3月8日に開催された『R-1グランプリ2021』の決勝に進出し、2020年12月14日に放送された、『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ)では、見事4代目女王に輝き、一躍時の人となった、吉住。ぼる塾やゆりやんレトリィバァなどの人気芸人を破り、“一番面白い女性芸人”の称号を得た今、ネタ作りのこだわりについて語ってもらった。
(前後編の後編)

【前編はこちら】「THE W」優勝・吉住が明かす芸人への道、コント師を夢見るも進学校で親が大反対

【写真】ピン芸人としてブレイク中の吉住

──芸人になりたての頃は女性芸人と一緒にコンビを組んでいたそうですが、コンビ時代から、ネタは吉住さんが担当してきたんですか?

吉住 はい、そうです。

──ネタ作りのスタイルは?

吉住 基本的には、なんとなく気になる単語をブワーッと書いているノートがあるんですけど、それを広げながら設定を考える感じですね。後は音楽を聴きながら考えたりもします。森山直太朗さんの曲を聞いていたら、こう、降ってきたというか、「すごくドラマチックなネタができるな」ってバババっと書き上げた「たっちゃん」(※人型に切り抜いた段ボールを彼氏だと言い張る娘と家族の話)っていうネタもあったり。

──理詰めではなくてそういう「憑依型」のタイプなんですね。

吉住 6年やってきて、今のところ2回くらいしかないですけどね(笑)。ただ、中島みゆきさんも好きなんですけど、聞きながら書いていると全部暗いネタになっちゃって(笑)。さすがにちょっとやばいな、と。やっぱりテレビって、ちょっとポップさがないと出られないんで。中島みゆきさんはポイントポイントで聞きつつ、今はなるべく明るめの曲を聞きながら作っています(笑)。

──とは言いつつも、吉住さんのネタには悲哀みたいなものが盛り込まれている気がします。

吉住 自分では、すごく意識しているわけじゃないんですけどね。
私はかもめんたるさんもすごく好きで。かもめんたるさんのネタって、すごく悲しい話だったりどこかイッちゃってたりするキャラクターが出て来ることが多いじゃないですか。

その時に登場人物のバックボーン、家に帰ったときどんな晩御飯食べてるんだろうとか、この人はこういうことを言わないだろうな、とかを想像させられてしまうと思うんです。意識しないまでも、自分のネタにもそういうところが出ているかもしれません。もしくは、私の表情が元々暗くてちょっと物悲しいところがあるので、それがいい意味で「吉住らしいコント」になっているのかも(笑)。

──2人の掛け合いですすめる漫才じゃなくて、世界観を作るコントだからこそ、吉住さんのオリジナリティが色濃く出るのかなと思います。

吉住 漫才、コントに限らず、私だけの見方かもしれないけど、ポップで明るいネタってきれいな平面に見えるんですよ。それが悪いとかじゃなくて、すごくきれいで、分かりやすくて笑えるっていうか。でも、かもめんたるさんのネタなんかは、すごく奥行きがあるなって感じていて。ちょっと後味が悪かったりしても、いろんなネタを見た後にどれが一番印象に残っているかと言ったら、私の場合はそっちで。

──確かに、吉住さんの「時をかける女」(※同級生のふりをして年下の男子高校生と毎日キャッチボールに興じる女の話)のネタなんかも、後味はよろしくない(笑)。

吉住 ありがとうございます(笑)。
やっぱり異常というか、ネタのなかにちょっとした狂気があった方が、私は好きなんだと思います。

──ただ今は「誰も傷つけない笑い」というのが称賛される時代で、毒だったり狂気みたいなものを盛り込むのは難しくありませんか? それに、女性芸人が必要以上に容姿をけなされたり、体を張ったりすることも良しとはされません。お笑いに、いろんな制約が乗っかかる状況というか。

吉住 私自身ちょっと卑屈なタイプなんで、自分を卑下した方が笑いが取れる流れになるなと思ってもそうできないこともあったりして、やりづらいと思うことも無いとは言えないです。女性芸人が体を張るお笑いを見たい人もいるだろうし、1つの形として残るのは悪くないと思うんですよ。

他にも今回、『THE W』でやった「女審判」(※野球の審判を職業にする女性の恋愛話)なんかも、「女」をつけることによって、それ自体に違和感を覚える方もいたらしくて。でも、私は単語の響きと言うか、笑いが多く取れる方を優先したいなと思います。

「アイプチ」っていう、火事の翌日に二重にしてきたことを突っ込む……というネタがあるんですけど、「私はアイプチでコンプレックスを解消しているのに、アイプチをいじられて傷つきました」みたいなことを言う人もいるんですよね。

──ネタの本質はそこじゃないのに、伝わらないこともありますよね。

吉住 結局、自分が大切にする基準をどこに置くか重要で、それで受け入れてもらえない人が出てくるかもしれないんだけど、そこはブレずにやりたいです。私が自分が作る笑いで、できるだけ人を傷つけないようにと思ってやってるのは、コントで私自身が変だったりヤバい人を演じるようにしてることですかね。

意外とみなさん、登場人物を自分のことにあてはめてコントを見てるっていうことが最近分かってきて。


──「アイプチ」の例はまさにそうですよね。コントの中の話なのに。

吉住 だったら、コントの設定で変わった人を出して「あなたをイジってるんじゃなくて、ただこの人が変なんですよ」と分かってもらおうかな、って。最近はそういうネタが増えてきたかもしれないですね。

吉住(よしずみ)
1989年11月12日生まれ。福岡県北九州市出身。『女芸人No.1決定戦THE W』2020優勝。ドラマチックなで独特な1人コントが持ち味。映画『私をくいとめて』に本人役で登場している。
Twitter:@YOSHIZUMI_2015
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