
今夜の金ローは佐藤健が最高に可愛い『るろうに剣心』
映画『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』の公開を記念して、今夜の『金曜ロードSHOW!』(日本テレビ)で『るろうに剣心』が放送される。過去に『るろうに剣心』について執筆した、ライター釣木文恵氏のレビューを改めてお届けする(2015年10月掲載時のまま再掲)。【関連レビュー】『るろうに剣心』大ヒット7つの理由 これはゆとり世代論である
1994年から1999年にかけて「週刊少年ジャンプ」に連載され、人気を博した和月伸宏『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』。
アクションが本気
「るろうに」とは、流浪人・放浪人を意味する造語。主人公の緋村剣心は凄腕の剣客だ。幕末期の彼の通り名は「人斬り抜刀斎」。しかし明治に入って人斬り稼業から足を洗う。決して人を殺さない「不殺(ころさず)」の誓いを立てて、ひっそりと全国を流浪していたのだ。第1作では、剣心が人斬りを辞めた後に登場したニセ抜刀斎との戦い、中毒性の高い新型アヘンに関わる騒動に巻き込まれる姿を描く。まず、映画開始7分にこの作品の本気が詰まっている。彩度のない画面のなか、鳥羽・伏見の戦いで斬って斬って斬りまくる抜刀斎の姿、リアルな血しぶき。この冒頭シーンで抜刀斎がいかに心なく多くの人を斬ってきたのかが伝わってくる。
そう、今作の大きなポイントは、アクションだ。アクション監督を務めたのは谷垣健治。
決して殺さぬまま敵を倒していく剣心が、宙空を軽やかに一回転する跳躍の美しさ。敵の屋敷を走り抜けるその凄まじい速さ。
谷垣は「アクション部複数人で一人の役者を追い込み、足りない部分を気づかせる」スタイルの指導をしていたという。佐藤はそれに見事に応えた。かつて『龍馬伝』で岡田以蔵を演じた際、死ぬシーンを演じるために自分自身を限界まで追い詰めた。『天皇の料理番』では毎日延々じゃがいもをむき続けた。もともと努力の人である。
さらに、いくつもの派手なアクションシーンの先にある、ニセ抜刀斎こと鵜堂刃衛(吉川晃司)と対峙するクライマックス。
とにかく健・剣心が可愛い
もうひとつ、なんといっても佐藤健の可愛さ。マンガでしか成立し得ないと思われた「~でござるよ」「おろろ」といった口調が違和感なく入ってくる。武井咲演じる神谷活心流師範・神谷薫とのシーンも可愛い。剣心がクライマックスで初めて怒りを見せるときの振り幅としても、この可愛さは効いてくる。剣心のトレードマークである赤い着物を着るシーンも丁寧に描かれる。薫が父から受け継いだ剣術の流派「神谷活心流」。抜刀斎騒動で思わぬ汚名を着せられているが、その信念は「剣は人を殺すための道具にあらず」というもの。人を生かす剣を理想とする彼女の志は、剣心の心を動かす。
彼女の道場を救い、居候として一緒に住むことになった剣心に「着替えが必要でしょ。父は大柄だったから、あなたに合うものが若い頃のしかなくて……。色が派手すぎる?」というセリフとともに薫が渡す赤い着物。人目を避けて地味に暮らしているはずの剣心が赤い着物を着る過程が、じつに自然に描かれている。実写化に対して隅々まで心を配っている象徴のようなシーンだ。
コミカルさの絶妙な配分
蒼井優演じる高荷恵にアヘンを作らせる悪徳商人・武田観柳役は香川照之。金儲けのためには人がどうなろうと構わず、邪魔な人間はどんどん殺していく残虐な男。しかしどこかコミカルさが漂う。豪奢な館に暮らし、明治期のインテリを戯画化したような風貌、似たような顔つきの取り巻きを従えて行動する様子。笑いながらマシンガンのような兵器をぶっ放す姿。どれも狂気が行き過ぎて笑いに転換する瞬間がある。コミカルさの配分もまた、この映画のキモである。剣心の仲間・相楽左之助(青木崇高)と観柳の戌亥番神(須藤元気)の戦闘シーン。白熱した戦いの合間に、「腹減らねえか」と肉に食らいつき、酒を飲む。シリアスな戦いに挿入される笑いは、物語の奥行きとキャラクターの魅力を生む。
原作ファンも、佐藤健ファンも、宝塚ファンもきっと楽しめる映画『るろうに剣心』第一作は今夜!
(釣木文恵)
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