
※本文にはネタバレがあります
とわ子とかごめの馴れ初め『大豆田とわ子と三人の元夫』第4話
三人の元夫が魅力的すぎる『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系 火曜よる9時〜)。第4話はとわ子(松たか子)の30年来の親友・綿来かごめ(市川実日子)が中心になり、意外な事実が明るみになる。“何もしなくても自動的にモテる”田中八作(松田龍平)も関わってきて……。【前話レビュー】松たか子の圧倒的な魔性をも凌駕する東京03角田の鍛錬された笑いの強さ
とわ子とかごめは10歳のときに出会った。信号のない横断歩道を渡れないかごめの手を握り、片方の手を挙げて横断歩道をとわ子が渡ったことから付き合いがはじまり、空野みじんこという合作ペンネームで漫画家を目指したり、海外旅行で誘拐されたりなど波乱万丈。
かごめは社会人になると転職を繰り返し、隣家の赤ん坊を誘拐したこともある(これは坂元作品『Mother』のパロディではとSNSで話題になった)など落ち着かない生活を過ごしているが、ある時、とわ子のマンションに住むオーケストラ指揮者・五條(浜田信也)と発芽(恋のたとえ)しそうになったにもかかわらず、食事の約束をすっぽかす。
かごめのいとこの登場により、彼女が実家の資産3億(おばあちゃんの遺産)を寄付してしまったのだと知るとわ子。おばあちゃんの遺産が3億もあったとは思えない、かごめは質素なアパートに住んでいる。広くておしゃれな高級マンションに住むとわ子とかごめは生活環境にこんなにも格差があっても付き合えていて、そこが麗しい。そして、遺産3億もあるような家の子であった認識をとわ子にはしてほしくないとかごめは思ってきたところも匂わせる。
恋愛をしたくない人
かごめの生き方はいわゆる一般的なものとされているものから外れているようである。「私にはルールがわからないの」「みんなが当たり前にできていることができない」「私から見たら全員山だよ」とかごめは思っている。その当たり前のなかに恋愛もあった。かごめは恋愛をしたくない。それだと寂しいこともわかっているが「ただただ、それが私なんだよ」と言う。そんなかごめに、とわ子は「そう」とだけ答える。何かと反発しケンカするふたりだけれど、肝心なところは「そう」とだけ聞いてくれるとわ子が、かごめには楽なのではないだろうか。知らんけど。
世の中には、恋愛をしたくない人もいる。ドラマではよく恋愛がしたくてもできない人物が描かれる。恋愛下手とか臆病な人が。たいていその人達が乗り越えて、恋愛する様子が物語になる。
坂元裕二は恋愛ドラマの旗手と言われる作家である。彼の真骨頂は恋愛の末、訪れる別れの切なさだ。最新作『花束みたいな恋をした』然り。彼がブレイクしたきっかけである『東京ラブストーリー』然り。人気作『カルテット』では恋愛感情も伴いながら、疑似家族的に共同生活を行う4人の物語を描いていた。
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坂元の作ではないが、リメイクされた『東京ラブストーリー』のヒロイン・赤名リカを演じた石橋静河は、『大豆田〜』では八作の親友・俊朗(岡田義徳)の恋人なのに、八作に惹かれ猛然と追いかけ続ける早良役を演じている。思わせぶりに描いていたので八作もその気なのかと思いきや、そうではなかった。
八作は早良のアタックをかわそうとする。「女性から嫌われる??どうやって?」と嫌われそうな言動を試すが、早良には効かない。明らかに付け焼き刃なのでバレバレなのだ。
囲碁をやりながら早良に根掘り葉掘り質問され、「モテたい人にモテなきゃ意味ないですよ」と答える八作。過去、モテたい相手がいたが、相手にされなかったことも明かす。そのあと、とわ子と結婚したのであった。
複雑な思いを抱える八作に早良は「一生負け続けてくれる人が最高の恋人だもの」「私はね、勝って恋に落とすタイプ」とあくまで堂々とやる気満々であるが、八作はやがて俊朗に彼女のことを「やっすい女」と侮蔑が籠もったように言うことになる。誰にもあまり感情を見せず、なんとなく優しげな八作が、珍しく感情をあらわにした場面になった。
手をつなぐとわ子とかごめ
虫のように淡々としている彼が唯一、他者に対して柔らかい感情を出す相手が、かごめだった。街でばったり会ったとき、かごめの動きに合わせて頭を横にかしげる八作。この仕草にはあたたかみや可愛げがあり、そのポーズの元であるかごめへの特別な感情が漂うように感じる。かごめからもらったコロッケを食べていた八作に「最後の晩餐?」と聞くとわ子。かごめが最後の晩餐に食べたいものがコロッケだったことを覚えていたからで、とわ子とかごめはそんな話を交わすほど仲がいい。
かごめがとわ子のことを、「友達じゃなくて家族」「お父さんでお母さんできょうだい」「お爺ちゃんでお婆ちゃんで伯父で叔母で」と考えて、「だから甘えてしまう」のだと知っている八作。「そこまで大家族を背負わされたら負担が大きい」ととわ子。そう言いながら、とわ子はかごめを大事にしている。

八作からかごめに会ったことを聞いてかごめを捜し出すとわ子。小さなキャリーケースを抱えたかごめの手を握り、もう片方の手をあげて横断歩道を渡る。30年前のように。
少女時代と今、同じように手をつなぎ横断歩道を渡るふたりの女性。この画が第4話のすべてであるように感じる。
早良がひたすらやばい
とわ子や八作には闇がありそうと思いきや、そうでもなく、ただふたりはかごめを思いやっているような気もする。その代わり早良がひたすらやばい。中村慎森(岡田将生)と佐藤鹿太郎(角田晃広)に関わる翼(石橋菜津美)や古木美怜(瀧内公美)もなんだか闇深そう。じつは3人と結婚して離婚したとわ子には一切の闇がなく、気楽に付き合える人なのかと筆者は思いはじめている。でも早計かもしれない。ゆっくりじっくり味わっていきたい。【関連レビュー】『大豆田とわ子と三人の元夫』第1話 幸せになることを諦めない松たか子演じるバツ3女のちょっと笑える日常と心情
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※第5話のレビューを更新しましたら、エキレビ!のツイッターにてお知らせします
●第5話あらすじ
とわ子(松たか子)の誕生日が近づくある日、唄(豊嶋花)が開業医の息子である彼氏と18歳になったら結婚することを宣言し、とわ子を困惑させる。後日、かごめ(市川実日子)に相談してみたものの、いつしか話題は八作(松田龍平)との離婚のことに。「わたしも意地張ってたし、若さ故だね」と当時を振り返りながら、とわ子が語った離婚の原因とは?
しろくまハウジングでは、話題のイベント会社からアートイベントの仕事が舞い込み、普段の住宅設計とはひと味違う華やかな仕事に社内は盛り上がりを見せていた。先方の社長・門谷(谷中敦)は、とわ子と同じ“バツ3”ということで、互いの離婚歴や結婚観で意気投合する。
その晩、唄からそのことを聞いた八作、鹿太郎(角田晃広)、慎森(岡田将生)は、3人そろってとわ子のマンションへ。四度目の結婚を阻止すべく、珍しくタッグを組んで必死の説得を試みる鹿太郎と慎森を横目に、八作はとわ子にあるプレゼントを差し出す。
ところが後日、このプレゼントがきっかけで、とわ子は八作が心に秘めていた思いを知ることになり……。
番組情報
カンテレ・フジテレビ系『大豆田とわ子と三人の元夫』
毎週火曜よる9時〜
▼第1話〜最新話まで全話配信中

出演:松たか子(プロフィール) 岡田将生(プロフィール)
角田晃広(プロフィール) 松田龍平(プロフィール) 市川実日子(プロフィール)
高橋メアリージュン(プロフィール) 弓削智久(プロフィール) 平埜生成(プロフィール) 穂志もえか(プロフィール) 楽駆(プロフィール) 豊嶋花(プロフィール) 石橋静河(プロフィール) 石橋菜津美(プロフィール) 瀧内公美(プロフィール) 近藤芳正(プロフィール) 岩松了(プロフィール) 伊藤沙莉(プロフィール)
脚本:坂元裕二
音楽:坂東祐大
演出:中江和仁 池田千尋 瀧悠輔
プロデュース:佐野亜裕美
制作協力:カズモ
制作著作:カンテレ
番組サイト:https://www.ktv.jp/mameo/
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami