お笑いコンビカンニングを結成してから31年を数えるベテラン芸人、カンニング竹山が、7月11日に著書『カンニング竹山の50歳からのひとり趣味入門』(ポプラ社)を上梓した。競馬好きで知られる竹山だが、実は他にも様々なジャンルに興味を向ける趣味人だったのだ。
売れっ子芸人が忙しい合間を縫って「楽しいこと」と向き合う姿勢、そして趣味を通じて感じた「前向きな生き方」について語ってくれた(前後編の前編)。

【写真】50代を謳歌するカンニング竹山

『ひとり趣味入門』ってタイトルの本ではあるんですけど、自分としてはそこまでガチガチに「趣味!」という捉え方をしてはいなくて。本のなかでは競馬とサラブレッド、キャンプ、バイク、野球にアメフト、YouTube制作といろいろ挙げましていますが、趣味って言いきってしまうと「これをやらなきゃ、あれもやらなきゃ」って義務的な感じがしてしまうので。簡単に言うと「俺は今、こんなことをして遊んでます」ということ。だから10年15年前だったら違うラインナップだったろうし、5年後には本に載っていることはもうやってないかもしれないし。

仕事と趣味、という分け方が大嫌いなんです。スイッチのON/OFFみたいな生き方が一番くだらない。そういう風に区切っちゃうから、仕事で行き詰まったりした時にみんな病んじゃうんですよ。理想を言えば、仕事も遊びも全部を楽しみたい。難しいですけどね。でも全部を楽しめる心を作っていくことが重要というか。ひとつのことにとらわれ過ぎない、抱え込まない、そのほうが人生楽しいよ。
そんな考え方でいたいんですよね。

そう思うようになったのは、40歳を過ぎて自分の先輩たち、木梨憲武さんらと遊ぶようになった時に「このおじさんたちいつも楽しそうだな」って感じたからなんです。いつも好きなことやってるな、って。ちょうど自分がここからどう生きていくか、どういう人生を過ごして終わるのか、ってことを考え始めた時期で、「じゃあ俺も好きなように生きていいんじゃねえか?」という意識になりました。

それまでは、存在のカテゴライズから生き方まで、自分で「俺はこうだ」って決めすぎていたと思うんです。「芸人だからこうしなきゃいけない」と考えるのも自由だけど、やりたいことを好きなようにやるのも、どっちも正解。それでいいのかなって。

「今日は時間があるからバイクに乗って遊びたい」なら、そうすればいい。「今日は昼から酒を飲みたい」と思ったら、飲めばいいじゃないですか。それらの行動を「自分の趣味だ」って決めつけちゃうのは、「趣味」って言葉にとらわれていると思うんです。

あと、特に日本人には多いと思うんですけど、趣味だというなら突き詰めなきゃいけない、って考えがちじゃないですか。例えばゴルフ。
もっとクラブが欲しい、練習してうまくなりたい、そう思う人はやればいい。でも、そこまでハマらなかった場合「まあたまにやろうかな」くらいだって趣味でくくっていいんじゃないのかな。

ヒロシが1人でキャンプに行く。ブームになるとみんな、あの「ぼっち」スタイルがいいんだ、と言いだすじゃないですか。たしかにソロキャンプブームだけど、それを好きな人がいれば、哀川翔さんがやっているキャンプなんかもう何十人も参加してて、そっちが好きな人も大勢いる。どんなことでも突き詰めようが三日坊主だろうが自分が楽しければそれはきっと趣味なんですよ。何かやりたいことができたら、仮に時間的、金銭的余裕がなかったとしても、できるだけお金をかけなくても楽しめるやり方を模索したり、時間を作る努力をすればいいだけで。

今回書いた本は『50歳からのひとり趣味』とは銘打ってますけど、もちろん僕が挙げたような趣味をやれ! ってことではないんです。僕だってそれに飽きたらやらなくなるかもしれませんしね。それくらいの感覚でちょうどいい。

例えば、「今日は松屋行って牛焼肉定食を食いてえなあ」って思ったとします。仕事で外出したその近くに松屋があって牛定食えたら、それだけでちょっと嬉しいじゃないですか。
「これこれ、この味なんだよな!」って。小さかろうが大きかろうが、楽しい、嬉しいと思うことを増やせればちょっと楽になれたり、癒されたりすると思うんです。そんな風に感じられることが、自分にとっての「趣味」と呼べるものなんじゃないかと思ってます。

【後編はこちら】カンニング竹山が語る50代の今「若い頃はおじさんがこんなに楽しいなんて知らなかった」
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