『プロミス・シンデレラ』がぜん成吾(岩田剛典)の魅力が出てきた第5話。いよいよ面白くなってきた
イラスト/ゆいざえもん

※本文にはネタバレがあります

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成吾の魅力がクローズアップされた『プロミス・シンデレラ』第5話

壱成(眞栄田郷敦)の和装が端正だった『プロミス・シンデレラ』(TBS系 火曜よる10時〜)第4話から一転、壱成の兄で老舗旅館かたおかの若旦那・成吾(岩田剛典)の魅力がクローズアップされた第5回。いよいよ成吾と壱成の力関係が互角になり、その間で揺れる早梅(二階堂ふみ)という恋愛ドラマの黄金パターンはドラマの強度を上げる。視聴率が若干上がったのもこのせいか。


【前話レビュー】『プロミス・シンデレラ』和装・郷敦の清々しさと絵に描いたような主人公いびり 美醜の差激しい第4話

これまで線が細すぎていまひとつ印象が弱かった成吾だったが、線の細さが優しさに転じて、意地悪ばかりする考え方が幼い壱成よりも思慮深そうな成吾のほうが良く見えてくる。早梅に絡む客に対して決してことを荒立てず早梅をかばう紳士な仕草で株は急上昇。

旅館の仲居たちも成吾派と壱成派に勢力が二分するが、けっきょくはどちらとも近い関係にある早梅は嫉妬されるばかり。早梅がショートカットで服も女性性を強調しないシンプルなもので、男性に媚びたり甘えたりした印象が皆無なところがいい。そこが典型的な少女漫画とは若干違うところである。

早梅はついに成吾と食事をすることになる。10年ぶりの旧交を温めるデート場所は成吾が案内した高級レストラン。壱成は茶房のマスター黒瀬(金子ノブアキ)を伴って張り込む。昔の思い出を語り合いながら食事を楽しむ、良い感じの兄と早梅に嫉妬心を止めることができず、公衆の面前で大騒ぎする。そこがことを荒立てない兄とはえらい違いであり、その違いが魅力でもあって……。落ち着いて守ってくれる大人の優雅さと、危ういところが刺激的な年下のかわいさとの間で揺れる早梅(そして視聴者)。

ただし、食事しながら10年前の回想をしているのを見ると、早梅と成吾が結ばれるしかないような気がしてしまう。
壱成には入り込む隙間はないような……。

早梅と成吾の制服シーンに一言

10年前、まだ高校生だった早梅と成吾。早梅はふたり暮らしの父に保護者の義務を果たしてもらえず、金銭的にも心理的にも辛い想いを味わっていた。そこに手を差し伸べてくれたのが成吾。ふたりは川べりで語らうことが癒やし。10年経過して明かされるのは、そのとき頼りになった成吾も母が亡くなったばかりで心が折れそうになっていたことだった。まだかよわい十代のふたりが必死で悲しみを補い合っていたのである。


この切なく純粋な青春物語を数分の回想ではなく、本筋として見たい気さえする。だがしかし、ウルトラマンの3分ルールではないけれど、十分大人の二階堂ふみと岩田剛典ではセピアな画面でなんとかふわっとさせない限り、真面目な本編としてやるのにはやっぱり無理がありそうだ。



パート2の制作が発表された二階堂ふみがGACKTとダブル主演した映画『翔んで埼玉』のような徹底したコメディでの制服シーンならともかく、真面目な制服シーンはなあ……。余計なお世話だが、もうちょっと飛躍させたほうがいいのではないか。二階堂も岩田もよくやれているほうだとは思うが、名優であればあるほどリアリティーや違和感の見極めはシビアーで、拭えない違和感をリアルな演技であるかのように押し切る俳優は滅多にいない。なんらかのフォローを入れて痛さを笑いに転じるものなのだ。


ここでそこに協力できそうな演技巧者としては金子や執事役の高橋克実がいるわけだが、回想シーンには手出しできないのが惜しい。ただ、手練感ありありの制服姿の二階堂に比べて、岩田は高校生役のほうがチャームポイントの忠犬のような黒目がちな瞳がハマって見えるところは興味深かった。おそらく第5話でがぜん成吾の魅力が出てきたように感じるのは、落ち着いて上品な老舗旅館の若旦那のほうが彼にとって遠い役柄だからであろう。

『プロミス・シンデレラ』がぜん成吾(岩田剛典)の魅力が出てきた第5話。いよいよ面白くなってきた
『プロミス・シンデレラ』第6話は8月17日(火)よる10時

驚くべき展開ある?

さて。早梅と成吾の間に入っていけない圧倒的な敗北感を味わった壱成はイライラを募らせて、早梅に出ていくことで借金をチャラにすると宣告する。早梅は壱成の意地悪が寂しさの裏返しだということがわかるから無下にできないものの、とりつくしまがないものだから家を出ることにする。

なんだか、壱成といい、菊乃(松井玲奈)といい、実は10年前に期せずして離れ離れになってしまった早梅と成吾を結びつけようとしているような気もしないでない。壱成ははからずもそうなってしまっている印象だが、菊乃の場合、悪巧みをしているようで実は親切なのでは? という気が……。

そこがこのドラマの奇妙なところで、単に登場人物をうまく機能させることができていないだけなのか、それともあとで驚くべき展開が用意されているのか意図が読めない。わからないほうが面白いので、そこは原作を読まずにドラマの成り行きを楽しみたい。
(木俣冬)

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番組情報

TBS
火曜ドラマ『プロミス・シンデレラ』
毎週火曜よる10時〜

出演:二階堂ふみ
眞栄田郷敦 松井玲奈 井之脇 海 松村沙友理 堺 小春 
高橋克実
友近 森カンナ 金子ノブアキ
三田佳子(特別出演)
岩田剛典

原作:橘オレコ「プロミス・シンデレラ」(小学館「マンガワン」連載中)
脚本:古家和尚
音楽:やまだ豊
主題歌:LiSA「HADASHi NO STEP」(SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.)
演出:村上正典(共同テレビ) 都築淳一(共同テレビ) 北坊信一(共同テレビ)
プロデューサー:橋本芙美(共同テレビ) 久松大地(共同テレビ)

制作著作:共同テレビ TBS

番組サイト:https://www.tbs.co.jp/promise_cinderella_tbs/


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami
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