レビュー

金融業界、特に銀行は大きな転換点を迎えている。デジタル化、金融技術の進化、他の業態による金融業への進出と新たなサービス競争などだ。

貸出金利と調達金利の利ざやで稼いでいた伝統的なビジネスモデルは低金利時代が長期化するいま通用しなくなっている。一方でコンプライアンス(法令順守)の規制が厳しくなり、銀行業務の細部にいたるまで縛られている。そうした環境の中で銀行は何をすべきなのか。大きなヒントを与えてくれる本である。
特に地域の金融機関が何をやるべきなのか、豊富な事例を用いて分析する。顧客のためにならないノルマが本当に必要なのか。
金融機関の役割をあらためて確認している点は非常に参考になる。長年、サービスに明確な差をつけられないのが銀行と言われてきたが、創意工夫で少しやり方を変えるだけで大きく差別化できることも示される。それはコロナ時代だからこそ重要な意味を持ってくる。店舗を訪れ、対面で相談するといった伝統的なスタイルが少しずつ変化するなど、ビジネス環境が以前とは異なっており、それゆえに新しい発想や行動が求められている。
時代に合わないビジネスモデルに固執していては、将来の成長や存亡にも関わってくる。時計の針が一気に進むように、銀行は大きな変化を迫られており、本書には多くの取り組むべき課題が書かれている。
この変化を乗り切った銀行や銀行員のみが将来消えずに生き残るのだろう。時代を見据えた警告の書である。

本書の要点

・コロナで伝統的な銀行の経営モデルは崩壊した。働き方や価値観の変容に合致したビジネスが必要になる。
・上場会社としての妥当性も含めて根本的な地銀のあり方を再検討する時期がいよいよ来ている。
・地域金融が単に合併するだけでは何も解決せず、新しいビジネスモデルの創出が大切だ。


・銀行のこれまでの収益事業は顧客や地域のためにはなっておらず、逆に非収益事業ほど世の中の役に立つものはない。
・金融支援機能には集合知とその応用が必要となる。



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