クラウドやAIの普及により、企業のDXは新たな段階へと進み始めている。生成AIは、SIerの役割そのものを変えようとしている。
システムを「作る」だけではなく、AIを前提に開発プロセスそのものを設計し直す。

ARアドバンストテクノロジは、この考え方を「AI駆動開発」と呼ぶ。クラウド時代から先端技術を追い続けてきた同社は、AI時代のSIerをどう描いているのか。代表取締役社長の武内寿憲氏に聞いた。

リーマンショックが創業の転機になった

――創業の経緯を教えてください

大学卒業後は大手外資系企業に入社し、IT業界でのキャリアをスタートしました。その後、マネージャーとして大型プロジェクトを担当した後、独立系SIerに転じ、取締役や代表取締役として経営に携わりました。

社員数を100名規模まで拡大するなど一定の成果を上げましたが、リーマンショックによる市場環境の変化を受け、事業の一部を切り出す形で2010年にARアドバンストテクノロジを設立しました。当初は10名にも満たない小さな組織からのスタートでした。

――創業時に目指した会社像を教えてください

私自身、リーマンショック前後でIT業界そのものが大きく変わったと感じていました。それ以前は、企業が高価なサーバーやハードウェアを導入し、それらを動かすことがエンジニアの主な仕事でもありました。オンプレミス環境が中心で、「35歳定年説」が語られるほど、人材が消耗品のように扱われる風潮もありました。

しかし、リーマンショック後はクラウドコンピューティングが普及し、AWSの日本展開などを契機に、ITはハードウェア中心からソフトウェア中心へと急速にシフトしました。
「これからはITそのものの価値が変わる」。そう確信したことが創業の大きな理由でした。

ハードウェアを構築する時代ではなく、ソフトウェアやクラウドを活用して企業競争力を高める時代になる。その変化に真正面から挑戦する会社を作りたいと思いました。

――現在のDX市場をどのように見ていますか?

数年前までは、「IT化=DX」と考えられるケースが多かったと思います。企業としては「まずシステムを入れよう」「紙をデジタル化しよう」という段階で止まってしまい、その先の経営改革まではなかなか議論が進みませんでした。本来、DXとは単なるデジタル化ではありません。デジタル技術によって事業や経営そのものを変革し、競争力を高めることが本質です。ただ、SIerやベンダーだけがその方向へ導けるかというと、実際には難しい面もあります。顧客企業が持つ経営戦略や競争優位性は外部からは見えません。

そのため、ベンダーには「このシステムを作ってほしい」という要件だけが渡され、それを実現する役割になることが多いと思います。DXが進まない理由をベンダーだけに求めることはできませんし、ユーザー企業側の理解も重要になります。

AIを前提に開発を変える「AI駆動開発」

――生成AIはDXをどう変えましたか

大きく変わりました。生成AIが登場したことで、お客様自身のITリテラシーが飛躍的に向上しています。以前は「システムとは何か」「どうやって自動化するのか」をベンダーに聞かなければ分かりませんでした。しかし今は、生成AIが相談相手になっていま
す。

「こういうシステムなら実現できそうだ」
「こういう業務は自動化できるのではないか」

そうした発想を企業自身が持てるようになりました。

RPAが普及したときにも自動化への関心は高まりましたが、生成AIは比較にならない変化をもたらしています。もちろん、現時点で企業が自ら高品質な基幹システムを構築できるわけではありません。しかし、お客様自身がシステムの仕組みを理解し、より具体的な仮説やアイデアを持った上で相談できるようになりました。その結果、議論の質も格段に高くなっています。

――「AI駆動開発」とはどのような考え方なのでしょうか?

AI駆動開発とは、システム開発の一部分だけでAIを使うという話ではありません。設計、プログラミング、テスト、運用まで、開発ライフサイクル全体をAI前提で設計し直す考え方です。例えば設計書の作成、コード生成、テストケースの作成、品質確認、運用保守まで、あらゆる工程でAIを活用することで、生産性を極限まで高めていきます。
もちろん、AIを導入するだけで成果が出るわけではありません。どの工程で、どのAIを、どのように活用すれば最も効果が高いのか。そのノウハウを蓄積していくことこそが、AI駆動開発の本質だと考えています。

今後はAIを使うこと自体が差別化ではなく、「AIを前提にどう事業を変革するか、そのためのシステムはどうあるべきか」が企業競争力を左右する時代になるでしょう。

高い成長を支えるのは人材と企業文化

――御社の高い成長を支えているものは何だと考えていますか

一番の強みは、 「クラウドネイティブ」 「AIネイティブ」といった先進技術を活用しながら、企画・コンサルティングから設計、開発、運用までを一気通貫で提供できる点です。

現在はAIやクラウド、コンサルティングなど、それぞれの分野に特化した企業が数多くあります。一方で、お客様は複数のベンダーを調整しなければならず、情報システム部門の負担は大きくなります。当社は各分野で高い技術力を持ちながら、それらをワンストップで提供できることがお客様から評価され、多くの引き合いにつながっています。また、独自の企業文化も影響していると思います。

――企業文化の特徴とはどのようなものでしょうか?

当社には「ARIグループの人らしさ3要素」という考え方があります。一つ目は、「自信がなくても、自分を信じられる人」。二つ目は、「自分だけではなく、チーム全体の成功を自分事として喜べる人」。
そして三つ目が、「他人と比較するのではなく、自分自身と向き合える人」です。これは経営陣が一方的に決めたものではありません。

創業から約10年が経った頃、社員の皆たちが「ARIグループの人らしさとは何だろう」と話し合い、自発的に言語化してくれた価値観です。私は、社員が会社の文化を自分たちで定義してくれたことに大きな意味があると思っています。社員同士のつながりを重視する文化も当社の特徴です。

例えば、ランチや懇親会など、社員同士の交流に使えるコミュニケーション費用を毎月支給しています。形式だけの福利厚生ではなく、「人とのつながり」を会社として後押ししているのです。その結果、創業以来、社員紹介によるリファラル採用が毎年約3割を占めています。社員が「知人にも勧めたい会社」と感じてくれていることは、会社への信頼の表れだと思っています。

AIで社会課題の解決を目指す

――今後、どのような事業に注力していきたいですか?

企業向けのDX支援だけでなく、日本全体が抱える社会課題にもAIを活用するAIを活用するプロジェクトを積極的に進めています。

人手不足という問題に直面している社会インフラの維持など、日本全体の課題をAIで解決する。そのような仕事に携われることが、エンジニア自身の大きなやりがいにもなっています。
単にシステムを開発するだけではなく、 「社会を支える技術」を生み出しているという実感が、社員のモチベーションにもつながっています。

――2035年の目標達成に向けて、最も重要なことは何でしょうか

IT業界は、ハードウェアの時代からソフトウェアの時代へ、そして今はAIの時代へと大きく変化しています。生成AIの普及によって、お客様自身のITリテラシーも高まり、「こんなシステムが欲しい」「こんなこともできるのではないか」というアイデアは、これまで以上に数多く生まれるでしょう。

一方で、企業ごとの強みや事業戦略を反映した競争力のあるシステムを実現するには、人の創造性が欠かせません。これからは単純に社員数を増やすのではなく、AIを使いこなし、新しい価値を生み出せる人材を育成し、そのような人材が集まる会社になることが重要だと考えています。
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