「ちゃおガール2012オーディション」で準グランプリを受賞したのをきっかけに芸能界入り。その後、女性アイドルグループ「さくら学院」のメンバーとして活躍、2016年度には6代目生徒会長(リーダー)を務め、グループ卒業後は俳優として活動する倉島颯良。
映画『緑のざわめき』で松井玲奈岡崎紗絵と共に異母姉妹を演じている彼女に、撮影エピソードを聞いた。

【写真】さくら学院時代は生徒会長も経験、倉島颯良の撮り下ろしカット【8点】

映画『緑のざわめき』は自分にとってターニングポイントになる作品だと振り返る倉島。演じるのは8年前まで施設に預けられていた高校3年生の杏奈で、響子(松井玲奈)、菜穂子(岡崎紗絵)と二人の異母姉がいるが、そのことは同居する叔母から知らされていないという境遇。

「初めて脚本を読んだときに思ったのは、なんて複雑な三姉妹なんだろうと。難しい家庭環境にある子を演じたことはあったんですけど、異母姉妹という複雑な人間関係に置かれた役はあまりなくて。とても重要な役どころに選んでいただいたので、驚きと同時に身が引き締まる思いでした。


姉妹それぞれの置かれてきた環境も違うので、一回読んだだけでは理解が追い付かなくて。何回も読み返す中で、杏奈は自分と似ているなという印象を受けました。私も人に気持ちを打ち明けるのが苦手ですし、ちょっと達観しているところがあるのも似ていました」

脚本も手掛けた夏都愛未監督が、杏奈役を考えたときに真っ先に浮かんだのが倉島だったという。

「杏奈は今まで演じてきた役の中でも一番自分に近い女の子でした。私自身は一人っ子ですが、本作は自分と血の繋がった姉妹がいることを知らないところから始まるので、むしろ一人っ子だったことが活きているのかもしれません」

夏都愛未監督との仕事は、オムニバス映画『21世紀の女の子』(19)の一篇「珊瑚樹」で主役に抜擢された以来だった。

「3、4年ぶりの再会だったのですが、『また一緒にお仕事できたらうれしいです』と言っていただいていて、それが本当に形になって、脚本をいただいたときは感激しました。
夏都監督は雰囲気や空気感を大事にする方で、初めて『緑のざわめき』の脚本を読んだときも、それを感じました。

夏都監督が書かれる言葉や雰囲気、白黒はっきりさせない物言いがすごく好きなんですよね。現場での演出で言うと、『ここで、こう動いて』ではなく、『ここは、こういう風に余裕を持たせて演じてほしい』といった言葉遣いをされる方で、俳優に委ねてくださることが多いです」

杏奈が自分に似ているからこそ、役作りで苦労した面もあった。

「自分のこととして読んだところがあったので、杏奈をフラットに捉え過ぎていたんです。初めて夏都監督と読み合わせをしたときに、私が淡々とセリフを言ったせいか、『ちょっと緊張してる?』と仰っていて。緊張していた訳じゃないんですけど、自分自身に杏奈を寄せ過ぎてしまったところがあったんです。
そのときに杏奈を表現するためには、自分の共感できる部分を超えて演じなければいけないなと思いました」

杏奈が暮らしているのは、佐賀県の嬉野市。風光明媚なロケーションは、演技にも影響を与えた。

「嬉野市は自然が豊かな場所です。一緒に住んでいる叔母の芙美子(黒沢あすか)とケンカをして、家を飛び出すシーンがあって。飛び出た先には稲がいっぱいある広い田んぼで、そこの空気感や匂いがリアリティのある演技に結び付いたと思いますし、都会ではもらえないようなパワーに包まれながら撮影していました」

三姉妹の共演シーンは少なかったものの、松井玲奈と岡崎紗絵とは撮影の合間にコミュニケーションを取った。

「普段の松井さんは物静かなタイプですが、しゃべりだすと本当に面白い方で。
ちょっとオタクな部分があって、『名探偵コナン』やディズニーのことなどについて聞くと、熱く教えてくださいました。演技面では、普通にしゃべっているだけなのに、女性としての真の強さを感じました。

岡崎さんは、いつ会っても明るくて、朝早くでも夜遅くでもキラキラしていて、自然と現場が明るくなるんですよね。でもお芝居になると瞬時に菜穂子になって、暗い雰囲気をまとうんです。タイトなスケジュールでスタッフさんは大変だったと思うんですけど、お二人の人柄もあって、和やかに過ごすことができました」

芙美子を演じた黒沢あすかからも大きな刺激を受けた。

「黒沢さんはとても温かい方で、叔母と姪という役柄の関係性もあって、初めて会ったときから気にかけてくださいましたし、家庭感・生活感をお芝居からもらいました。
台本にたくさんの書き込みをされて、細かいところまで考えてお芝居をされている方で、とても勉強になりました」

本作は大阪アジアン映画祭がワールドプレミアとなり、倉島は舞台挨拶に登壇した。

「見てくださった方々の声を聞いて、こうやって一つの作品がたくさんの人に届くというのは、本当に感慨深くて面白い仕事だなと改めて思いました。初めて映画館で見たときに、生い茂っている木が風に吹かれて擦れ合う音や、電話の話し声といった、“音”が印象的な作品だなと感じて。映像と音との組み合わせで立体的になっていると作品だと思うので、ぜひ映画館で見ていただきたいです」

▽『緑のざわめき』
9月1日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
出演:松井玲奈 岡崎紗絵 倉島颯良
草川直弥(ONE N’ ONLY) 川添野愛 松林うらら 林裕太
カトウシンスケ 黒沢あすか
監督・脚本:夏都愛未

▽ヘアメイク:ビューティ★佐口(OFFICE BEAUTY)
スタイリスト:倉島千佳
衣装クレジット:
ワンピース/LAYMEE
パンプス/CHARLES & KEITH
アクセサリー/スタイリスト私物

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