ここ最近、大手シネコンでひと昔前の名作映画が再上映されている光景をよく見かける。最新作に交ざって、90年代、00年代の懐かしいタイトルが並んでいるのだ。
今や映画館の存在意義が問われるようになりつつある時代だが、だからこそリバイバル上映が話題を呼ぶのかもしれない。

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たとえば9月22日からは、新宿ピカデリーをはじめとする全国の劇場で、映画『007』シリーズの4Kレストア上映が始まっている。『007』といえばイギリスのスパイ、ジェームズ・ボンドでお馴染みの人気シリーズ。第1作目『007/ドクター・ノオ』の日本公開から60周年を記念し、リバイバル・ロードショーとして10作品が上映されるという企画だ。

現在は『007/ゴールデンアイ』や『007は二度死ぬ』などの5作品が公開中で、残りの5作品は11月17日から順次公開されるという。

ジェームズ・ボンドはこれまでショーン・コネリーやダニエル・クレイグなど、6人の名優たちが演じてきた。
今回のリバイバルは、異なる魅力のジェームズ・ボンドを大スクリーンで観られる、またとない機会と言えるだろう。

また10月13日からは、ラッセ・ハルストレム監督の名作『ギルバート・グレイプ』が1週間限定でリバイバル上映される。同作は1994年に公開された映画で、ジョニー・デップとレオナルド・ディカプリオが兄弟役で共演したヒューマンドラマだ。

恐らく多くの人がディカプリオの青年期以降、特に1997年に公開された『タイタニック』でその端正な顔立ちを初めて目にしたと思うが、『ギルバート・グレイプ』のディカプリオは当時まだ19歳。『タイタニック』の“レオ様”とはまた違う、少年のようなあどけなさが残るディカプリオを見ることができる。

一方、10月27日より1週間限定で再上映されるのは、リュック・ベッソン監督の名作『レオン』だ。
「Filmarks」主催のリバイバル上映プロジェクト第3弾として、22分の未公開映像を加えた完全版が上映される。ジャン・レノと幼いナタリー・ポートマンの名コンビ、そしてゲイリー・オールドマンの悪役ぶりは、スクリーンで見てこそだろう。

公開は少し先になるが、2000年代初めに大ヒットしたフランス映画『アメリ』も11月17日にデジタルリマスター版が上映されるそうだ。同作は日本で社会現象を巻き起こした人気作。公開当初は渋谷のミニシアター1館でしか公開されていなかったのだが、たちまち全国にある全160館もの映画館で上映されたという逸話を持つ。

なお渋谷のユーロスペースでは、公開時と同じ35ミリフィルムでの上映も予定しているとのこと。
当時映画館へ観に行った人には、このうえない映画体験になるに違いない。

近年ではサブスクリプション方式の動画配信サービスが定着し、映画館に行かずとも家で簡単に映画を観られるようになった。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』のような最新作ですら3カ月もすれば配信されるため、映画館まで足を運び、それなりの値段がするチケット代を払うことに抵抗感が生まれてもおかしくはない。

だが、現実には映画館で作品を観る人はいなくなっていない。なぜ“サブスク”全盛期に映画館まで行くかといえば、そこでは映画を特別な体験として楽しめるからだろう。リバイバル上映の盛り上がりは、映画館ならではの体験と結びついているように思われる。


今年8月には、それを象徴するような出来事があった。2022年公開の劇場版『ONE PIECE FILM RED』が、4Kアップコンバート版で再上映されることが発表され、ネット上が「あの空気をまた映画館で味わえるとは……」「また映画館でウタの歌聴きたい!」と期待で沸き立ったのだ。

すでに観たことがある、思い入れのある作品だからこそ、スクリーンでもう一度観ることの意味が生まれる。リバイバル上映の企画が成功することで、今後も名作をスクリーンで観られる機会が増えることだろう。気になった作品があれば、ぜひ映画館まで足を運んでみてはいかがだろうか。

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