先月24日、SKE48は日本ガイシホール(愛知県名古屋市)で古畑奈和須田亜香里の卒業コンサートを開催した。翌25日にはグループの14周年を記念するコンサートを同所で開いた。
AKB48グループ選抜総選挙では選抜入りを2度果たした古畑、そしてバラエティ番組に多数出演している須田。そんなグループの顔が姿を消すSKE48において、今後の中心に立つのが、青海ひな乃だ。今月5日発売のシングル『絶対インスピレーション』のセンターに立つ彼女はどんな心境で先輩を見送り、どんなビジョンを持っているのか、話を訊いた。

【写真】14周年記念公演で躍動する青海ひな乃【8点】

 台風15号が過ぎ去った名古屋はすっかり晴れわたり、汗ばむほどだった。24日、昼公演では古畑奈和、夜公演では須田亜香里の卒業コンサートが開かれた。会場は日本ガイシホール。昨年秋、SKE48は13周年コンサートを開催する予定だったが、コロナ禍のあおりを受けて中止となった。そのリベンジを果たし、かつ世話になった先輩を最高の形で送り出そうと青海は燃えていた。

青海「奈和さんは心から優しい人。どんな後輩にも名前を呼びながら挨拶してくれます。誰かが傷つくぐらいなら、自分が傷ついてもいい。そんな方です。
コンサートは奈和さんの色に染まったものになって、とても勉強になりました」

 須田の卒業コンサート終盤、青海はこの夜の主人公と向き合う瞬間があった。人前で泣くことのない青海が、この日ばかりは顔を覆いながら泣いた。

青海「亜香里さんにはすごくお世話になりました。私はSKE48らしくないメンバーと言われてきて、もともとファンではなかったし、歴史も知らない。キャラ的にもちょっとSKE48っぽくないみたいです。でも、『それがひな乃のいいところなんだよ』と認めてくださったのが亜香里さんでした。今年、コロナウイルスにかかってしまった私に、真っ先に連絡をくださったのも亜香里さんでした。私がグループの前に出るようになってから、何をすべきなのか教えてくれたのも亜香里さん。そんな方がいなくなってしまう――。そう思ったら急に寂しくなってしまいました。亜香里さんは大先輩であり、恩人でもあるんです」

 SKE48の劇場デビュー14周年と同日に発売されるシングル『絶対インスピレーション』。その真ん中に立って歌うのは、青海だ。
自身にとって初のセンターとなる。

青海「亜香里さんは『ひな乃がセンターで頼もしいよ』と言ってくれました。今回は亜香里さんの卒業シングルです。そう話してくださったことで、ほっとしたし、センターになってよかったと思いました」

 須田が有終の美を飾るためにセンターに立つ。そんな判断もあったはず。しかし、現実にはそうならず、グループでは若手に位置づけられる青海が中心に据えられた。時計の針を進めるためだろう。その期待を青海は感じながら、数千人が見守るステージに立ち、新曲を初披露した。

 そればかりか、コンサート終盤には「超世代」宣言をした。ステージ上からは「SKE48を超えるという意味で“超世代”としてやっていきたいです」と説明したが、改めて本人に真意を問うた。

青海「9期生の私はグループのなかでは若手です。これまでも新世代コンサートや若手だけのユニットをやらせていただきました。
でも、それだけでは足りないんです。先輩たちが作ってきたもの超えて、初めてSKE48が続いていくんです。たくさんの先輩たちが卒業していった今こそ、私たちが超えていかないとダメなんです」

 超世代と聞くと、思い出されるのはプロレスラーの三沢光晴だ。全日本プロレス所属時の1990年、試合中に虎の仮面を脱ぎ捨てて、素顔で勝負することを選んだ三沢は、川田利明らと超世代軍を結成。先輩であるジャンボ鶴田やスタン・ハンセンら強敵と激闘を繰り広げ、そして勝利した。“過去のSKE48”という巨大な敵に挑む青海の姿と重なる。

青海「今までの大きな存在に勝つというのはプロレスと同じですね。それは、SKE48に染まりきっていない世代の私たちだからできることだと思います」

 青海はSKE48のことをほとんど知らずに加入した。ときは2018年。48グループへの合格を夢見る若者は、熱烈なファンがほとんどだった。そんななか、青海はSKE48を人生の進路として選択した。「ひな乃が踊っている姿を見せたら、お父さんが喜ぶんじゃないか」と兄に背中を押された。
その時、父は脳梗塞で倒れていた。今年5月、青海は家族をSKE48劇場に招待し、晴れ姿を見せた。涙が止まらない父に娘はステージからレスを送った。娘ができる最高の親孝行だった。

 14周年コンサートでは、ある発表があった。12月18日に東京・中野サンプラザで「新世代コンサート」を開催するという。これは1年前にも行われたもので、今年は8期生が不参加。青海率いる9期生以降のメンバーが出演する。先輩の手を借りず、若手だけでやってみろ。運営からそう通告されたに等しい。

青海「去年までの私たちは、コンサートの準備は先輩方に任せきりで、『はい』以外に言うことはありませんでした。初めて若手だけに任せていただくことに不安があったけど、『新世代だからってなめんなよ』という気持ちで挑みました。
SKE48の未来は明るいと思ってもらわないと意味がないですから」

 去年のコンサートで中心に立っていたのは、8期生の野村実代、9期生の青海、10期生の林美澪だった。今年は8期生がいない。リーダーシップをとるのは立場的にも性格的にも青海になる。

青海「私がグループを引っ張りたい気持ちになったのは、去年の新世代コンサートからでした。前に立たせてもらったし、その後、カップリング曲のセンターにもなったし、Team S新公演のセンターも任せていただけました。あれから私は積極的に発言するようになりました。人任せじゃダメなんです」

 言いたくないことも言わなくてはならない。中心に立つ者の宿命だ。青海にはそれができる。今年5月、Team Sの新公演が始まる前のレッスンで、青海はチーム全体に喝を入れた。

青海「その日は『今日は大きな声で歌おう』ってみんなで決めてからレッスンに入りました。みんなで決めたことだから、私は大声を出していた。
なのに、後ろから聞こえてくる声は小さい。ムカつきながら踊っていました。レッスン後、我慢できなくてみんなに言っちゃいました。『なんで大きな声出さないの? 話し合った意味ないやん』って。私がそう発言したことでメンバーはぶつかりました。みんな、それまで遠慮して言わなかったことを口にしました。その結果、Team Sの雰囲気は変わりました。遠慮がなくなったんです。誰かが動けば、みんな動いてくれるんだっていうことを知れました」

 シングルでも、チームでも、若手というくくりでも、青海はメンバーに背中を見せる存在になった。SKE48に関する知識は何もなかったが、今ではどっぷりグループに首まで浸かっている。

青海「自分が売れたいとかじゃなくて、私はSKE48をもっと知ってほしいんです。モデルになれる子もいるし、めっちゃ面白い子もいます。逸材だらけなんです。それを広めるきっかけをみんなで作っていきたいです」

 青海は時代の旗手となれるのか。“超世代”宣言をしたその日から連続ドラマは始まっている。

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