電気料金が高騰し、新電力(電気小売事業者)の撤退や倒産で電力会社と契約ができない「電力難民企業」が増加しているようだ。2016年に電力の小売全面自由化が行われた後、新電力による販売量は順調に拡大してきた。

しかし、昨年からの経済再開によるエネルギー需給の逼迫、ウクライナ侵攻による原油や石炭、液化天然ガスなどの燃料価格高騰、その後の急速な円安で電力調達コストが急騰、新電力は今年1月から調達価格が販売価格を上回る「逆ザヤ」状態に転じ、事業者向け高圧分野では逆ザヤが常態化している模様だ。このため、営業停止や撤退に追い込まれる新電力が増加している。さらに、大手も安定価格での電力供給が不十分で高圧・特高の新規契約を停止しており、新電力との契約が停止し、大手との新規契約もできない「電力難民企業」が急増している。


 6月13日、帝国データバンクが「新電力会社事業撤退動向調査(6月分)」の結果レポートを公表している。これによれば、経産省の集計として、「電力小売業者の倒産や撤退などで契約の継続が難しくなり、大手電力会社等から供給を受ける『電力難民』企業が、5月に入り1万3045件発生」し、4月の5133件から倍増している。調達価格の高騰で利益確保が困難になった新電力の撤退や倒産が相次いでおり、「発電設備を持たない売電事業の限界も露呈している」とレポートは指摘している。


 6月8日時点で契約停止を行った新電力会社は69社、倒産・廃業が19社、撤退16社、合計で104社となり、全体の15%が電気事業の停止・撤退となっている。3月末時点での同合計は31社であったから2カ月間で3倍超に急増したことになる。


 停止・撤退を行った新電力の多くが自前の発電所を持たず、発送配電コストを圧縮し、割安な料金設定で顧客を獲得してきた。市場価格高騰で調達コストが高止まりし、採算維持が困難になった事業者が撤退、倒産・廃業を余儀なくされている。調達価格の上昇分を売電価格に反映させる動きが続いているが、調達価格の上昇幅を大きく下回っており、1月には赤字に転じ「逆ザヤ」状態となった。中でも「家庭用より安値に設定されている事業者向け特高・高圧分野では、既に逆ザヤが常態化している」ようだ。

「割安な時期に参入し、高騰時に撤退するのは無責任」といった不満も出ている。レポートでは「新電力の撤退や倒産が今後さらに加速する可能性がある」と見込んでいる。(編集担当:久保田雄城)