2022JリーグYBCルヴァンカップの準決勝第2戦が9月25日に行われ、セレッソ大阪浦和レッズに4-0で勝利。2戦合計スコアが5-1となり、C大阪の決勝進出が確定している。

前半だけで2ゴールを奪い、試合を有利に進めたC大阪。いかにして浦和の守備を攻略したのか。そして、浦和が徹底できなかった守備原則とは何か。ここでは、この2点について分析する。

C大阪が突いた4バックの泣き所、浦和に足りなかった守備原則【ルヴァン杯試合分析】

浦和が埋めきれなかったスペースとは

第1戦でアウェイゴールを奪われ、決勝進出に少なくとも1得点が必要だったC大阪は、マテイ・ヨニッチと鳥海晃司の2センターバックが両サイドに開き、ビルドアップを敢行。浦和の1トップ松尾佑介と、トップ下の小泉佳穂の2人が追いきれない距離を保ったことで、浦和に[4-4-2]の陣形による撤退守備を選択させた。

第1戦で披露したハイプレスを封じられたことで、ミドルゾーンや自陣後方に下がって守備の安定を図った浦和だが、この日は4バックのセンターバックとサイドバックの間隔が開くことが多く、ここをC大阪に突かれる形に。

前半22分06秒からのC大阪の攻撃シーンでは、センターバックのアレクサンダー・ショルツと左サイドバックの明本考浩の間にパスが通り、同サイドを突破した毎熊晟矢のクロスが明本のオウンゴールに繋がっている。スコアレスドローでも決勝進出が決まる浦和にとって、手痛い失点だった。

C大阪が突いた4バックの泣き所、浦和に足りなかった守備原則【ルヴァン杯試合分析】

5バックと比べ、4バックはセンターバックとサイドバックの間が開きやすく、ハーフスペース(ピッチを縦に5分割した際の、ペナルティエリアの両脇を含む左右の内側のレーン)も埋めにくい。

4バックの場合、センターバックとサイドバックの間をサイドハーフが降りて埋めるのか、それともボランチが下がって消すのかをチーム内で意思統一する必要があるが、この日の浦和はこれがはっきりせず。C大阪の先制シーンでも、ボランチの伊藤敦樹が前方に釣り出されていたほか、左サイドハーフの大久保智明も、ショルツと明本の間をケアできていない。伊藤と大久保のどちらかが下がってこのスペースを埋めていれば、毎熊へのスルーパスは通らなかっただろう。

C大阪が突いた4バックの泣き所、浦和に足りなかった守備原則【ルヴァン杯試合分析】

前半29分08秒以降のC大阪の攻撃シーンでも、浦和の守備が崩壊。ここでは右サイドハーフの松崎快と、同サイドバックの関根貴大の2人がタッチライン際で守備をしたため、センターバックの岩波拓也の右隣が空く形に。このスペースにC大阪の左サイドハーフ為田大貴が侵入すると、同選手のクロスから奥埜博亮のゴールが生まれている。

前半だけでアウェイゴールを2つ奪われ、決勝進出が絶望的になってしまった浦和。9月21日の第1戦でも、キックオフ直後のハイプレスの強度や連動性が低く、これが原因で失点。スコアレスドローに終わった9月17日の湘南ベルマーレ戦(J1リーグ第30節)でも、[4-4-2]の守備隊形の最前線、中盤、最終ラインの3列が間延びする場面が見受けられ、湘南に決定機を作られている。直近の公式戦で[4-4-2]の隊形による守備の詰めが甘かった浦和が、C大阪との第2戦でもこれを改善できなかった。

C大阪が突いた4バックの泣き所、浦和に足りなかった守備原則【ルヴァン杯試合分析】

C大阪はA・マドリードを彷彿とさせるチームに

後半6分に山中亮輔のクロスから加藤陸次樹がゴールを挙げたほか、同35分にも途中出場のFWジェアン・パトリッキがカウンターを結実させたことで、完勝を収めたC大阪。第2戦の最大の勝因は、バリエーション豊富なハイプレスだろう。

浦和が4バックを崩さずにビルドアップを試みた場面では、加藤と上門知樹の2トップが浦和の2センターバックにチェイシング。GK西川周作にも2トップの片割れがプレスをかけたことで、浦和に余裕のあるビルドアップをさせなかった。

浦和の2ボランチ、伊藤と岩尾憲のどちらかが2センターバック間に降り、変則3バックを形成した際は、加藤と上門の2トップと、為田と毎熊のどちらかの計3人で数的同数を作りながらアプローチ。

最終ラインに降りようとする伊藤や岩尾に、C大阪のボランチ(奥埜と鈴木徳真)が付いていく場面もあるなど、浦和の隊形変化に即した守備ができていた。

C大阪が突いた4バックの泣き所、浦和に足りなかった守備原則【ルヴァン杯試合分析】

スプリント力が高く、守備の出足も鋭い加藤と上門の2トップ、及び為田と毎熊の計4人を起点とするハイプレスは迫力満点。無尽蔵のスタミナを活かし、上下動を繰り返せる奥埜と鈴木、ヘディングの打点が高いヨニッチと鳥海がセンターラインを固めているため、相手を自陣に引き込む守備にも安定感がある。オーソドックスな[4-4-2]の布陣をベースに、ハイプレスも自陣撤退守備も自由自在。密集地帯を厭わずにボールを受けることができ、縦方向への鋭いドリブルも持ち合わせている北野颯太や清武弘嗣がベンチに控えているため、遅攻が必要な状況にも対応できる。昨年8月より指揮を執っている小菊昭雄監督のもとで、C大阪はひと昔前のアトレティコ・マドリードを彷彿とさせるチームへと成長した。

10月22日に行われるサンフレッチェ広島との決勝戦で、C大阪が前述の強みを発揮できるか。これが、次回の大一番の見どころのひとつと言えるだろう。

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