東京・京橋地区の再開発に注目が集まっている。10件以上ある高層ビル建設計画の目玉のひとつとして4月にオープンした「東京スクエアガーデン」が大ヒット。
東京駅を挟んで反対側となることから“ライバル視”される丸の内地区は三菱グループが多くの土地を保有している。しかし、京橋地区は大企業による土地の寡占がなく、「多くの企業が進出できる」(不動産業界紙記者)余地がある点も再開発が盛り上がる要因になっているようだ。
ところが、最近、ある悩ましい事態が勃発している。発端は、今年6月に安倍首相が提唱した『空中権』の活用。河川を埋めた部分を通っている、京橋・東銀座地区の約2㌔㍍の首都高速道路に“蓋”をし、土地を作る。その土地の空中権を周辺の再開発業者に売却する、というものだ。
超高層ビルの建設を促せるうえに首都高速道路の改修資金も確保できるという一石二鳥の提案だ。
しかし、再開発に携わる関係者はこの提案に二の足を踏んでいる。先の業界紙記者によれば、“ライバル視”している丸の内地区で起こった「空中権売買での苦い出来事を知っている」からだという。
丸の内地区の空中権売買といえば、日本郵政、JR東日本、三菱地所が共同開発したJPタワー。地上からの高さが200㍍という超高層ビルが実現したのは、JRが東京駅の空中権を売却したからだといわれる。
また、あまり大きく語られることはないが、「三菱もかなりの空中権を“手放した”」(業界紙記者)そうだ。
「苦い出来事」とは、空中権売買後の3社の損得。JR東日本は東京駅の改修費の多くをこの空中権売却益でまかなったと言われている。また、三菱側は、「JPタワーにいち早く三菱東京UFJ銀行のオフィスを置いたが、空中権とのバーターで、家賃が格安」(同)なのだという。
ひるがえって日本郵政は、JPタワーを日本トップクラスの高い家賃で貸し出さざるを得なくなったうえ、未だに空室が残る状況が続いている。つまり、「空中権は、売却するほうにしてみれば“濡れ手に粟”だが、購入するほうは投下した資金回収のために相当苦労する」(同)という認識が広まったというわけだ。
とはいえ、再開発地区の価値をさらに高めるためには、シンボルになるような超高層ビルが必要、という意見もある。さらに今後、“濡れ手に粟”の立場になる永田町からの“圧力”も予想される。京橋地区再開発に携わる関係者の悩みは当分、続きそうだ。(編集担当:柄澤邦光)