
のんが企画・脚本・監督・主演を務めた映画「Ribbon」が2月25日に公開される。未来を奪われた美大生が再生していく様子を描いた今作を、まずは美大生に観てもらいたいと、東京藝術大学の学生に向けたイベントが『【伊東順二特任教授 社会基盤としての芸術 特別講座】のん監督・主演 映画「Ribbon」藝大生限定試写会&トークイベント』と題して開催された。
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学生60人の前に登場したのん。まずは「Ribbon」を作った経緯に触れながら挨拶を行った。
それから自粛期間に入って、どんどん芸術やエンタメが不要不急なものとされていくのがすごく悔しくて、こうしちゃいられないと脚本を書き始めました。おうち時間をなんとなくやり過ごせた人も、やり過ごせなかった方もいると思うんですけど、私は悔しさとかモヤモヤが晴らせないままずっと続いている気がして、そういうものを取っ払えるようなものを作りたいと、この映画を作りました。

美大生の悔しい気持ちに共感
トークイベントは、事前に生徒から募集した質問にのんが答える形式で進行。最初の質問は、「飲食店や医療従事者といった方々がコロナで大変な思いを抱いている中、なぜ美大生に目を向けた映画を制作したのか」という質問が読まれた。でも、私は芸術やエンタメの世界で生きているし、自分はそういったもので(影響を受け)形作られているというのを自覚することができて、改めて芸術やエンタメは必要なものだと思い、映画を作ろうと思いました。

のんと同じ思いを抱いた人が多かったのだろう、うなずきながらのんの言葉に聞き入る学生の姿が多く見受けられた。のんは映画製作に至った経緯について続けた。
イベントの聞き手として同席した同大学の伊東順二特任教授は、「芸術はコロナワクチンのように直接、人の命を救うことはできなくても、心にワクチンを打つことができる。そういうものじゃないと、芸術の意味はない」と語り、また、「止まっていては芸術ではない」「コロナはそんな芸術の価値を改めて思い知ることができた経験でもあった」と述べた。

「自分の魅力を大事に役者をやっていきたい」
のんが声優で参加、主演を務めた映画「この世界の片隅に」が大好きだという学生からは、「過去に演じたキャラクターから引き継いだことや影響を受けたことがあれば聞きたいです」との質問。その答えからは、のんが役者として大事にしているものが伺えた。私は自分がやった役を背負っていきたいなというふうに思っていて。役者のお仕事って、どんな役にも染まれるのが一人前みたいな考えもあると思うんですけど、私は寅さん(『男はつらいよ』)の渥美清さんとか、『相棒』の水谷豊さんみたいに、何年やっても新鮮にその役を演じられるっていうくらい、自分の魅力を大事に役者をやっていきたいって思っているんです。
脚本を書く時も、自分が書きたい主題はあるんですけど、『のんがやるんだったらどんなに女の子になるのかな』という視点では考えていました。なので、『Ribbon』で演じているいつかには、『この世界の片隅に』のすずさんを演じた自分のキャラクターも入っている気がしますね。絵を描くっていう部分は同じだし、あんなに自分のモヤモヤした感情を言わないんだけど、なんか思っているんだろうなって感じとか、似ているところがあるかもしれないですね。