『モータルコンバット』頭部損壊!首ごと脊髄を引っこ抜く!残虐ファイトと忍者の存在感にステータス全振り
(C)2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

ニンジャが火を噴いて暴れまわり、頭にかぶった傘が人間を粉砕する……。キテレツな暴力とガバガバなストーリーが全編を覆う映画『モータルコンバット』
しかしその実、これは非常に真面目な映画である。

残虐格ゲー『モータルコンバット』久々の映画化

映画の元ネタとなっているのは、1992年から近年に至るまでシリーズが発売され続け、欧米で大きな人気を持つ同名の格闘ゲーム『モータルコンバット』である。このゲームの特徴として知られるのが、その残虐さだ。

このゲームでは、グロッキー状態になった相手にトドメを刺す「フェイタリティ」という必殺技が各キャラクターごとに設定されているのだが、この内容が相当にハード。頭部損壊に流血は当たり前、焼き殺して骨だけにしたり、首ごと脊髄を引っこ抜いたりとやりたい放題。

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初代『モータルコンバット』は当時のゲームとしては実写っぽいグラフィックも特徴であり、写実的なキャラクターがエグい殺人ムーブをキメるというポイントは、このゲームの大きな特徴となった。ついでに言えば、忍者や東洋武術をモチーフとしたキャラが複数登場することも特徴である。

今回の映画版(『モータルコンバット』は過去に2度映画化されているが、今回の映画はそれらとは特に関係ない)は、この「とにかく残虐」「ニンジャが出てくる」という特徴に極めて忠実に寄り添った作品だ。主人公コールのみは映画オリジナルキャラクターだが、ライデンやジャックス、リュウ・カン、クン・ラオ、そしてサブ・ゼロやスコーピオンといったおなじみのみなさんがゾロゾロ登場することからも、その真面目さが伺える。

『モータルコンバット』頭部損壊!首ごと脊髄を引っこ抜く!残虐ファイトと忍者の存在感にステータス全振り
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主人公コールは、生まれた時から胸にドラゴンのアザを持つ地下格闘家。彼は家族と一緒にいるところを謎のニンジャ風暗殺者サブ・ゼロに襲撃される。危険を感じたコールは元兵士のジャックスとブレイドに助けられ、自分が太古より繰り広げられてきた魔界と人類との格闘トーナメント「モータルコンバット」に巻き込まれていることを知る。ブレイドたちとともに人類サイドの守護者ライデンの寺院を訪れたコールは、人類側の代表として厳しい修行を課せられることになる。


映画は1600年代の日本から始まり、冒頭でいきなり忍者の真田広之が出てくるのだが、その役名が「ハサシ・ハンゾウ」。この時点でこれがどういう映画か一発でわかる、素晴らしいオープニングである。以降、唐突に出てくる魔界(マジでいきなり「魔界」って字幕が出てくるのが見どころだ)、アメリカの路上や他人の家のドアの前にいきなり出現するサブ・ゼロ、常に目が発光している浅野忠信(ライデン)と、ガバガバ映像のつるべ打ち。「そうそう、こういうのでいいんだよ!」と唸ってしまうこと請け合いである。

『モータルコンバット』頭部損壊!首ごと脊髄を引っこ抜く!残虐ファイトと忍者の存在感にステータス全振り
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「このゲームを映画にすること」に向き合った真面目な作品

という感じで細部は全てガバガバなのだが、なんせこれは『モータルコンバット』、みんなが期待していた残虐要素は大名舟盛りの大盤振る舞いである。「人類チームVS魔界チームの殺人バトルトーナメント」という山田風太郎の忍法小説のようなストーリーなので、各キャラクターは自分の固有の武器や技で相手と戦うのだが、その際には必ず相手が生き返ってこないよう完全にトドメを刺さねばならない。

そんなわけで、頭から真っ二つにされたり体の芯まで焼かれたり腕を凍結された上で粉砕されたりと、大事なフェイタリティ要素は映画でもパンパンに詰め込まれている。劇中でキャラクターは誰一人としてまともに死なず、いかにめちゃくちゃな死にっぷりを見せるかという点に製作陣が全精力を傾けたことが伝わってくる。こうでなくっちゃいけねえよな!

『モータルコンバット』頭部損壊!首ごと脊髄を引っこ抜く!残虐ファイトと忍者の存在感にステータス全振り
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また、細部はガバガバながらアクションシーンになると雰囲気がピリッとするのも嬉しいポイント。特に登場場面は限られているものの真田広之は素晴らしく、忍者の頭領ならではの殺陣と復讐鬼らしいギラつきを見せてくれる。特にスコーピオンのフードと面頬をつけた真田広之は正直、主人公のコールよりも存在感があり、出てきただけで主役を食いまくっていたのが印象的だった。

という感じで『モータルコンバット』は、ストーリーはガバガバで細かいところも変なのだが、残虐ファイトとニンジャの存在感だけにはステータスを全振りした作品となっている。普通の映画でやったら怒られるバランス感覚なのは間違いない。
だがこれは普通の映画ではなく、映画らしくある以前に『モータルコンバット』らしくあることを優先した作品なのだ。

『モータルコンバット』頭部損壊!首ごと脊髄を引っこ抜く!残虐ファイトと忍者の存在感にステータス全振り
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『モータルコンバット』頭部損壊!首ごと脊髄を引っこ抜く!残虐ファイトと忍者の存在感にステータス全振り
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ここにこの映画の真面目さが浮き出しているように思う。おそらく製作陣は「『モータルコンバット』と書いてある映画を自分からすすんで観に来るような人間が見たがるものは、一体なんだろうか」と頭をひねって精一杯考え、そして「残虐ファイトとキテレツな東洋武術とニンジャだ」という結論に辿り着いたはずだ。なんと真面目で清々しい結論だろうか。『モータルコンバット』の歪さは、客に対するサービスなのである。

『モータルコンバット』頭部損壊!首ごと脊髄を引っこ抜く!残虐ファイトと忍者の存在感にステータス全振り
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世の中は四角四面なフリをして、その実、理屈の通らないことが多い。仕事をしていれば、不条理な目にあうことも一度や二度ではないだろう。しかし『モータルコンバット』は完全にその逆だ。一見めちゃくちゃにとっ散らかっているように見えて、実際には「顧客が何を求めているか」に誠実かつ真面目に向き合い、その結果としてニンジャが火を噴き氷の刃が人体を破壊することになったのである。ここまで筋の通った美しい仕事は、なかなか見られるものではない。不条理な日常にゲンナリしている現代人にこそ、「Finish him!」と盛り上がってほしい作品なのである。
(しげる)

作品概要

『モータルコンバット』
絶賛上映中

『モータルコンバット』頭部損壊!首ごと脊髄を引っこ抜く!残虐ファイトと忍者の存在感にステータス全振り

出演:ルイス・タン、真田広之、浅野忠信、ジョー・タスリム
監督:サイモン・マッコイド
製作:ジェームズ・ワン、トッド・ガーナー、サイモン・マッコイド、E・ベネット・ウォルシュ
原題:Mortal Kombat
レイティング:R15+
配給:ワーナー・ブラザース映画

公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/mortalkombat-movie/

Story



情け容赦ない無慈悲な物語。


胸にドラゴンの形をしたアザを持つ総合格闘技の選手のコール・ヤングは自らの生い立ちを知らぬままお金のために戦う日々を送っていたが、ある日、魔界の皇帝シャン・ツンがコールを倒すために放った最強の刺客であるサブ・ゼロに命を狙われる。

コールは家族の安全が脅かされることを恐れ、特殊部隊少佐ジャックスに言われるがまま同じく特殊部隊所属のソニア・ブレイドという女性戦士と合流し、地球の守護者であるライデンの寺院を訪れる。そこで太古より繰り広げられてきた世界の命運を懸けた格闘トーナメント“モータルコンバット”の存在と、自らが魔界の敵たちと戦うために選ばれた戦士であることを知る。


コールは新たな仲間たちとともに、自らの秘められた力を解放し、家族、そして世界を救うことが出来るのか?

(C)2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved


Writer

しげる


ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

関連サイト
@gerusea
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