2021年明治安田生命J1リーグは、コロナの影響で観客動員こそ少なかったものの、無事最終節までの日程を終了した。昨年の「昇格2チーム」「降格なし」というレギュレーションの影響もあり、今季は4チームが無条件で降格。
そんな中、シーズン終了直後から活発な移籍マーケットでは各クラブが戦力アップを図っている。この1年J1の舞台で渡り合って来たJ2降格4クラブは、現有戦力でも十分に再昇格を果たせる力を持っているとも言える一方、より高いレベルでプレーを続ける為他クラブへの移籍を考える選手も少なくない。
そこでここでは、J2降格の憂き目にあってしまった4クラブ(徳島、大分、仙台、横浜FC)それぞれが、絶対に手放すべきではない選手をまとめていく。

徳島ヴォルティス:MF岩尾憲
最終節まで残留を争い、わずか勝ち点差1で涙を飲んだ徳島ヴォルティス。結果的には1年でJ2に戻ってしまうわけだが、残留まであと一歩だったことはチームにとっても選手にとっても自信になったことだろう。
しかし、2021シーズン28試合に出場し主力を務めた期待の若手であるMF藤田譲瑠チマが、12月20日横浜F・マリノスへ完全移籍したことが発表され、岩尾憲やカカといった同じく主力級の選手に、他クラブが関心を寄せていると言われている。
そんな中、徳島が最も手放すべきでない選手はやはりMF岩尾憲だろう。今シーズンは37試合に出場し、内35試合は先発出場したチームの支柱であり、繋ぎの起点でもある岩尾を手放すこととなれば、中盤での主導権争いにおいて大きなビハインドとなりかねない。幸い得点源となる垣田裕暉らFW陣に移籍の噂はないことから、中盤の軸である岩尾の流出がなければ、徳島は2022シーズンも優位にJ2を戦えるはずだ。

大分トリニータ:DFエンリケ・トレヴィザン
降格となってしまったものの、天皇杯ではリーグ王者の川崎フロンターレを準決勝で破った大分トリニータ。決勝では後半アディショナルタイムの失点によって惜しくも敗れたが、天皇杯結果は準優勝と、実力はJ1レベルであることをしっかりと証明して2021シーズンを終えた。
そんな大分では、シーズン終了後に主力が続々と契約更新をしており、大量流出の心配はないと思われる。しかし長年文字通りチームの精神的支柱であった片野坂知宏監督が来季からいなくなることと、今のところ大きな補強の動きがないこともあり、1人の選手流出が大きな痛手となる可能性もある。
その中でも大分が最も手放すべきではない選手は、DFエンリケ・トレヴィザンだ。2021シーズンは28試合に出場、三竿雄斗らと共に主力として最終ラインを形成し得点も挙げてチームを支えた。12月12日の天皇杯準決勝では、川崎から後半アディショナルタイムに得点を挙げて、王者を倒すきっかけに一役買うなど、守備の要としてではなくその勝負強さからも、絶対に手放せない選手と言える。

ベガルタ仙台:MF上原力也
2021シーズンを通して大量失点と得点力不足に悩まされたベガルタ仙台。勝利数では最下位となった横浜FCの6勝よりも少ない5勝と、選手やサポーターにとっても辛いシーズンであった。そんな中、移籍動向では追い打ちをかけるような事態が起きている。
長年チームを支えてきたMF関口訓充が契約満了でチームを離れ、多い失点数の中にあっても高いセービング技術で出場した37試合ゴールを守った守護神ヤクブ・スウォビィクがFC東京へ、2021シーズンチーム得点王のFW西村拓真が横浜F・マリノスへそれぞれ完全移籍が報じられているのだ。
文字通り攻守の要を失ってしまう中、仙台が絶対に手放せない選手はMF上原力也だろう。現在はジュビロ磐田からの期限付き移籍となっておりその期限は2022年1月までだが、2021シーズンはチーム最多の5アシストを記録し、心臓としての役割を果たしていた。心臓まで古巣復帰となってしまえば、仙台の1年でのJ1復帰も難しくなるだろう。

横浜FC:FWサウロ・ミネイロ
2021シーズン開幕から5月中旬まで勝ち星が挙げられず、最終的にはJ1ワーストの失点数でJ2降格となってしまった横浜FC。移籍の動向として、世間では日本サッカー界のレジェンド三浦知良の去就に注目が集まっているが、内情はかなり深刻で主力陣の流出が止まらない。
シーズン通して中盤を支えチーム最多の7アシストを記録した瀬古樹が川崎へ、FW陣では最多の31試合に出場したジャーメイン良と、最終ラインの主力である袴田裕太郎が磐田へ。
そんな中だからこそ、横浜がこれ以上絶対に手放すべきではない選手は、FWサウロ・ミネイロだ。途中加入で出場試合は11試合にとどまったが、出場試合数の多い他のFW陣を抑えてチームトップの4ゴールを挙げるなど、存在感を示した。すでに他クラブが調査を開始しているといった報道も出ているが、中村俊輔や手塚康平といったパスの出し手は残留が決定しているため、受け手であり得点力のあるミネイロの慰留が叶えば、横浜の攻撃面での不安要素は軽減できる。