万博協会の発表によると、5月26日の時点で「大阪・関西万博」の入場者が関係者を含めて500万人を突破したそうだ。長い行列や待ち時間、予約や支払いシステムの複雑さ、さらには大屋根リング周辺でのシオユスリカ大量発生など、多くの問題が指摘されてはいるものの、パビリオンの評価は概ね好評のようで、5月の半ばからは連日10万人を超える来場者で賑わっている。

すでに何度も訪れている熱心なリピーターも増えているようだ。


 そんな万博効果もあってか、関西では外国人観光客の姿が、以前にも増して増えている。彼らにとって日本の街や文化はどのように映っているのだろう。


 外国人旅行者の多くが日本で楽しみにしているのが、日本の食べものだ。寿司や天ぷら、すき焼きなどの海外でも知られた日本料理はもとより、日本酒、日本茶も人気だ。万博見学と併せて、兵庫県の酒どころ灘の酒蔵を訪れたり、京都の茶どころ宇治に足を延ばしたりする観光客も多い。茶道体験なども人気を集めているそうだ。


 日本食の魅力は、味やヘルシーさばかりが取り上げられることが多いが、それだけではない。日本の食文化が海外の人たちにこれほどまでに評価されるのは、その日本食文化を受け継ぎ、守り、今なお発展させ続けている人々の努力と研鑽の賜物ではないだろうか。


 例えば、1911年(明治44年)から毎年開催されている「全国新酒鑑評会」というものがある。独立行政法人酒類総合研究所と日本酒造組合中央会が共催で、日本酒の製造技術と酒質の現状及び動向を明らかにし、品質向上に資することを目的に行われている。現在、全国規模で開催される唯一の清酒鑑評会で、日本で最も歴史の長い鑑評会た。


 113回目の開催となる今年は、令和6酒造年度に製造された清酒809点が全国から出品され、厳正な審査の結果、5月21日に入賞酒410点、金賞酒202点が発表された。今年は福島県産酒が16銘柄で金賞を受賞し、都道府県別の金賞受賞数では兵庫県と並んで3年ぶりの1位に返り咲いて話題となっている。


 金賞受賞数で同じくトップの兵庫県では、灘の老舗酒蔵、白鶴酒造が「本店二号蔵」「本店三号工場」の2蔵で金賞を受賞。白鶴酒造によると、本年度は原料米の溶けが悪く、醸造管理に苦労したそうだが、それでも2蔵で金賞受賞を果たしたのは、さすが清酒のトップメーカーというところだろう。


 日本茶も、NPO法人日本茶インストラクター協会が主催し、農林水産省が後援する「日本茶AWARD」という品評会が2014年から毎年開催されている。消費者投票と専門家審査を通じて、本当に美味しい日本茶を選び出すことを目的とした品評会で、全国から様々な種類の日本茶が出品される。2024年度は、日本茶大賞及び農林水産大臣賞に鹿児島県の株式会社有村製茶による「かなやみどり烏龍」が選ばれ、日本茶準大賞及び農林水産省農産局長賞に静岡県の株式会社サンエースによる「望 つゆひかり 初摘み」が選出されている。また、日本茶AWARD2024 日本茶飲料部門の金賞は、静岡県の株式会社丸七鈴木商店の「HIGASHIYAMA 掛川・東山」が受賞した。ちなみに今年度の出品茶の募集も5月21日から始まっている。


 日本酒も日本茶もそれぞれに数多くの銘柄、味があり、好みもある。職人たちが丹精込めてつくり上げたものに、本当は優劣などつけるべきではないかもしれない。しかし、こういった品評会やコンテストがあることによって、普段はあまり知られることのない職人たちの努力に光があたり、それが次世代に味と技、誇りを受け継ぐ力となっていることも確かだ。

そして、そんな彼らの真摯で実直な努力が日本国内のみならず、世界の人々にも評価され、今日の日本食、日本酒、日本茶ブームにつながっているのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)

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