2019年は乃木坂46欅坂46、日向坂46の3組が紅白歌合戦出場を決めるなど坂道グループの躍進が目覚しかったが、他とは違うパフォーマンスで話題を生んだアイドルも少なくなかった。今回は2019年にパフォーマンスが印象的だったBEYOOOOONDS、吉本坂46 RED、ラストアイドルの3グループについて取り上げたい。

■演劇を取り入れたBEYOOOOONDS
ハロー!プロジェクトから3年ぶりにメジャーデビューを果たしたBEYOOOOONDSは演劇を取り入れたパフォーマンスで注目を集めた。

デビュー曲「眼鏡の男の子」ではメンバーの前田こころが楽曲の設定のためにショートカットに切り、男装して演じた“眼鏡の男の子”とその“眼鏡の男の子”に恋する女子学生を他のメンバーが演じる。演劇を取り入れたことによる楽曲のストーリー性は初めて見る人にも伝わりやすく、何より芝居から始まるアイドルソングというインパクトが大きい。12人いるBEYOOOOONDSのメンバーも「眼鏡の男の子」の中でそれぞれ配役を与えることで、1人1人認識しやすくなっている。

先日発売したアルバム「BEYOOOOONDS 1st」では「眼鏡の男の子」の楽曲に登場する人物をそれぞれフューチャーしたサイドストーリー的な楽曲も多数収録されているため、一つの物語として完結しており、<演劇を取り入れたパフォーマンス>として新しいエンターテイメントの形を実現した。

BEYOOOOONDSの人数の多さが活きるのは演劇だけではない。12人のメンバーが3つのグループに分かれていることもグループの一つの特徴であり、可愛らしさが際立つ「CHIKA#TETSU」、女子の不安定な心情を体現する「雨ノ森川海」、ハロー!プロジェクト“ONLY YOU”オーディションでBEYOOOOONDSへの加入が決まった3人はそれぞれユニット別に楽曲があり、そのコンセプトの棲み分けも見事である。

同じハロプロ所属で有名なモーニング娘。’19が前衛的な楽曲で注目を集めるのに対し、BEYOOOOONDSの楽曲はどれも共通して親しみやすいものになっている。そのノリやすさが象徴するのは「みんな違ってみんないい」の精神だ。

「眼鏡の男の子」で様々な個性を持つ女子学生が登場したことで、言わばバラエティに富んだグループとして幅広い世代からの支持を集める可能性を提示したのである。
ある意味、王道アイドルとしてもBEYOOOOONDSのパフォーマンス力は全体的に長けているのだ。

■吉本坂46、想像の遥か先をいく“本気”パフォーマンス
坂道グループの第3弾としてデビューした吉本坂46は現在RED、CIRCUS、スイートMONSTERの3チームに分かれて活動しており、中でもREDのパフォーマンスは、昨年末にデビューしたシングル「君の唇を離さない」で既に話題になっていた。

吉本興業所属のタレントに限らず多様なバックグラウンドを持つメンバーで構成されるREDはプロのダンサーや元アイドルなども所属しているが、「君の唇を離さない」のMusic Videoで披露したパフォーマンスは視聴者の想像の遥か先をいく本気さで衝撃を与えた。

経験者が各々得意とする表現方法やダンススキルを存分に活かした上でサビではREDのメンバー全員で踊るという一連の流れは、ダンス未経験者も含むメンバーが力を合わせて一つのパフォーマンスを成し遂げるからこそ、芸術のように感じられる。

REDのパフォーマンスを情熱的にさせているのは、楽曲が人間ならば誰しもが熱くなるであろう<恋愛>に焦点を当てたことも要因の一つであろう。今ではクサすぎると思われるかもしれないほどのテーマであったからこそ、そこに各々の“本気”をぶつけたパフォーマンスは思いの外ハマったのだ。

男女混合という個性も見事に活かしており、Music Videoでは楽曲の世界観が従来のアイドルよりずっとスリリングに感じられる。アイドルとしての新しい在り方を追求するグループとして今後の活躍に期待したい。

■ラストアイドルの“歩く芸術”
ラストアイドルファミリーが総勢52人で披露した“歩く芸術“のインパクトも衝撃的だった。ラストアイドルファミリーが出演している番組「ラスアイ、よろしく!」の企画で実際に「団体行動」を指導していた日本体育大学の監督から直に伝授されたというその“歩く芸術“はアイドルファン以外にも認知されるほどの話題性を生んだ。

“歩く芸術“を行うにあたってメンバー全員がほぼ統一された衣装と容姿であったことから、実際には「推しがどこにいるのかわからない」「そもそも“歩く芸術“をすることに意味があるのか」と言った声も多くあり、賛否両論だったようにも感じる。

しかし、ラストアイドルファミリーの“歩く芸術“は非現実的な美しさに反して、等身大のメッセージ性もあるように感じた。
”歩く芸術“の美しさが反映したのは中学、高校生の時に感じた「列を乱してはいけない」という強迫観念を表現しているかのような息の合わせ方であったり、クラスで浮かないための努力であると考える。

誰もが高校を卒業すると同時に制服も校則もなくなり”解放“されるが、その点でラストアイドルの”歩く芸術“は大人になる前のモラトリアムを彷彿とさせ、今までのアイドルで一番リアルに大人への訴えを試みているように感じた。
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