『おかえりモネ』第13週「風を切って進め」
第65回〈8月13日(金)放送 作:安達奈緒子、演出:桑野智宏〉
![『おかえりモネ』第65回 “人間力”でオリンピック強化指定選手に選ばれた鮫島に学ぶこと](http://imgc.eximg.jp/i=https%253A%252F%252Fs.eximg.jp%252Fexnews%252Ffeed%252FExcite_review%252Freviewmov%252F2021%252FE1628816553612_00ec_1.jpg,quality=70,type=jpg)
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車いすマラソンのランナー・鮫島(菅原小春)が向かい風をぶっち切ってオリンピック強化指定選手に選ばれた。
【レビュー一覧】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第65回掲載中)
百音(清原果耶)をはじめとしたチーム鮫島は喜びで盛り上がる。そんな時、菅波(坂口健太郎)は百音に、かつて「あなたのおかげで」と言われた話の全貌を語る。
人間力でしょう
内田「最後は根性なんですか?」朝岡「合理的な手は尽くした上でね、それは根性というよりは人間力でしょう」
鮫島の後半の追い上げを見ながら語る内田(清水尋也)と朝岡(西島秀俊)。第65回の核はここであろう。手を尽くした上であとは成り行きに任せる。つまり鮫島は元から「感覚」だけでやっていたわけではなくて、さんざん練習を積み重ねたうえで感覚にまかせていた。でももっと事前の準備の精度を求めて、スポーツ気象を取り入れることにした。
風が吹くと予想を聞き、あらかじめ強風で走るときの体制を作って臨んでいた鮫島。
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準備できることは準備しておくことの大事さ。これはスポーツに限らずどんなことにも当てはまる。例えば、「死守せよ、だが軽やかに手放せ」。以前、米津玄師が「昔のひとが言った」言葉としてツイートして注目されたことがある言葉である。
「昔のひと」とは世界的演出家・ピーター・ブルック(1925年、イギリス生まれ)である(昔の人といってもご存命である)。この言葉を印象的な言葉として挙げる演劇人は少なくない。この言葉には解釈はいろいろあるが、稽古に稽古を重ね、セリフや段取りを完璧にしたうえで本番では全部手放して感じたままやる。準備の積み重ねは必ず生きるから。……そういうものと捉えることができる。
これは“気象予報”にも当てはまる。あらかじめ天候を予想することで危険に対処する方法を考えることができる(かもしれない)。何もしないよりも事前に準備をしておけば、あとは人間力で突破するしかない。来るかもしれない天災がどんなに巨大なものでも諦めず準備しておく。
「神風なんてないんです」と言う朝岡の言葉は、人間が神という未知なる力を乗り越えようとする強い意思なのである。
![『おかえりモネ』第65回 “人間力”でオリンピック強化指定選手に選ばれた鮫島に学ぶこと](http://imgc.eximg.jp/i=https%253A%252F%252Fs.eximg.jp%252Fexnews%252Ffeed%252FExcite_review%252Freviewmov%252F2021%252FE1628816553612_4e08_3.jpg,quality=70,type=jpg)
菅波の長台詞
徹底して準備して頑張っても間違えることはある。菅波はその経験をしていた。コインランドリーで洗濯ものがぐるぐると撹拌する画越しに菅波と百音がアイスを食べている。アイスクリームを食べながら語るふたりは、まるで縁側で語らう夫婦のような雰囲気を漂わせている。その気やすさが菅波の昔語りを誘発するかのようで――。
「あなたのおかげで助かりました」と患者に喜ばれたのもつかの間、患者の命は救えたものの、菅波の判断はその後の人生を大きく変えてしまった。そんな苦い経験を菅波は長らく引きずっていた。
菅波は過去の経験を百音にようやく語り、百音は黙って菅波の背中をさする。
コインランドリーという場所は象徴的である。宇宙のように繰り返していく営みの中、洗濯物の汚れが落ちていくように菅波の心にこびりついていたものが剥がれていく。百音の手の清らかさは水のようだ。
(木俣冬)
番組情報
連続テレビ小説『おかえりモネ』
2021年5月17日(月)~<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら
作:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami