AKB48時代から圧倒的な歌唱力と演技力に定評のある増田有華。2012年に主演したミュージカル『ウィズ~オズの魔法使い~』の主演ドロシー役で一躍注目を集め、ドラマ、映画、舞台と多方面で活躍。
江戸川ローマ役を演じたNetflix 作品『全裸監督2』での、体当たりの演技も大きな話題を呼んだ。10月20日公開の映画『Love song』では、愛する人のために暴力団に敢然と立ち向かう主人公を演じた彼女に、映画の話や女優を目指したきっかけについて語ってもらった。

【写真】『全裸監督2』での体当たりの演技も話題に、増田有華の撮り下ろしカット【10点】

歌を歌いたくてAKB48に入った増田にとって、芸能界に入る前は、お芝居は自分と無縁のものだと思っていた。

「歌だけ歌えればいいやと思っていたので、お芝居をやりたい気持ちはゼロでした。ただ十代後半で『野田ともうします。』(NHK)という作品に出させていただいて、それが初めての本格的なドラマ出演だったんです。
江口のりこさんや安藤サクラさん、池谷のぶえさんなど、錚々たる俳優さんと共演させていただいたんですけど、そのときに気負わずお芝居をすることができて。こんなに演技って楽しいものなんだと思いました」

2013年に初めて地上波連続ドラマでレギュラーを務めた『リミット』(テレビ東京)では財産のような言葉をもらった。

土屋太鳳ちゃんや桜庭ななみちゃんと一緒にメインで出させていただいて。薄井千影という役を演じたんですが、気弱な性格の女の子という、私とは真逆のキャラクターだったので、すごくやりがいがありました。私よりも年下の若い俳優さんが多かったんですが、刺激になりましたし、めちゃくちゃ仲良くなって、女子校みたいにワイワイ騒ぎながら、みんなで支え合った思い出深い作品です。

クランクアップ後には塚原あゆ子監督からお手紙をいただいて、『今後も女優を続けてください』というお言葉をいただきました。
2012年に出演した映画『ウルトラマンサーガ』でも、おかひでき監督から『増田さんはお芝居をやったほうがいいよ』と言われて。そうやって、いろんな方々からかけていただいた言葉が、今の自分の道に繋がっています」

AKB48在籍中、俳優としてターニングポイントになった作品が、2012年に出演したミュージカル『ウィズ~オズの魔法使い~』で、増田は主演のドロシーを演じた。

「オーディションから千秋楽までトータルすると一年以上関わった作品で、東京国際フォーラムという大きいステージにも立たせていただきました。自分にとっては、俳優というよりも、人生においてグレードアップさせていただいた作品だったので、あの舞台に主演として立ち続けられた自信は今の支えにもなっています」

演出の宮本亞門にも多くのことを学んだ。

「おちゃめで子どものような面もあれば、いつも温かく見守ってくださって。東京公演で、ある日のステージが終わって、その日の修整点を話し合っているときに、亞門さんは帰られてもいい時間なのに、最後まで残ってくださって。
『今信じているもの、やってきたものを、そのままやればいいんだよ』という言葉をかけてくださって。それも自信に繋がりました」

約一か月半に渡る公演を、単独主演で乗り切った。

「Wキャストではなかったので、私が体調を崩したら、この公演は中止になる。今だったら大きなプレッシャーですけど、当時21歳の私は無敵状態というか、怖さを知らないので、『大丈夫っしょ!』みたいな感じで。成功している絵しか想像していなかったら、体調も崩さなかったですし、寝不足で多少調子悪くても、『あ、声出るわ、ラッキー』って落ち着いて舞台に臨めたんですよね。

両親が小さい頃から、『有華は大丈夫!』って言ってくれていたので、自分を疑うことなく常にチャレンジしたいという性格に育ちました。
失敗しても怪我しても死にはしない、死ぬこと以外かすり傷みたいなところは今もありますね」

『ウィズ~オズの魔法使い~』で高い評価を得た増田は、現在に至るまで数多くのミュージカルに出演している。

「言ってしまえばミュージカルってセリフを歌っているわけですから、メロディーに合わせて綺麗に歌うのとは違うんです。だから最初の頃は、『綺麗に歌い過ぎている』と演出の方から言われることもあって。経験を積んでいくうちに、歌もお芝居の一つなんだと理解できるようになりました。今、『お芝居が好き!』と胸を張って言えるのは、お芝居だけではなく、歌も歌ってきたからというのがあります」

映画『Love song』では、クライマックスで花が歌うシーンが用意されている。

「『Love song』には拳銃も出てくるし、薬物も出てくるし、暴力団も出てくる一方で、ひたむきに人を愛する純粋な気持ちが描かれています。
初めて脚本を読んだときに、口下手で上手く言葉にできない感情を、歌に乗せて表現する子なんだと共感しました。私にとって歌は、衣食住ぐらいかけがえのないもの。

いまだにAKB48の頃から応援してくれているファンの方は『歌の上手い子』と言ってくれますし、私の歌を聴いて泣いてくれる方もいて。これからも自分のためだけではなくて、誰かのためにも歌い続けていきたいですし、そういう思いを込めて花としても歌いました」

お芝居を通して、歌い方にも変化があった。

「ずっと上手く歌わなきゃという意識が強かったんですけど、俳優として『お芝居とは?』ということに向き合うようになってから、すごく楽に歌えるようになったんです。具体的に言うと、お話するように歌うと、自然とブレスも長く続いて、そこはすごく変わりました。


舞台の再演で数年前と同じ曲を歌うときに、過去の音源を聴くと『自分の歌を分かってほしい!』みたいな気持ちが強く出ているんです。最近は包み込むように歌えるようになってきたので、経験値が大きいんでしょうね」

2022年11月に出演した舞台『実は素晴らしい家族ということを知ってほしい』も、お芝居への意識が大きく変わるきっかけとなった。

「中野のテアトルBONBONという小劇場でやらせていただいた舞台なんですが、毎回お客さんが変わるごとに空気感が変わるというか。手を伸ばせば届く距離にお客さんがいる中でお芝居をしたときに、自分が演じる意義をすごく感じて。一時期は急にキャスト変更があって、私の役を誰かがやったとしても、別に変わらないんじゃないかなと思っていたんです。でも、今回の『Love song』もそうですけど、今は私にしかできないお芝居がしたいという欲が出てきましたし、それを実践できているなと感じています」

▼『Love song』
2023年10月20日(金)より池袋シネマ・ロサにて上映!ほか全国順次公開

増田有華 木口健太 山口大地藤吉久美子 本田博太郎
青木一馬 平山 大 牧野裕夢 広瀬彰勇 大川夏凪汰 佐藤真澄 角 謙二郎

監督:児玉宜久
脚本:村川康敏 宍戸英紀

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