『おかえりモネ』第2週「いのちを守る仕事です」

第10回〈5月28日(金)放送 作:安達奈緒子、演出:一木正恵〉

『おかえりモネ』言うよね〜 菅波(坂口健太郎)が山から戻ったモネの痛いところを突きまくる辛口展開
イラスト/AYAMI
※本文にネタバレを含みます
林間学校中に雷雨に見舞われたモネ(清原果耶)福本圭輔(阿久津慶人)。気象予報士・朝岡(西島秀俊)と医師・菅波(坂口健太郎)にスマホを通して助けられ難を逃れる。その夜、朝岡から電話がかかってきてその会話からモネは、気象予報士の仕事に興味を持つ。
やりたいことがみつからないともやもやしていたモネがなにかをみつけた、明るい光の差す瞬間――。

【関連レビュー】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第8回掲載中)

お父さんの笛

避難小屋で風雨をしのいでいたら、菅波が電話してきて、圭輔が低体温症になっていないか確認。穏やかに寝ているのかと思ったら大変なことになっていた。

あわててモネは菅波に教わった手当をして圭輔の生命を救う。その時、役に立ったのは父・耕治(内野聖陽)の作った笛だった。甲高い音がして、意識を失いかけた圭輔の目を覚ます。

意識が回復した圭輔にふざけて笛を吹くモネに「のんきだねえ、もしかしたら本当に危なかったんだよ?」というナレーション(竹下景子)がかぶる。祖母が孫を心配する気持ちとほっとした感じがあたたかい。

サヤカは森林組合の代表みたいな人だった

森林組合には林間学校に参加した生徒たちの保護者たちが心配して詰めかけていた。へたしたら、厳しい突き上げが起こりそうなところだが、穏やかな空気。それは大きな被害がなかったから。

サヤカ(夏木マリ)はその幸運に甘えず反省を述べる。今は退いているが、代表みたいなものですと自己紹介するサヤカ。診療所とカフェも併設した施設であるということは森林組合自体、民間組織のようだ。
民間でこれだけ設備の整った公共施設を作るとは、サヤカは財力的にも心意気的にも凄い人物である。

ただ、人の生命に関わるようなことがある場合、責任をとるのは民間では負担が大きいのではないだろうかとも思うが、国だったら安心かといったらそうでもないといまの日本を見ていると思うわけで。『モネ』では「公助」に頼らない「共助」の力が希望に見える。

クール過ぎる菅波

圭輔を迎えに来たお父さんに感謝されるモネ。ふつーなら、モネ、お手柄!となりそうなところだが、菅波がやって来て、「“あなたのおかげで助かりました”っていうあの言葉は麻薬です」と水を差す。

知り合いの気象予報士と医者に助けられただけで、モネは何もしていないと菅波が指摘する辛口展開。菅波もちょっと言葉数が多すぎる。一言ならともかく、そのあと、「ちゃんとプロになってください」とか「(正式採用になっても)それでまだ何か見つけたいとか、ここの人たちに失礼です」とか、「そもそも何も見つかってないのに父親に啖呵切るとか僕にはできない、甘えてますよ」とか畳み掛け過ぎ。

モネは強い子だが、中には泣いちゃう子だっていると思う。モネも雷雨のなか、少年を背負って山を移動するような重労働をしてきたのだから、何もやってないわけじゃない。甘やかすことはないが、労ってあげてー。

『おかえりモネ』言うよね〜 菅波(坂口健太郎)が山から戻ったモネの痛いところを突きまくる辛口展開
写真提供/NHK


『おかえりモネ』言うよね〜 菅波(坂口健太郎)が山から戻ったモネの痛いところを突きまくる辛口展開
写真提供/NHK

とはいえ、菅波の空気を読まずに余計なことを言い過ぎるキャラは面白い。挨拶が苦手と言いながらモネが父親に啖呵切ってるところまでじっと見ていたのか……とか、「僕にはできない」とか自分の話にもっていくなーとか、ツッコミどころ満載な、なかなかいいキャラクターである。


何かを見つけるモネ

疲れながら森の勉強に励むモネに、朝岡から電話がかかってきた。今日の天気を検証したいからと詳しいことを知ろうとする朝岡。モネから状況を聞いて、「やはり問題は雨量か……」「こりゃ難しいな」などとぶつぶつひとりごとを言う。それだけ真剣なのだ。自分の世界に入ってしまうところが菅波とキャラが若干かぶっている。

モネは朝岡から「全部空と水でつながっていて」と聞く。「山」は「水」を介して「空」と繋がっていて、海もまた同じ。その言葉がモネの心に澄んだ鈴のような音を響かせる。

翌日、モネは書店で気象予報士試験の本を開いてみる。合格率は約5%の超難関の文字に一度は怯んだものの、「気象予報士は、命を守る仕事です」の一文を見つけ、心が軽やかな音を奏で始めた。

雷雨から子どもを救ったのも、知り合いの医者と気象予報士のおかげなのだったモネだが、何かを見つけたのも、知り合いの医者と気象予報士のおかげなのであった。医者・菅波に「(森林組合に正式採用になっても)それでまだ何か見つけたいとか ここの人たちに失礼です」ときつく言われたあと、朝岡に気象予報士の仕事は面白いと語られ、自分のやりたいことを発見するのだから。いやでも、それでもいい。
自分ひとりでは動けないことが誰かの影響で動き出すことはけっして悪いことではない。モネ、がんばれ。



※『おかえりモネ』第11回のレビューを更新しましたら、Twitterでお知らせします

番組情報

連続テレビ小説『おかえりモネ

2021年5月17日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら

:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami
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