レビュー

本書で取り上げられている「アート」は、主に1980年代以降の「現代アート」である。印象派などの近代アートが好まれている日本では、現代アートというとマイナーな印象があるかもしれないが、世界の美術界においては、現代アートこそがメインストリームとなっている。

グローバルに活躍するビジネスエリートに欠かせない教養と考えられているのだ。
その本質的な理由は、現代アートが提起する問題や、描く世界観が、ビジネスエリートに求められる発想と共振しているという点にある。著者によれば、「アートとは、ゼロから価値を生み出す創造的活動であり、ビジョンと、それを実現させるための内なる情熱が必要」であるという。このアートを「アントレプレナーシップ(起業家精神)」に置き換えてみるとどうだろうか。まったく違和感がないのではないか。
これからの時代に求められているのは、「正しい問いを立てることができる洞察力とユニークな視点」である。
その際、旧来の思考法と異なるオルタナティブな発想としての「アート思考」が役に立つ。その本質とは、「わからないもの」に対して、自分なりに粘り強く考え続ける態度にある。
グローバルな常識ともいうべき現代アートの奥深い世界。本書を通じて、その理解を深め、新しいビジネスを拓く発想法であるアート思考を身につけていただきたいと願う。

本書の要点

・現代アートの役割は、過去のしきたりに囚われない見方を創造し、イノベーションを起こすことにある。この点において、最前線のビジネスと共振している。


・現代アートの三大要素は、インパクト、コンセプト、レイヤーである。なかでもコンセプトは現代アートの命といえる。レイヤーとは多様な解釈に対して開かれている重層性を意味する。
・現代アートにとっては、「わからない」ことはよいこととされる。私たちはわからないものに接することで、思考を柔軟に解放できるからだ。



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