キスマイ超BUSAIKU!?』で白塗りして演じるTaMattネタがおもしろいが、ドラマでは、奈未をマイコ代わりにして、完璧にBUSAIKUじゃない恋を演じてくれるだろうか。


頭なでなではテッパン。それと、バイクに乗って、お腹に手を回させてギュッとするところ。ポケットから缶のおしるこを出すところも(いつ買ったんだろ)。あと、最初のセットアップ試着のときに、「これ気合入るから」と自分のしていたブレスレットをしてあげるとことか。毎回、こういうキュンシチュエーションが出てきそうだが、逆に超BUSAIKUな行いも見たいかも。

一方、菜々緒演じる麗子は、ただのおしゃれ番長ではない。
売上げを伸ばすためには、仕事先で土下座までする『半沢直樹』のようなド根性キャラであった。しかも、いくらでも口からでまかせが言えるタイプ。いまはのんびりしている奈未だが、やがて麗子のような「悪魔の微笑み」をたたえるキッツイ女になるのだろうか。

脚本家・田辺茂範が描くドジっ子ヒロイン

1話のラストでは、この潤之介と麗子の関係が明かされる。このまま、麗子に鍛えられ、潤之介に癒やされ……という感じだけでは回数が保たないだろうから、これからいろんなことが起こるであろう。副社長の宇賀神慎一(ユースケ・サンタマリア)やライバル誌の編集長・高橋麻美(高橋メアリージュン)、同僚編集者・中沢涼太(間宮祥太朗)なども気になる。

脚本は『トクサツガガガ』や『美食探偵 明智五郎』の田辺茂範なのでドジっ子ヒロインと彼女を取り巻く個性派たちを描くのは巧いはず。
ヒット映画『プラダを着た悪魔』を彷彿とさせるという視聴者の声も散見され、その構造を用いれば面白くなることは間違いない。

表紙撮影のためバラ園にやって来たトップモデルが冨永愛、フォトグラファーがレスリー・キーという豪華ゲストにはテンション上がった。ここはホンモノの一流感。冨永愛の、冬寒のロケで、撮影前から何もはおらず、鎖骨出しまくっている根性がすごい。ただ、撮影ギリギリまではなにかはおらせてあげようよ。それが編集スタッフの仕事だと思うよー。

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●第2話あらすじ
お見合話を断る口実として潤之介 (玉森裕太) の彼女役を引き受けた鈴木奈未 (上白石萌音) は、潤之介から「姉ちゃんに会って」と頼まれる。しかし、姉として紹介されたのはなんと鬼上司の宝来麗子 (菜々緒) だった。最悪の状況に焦った奈未はその場しのぎに麗子にいろんな嘘をついてしまい、より事態は複雑な状況に……。

翌日、『MIYAVI』の編集部では創刊号の企画会議が行われ、中沢涼太 (間宮祥太朗) が提案した漫画家とのコラボ企画が採用された。さらに麗子の発言で人気漫画家・荒染右京に依頼することが決定する。

何かを企んでいる様子の麗子は、前日についた“奈未の嘘”がきっかけで奈未に荒染との交渉の席につくよう命令。交渉の大役を押し付けられてしまった奈未は、潤之介にSOSを求め……。
――番組サイトより


番組情報

TBS系
『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』
毎週火曜よる10時〜

出演:上白石萌音 菜々緒 玉森裕太
間宮祥太朗 久保田紗友 亜生(ミキ) 秋山ゆずき 太田夢莉
高橋メアリージュン なだぎ武 犬飼貴丈 橋爪淳 山之内すず
宮崎美子
高橋ひとみ
倉科カナ
ユースケ・サンタマリア

番組サイト:https://www.tbs.co.jp/BOSSKOI_tbs/


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami